日経平均株価指数、25,000円の攻防スタート。コロナ相場全戻しシナリオを考える。
日経平均株価指数がいよいよ25,000円の攻防戦に突入しました。原因は、朝方の「欧米がロシア産原油を禁輸することを検討している」という報を受け、原油価格が急騰したことにあります。
25,000円の壁は実をいうと薄く、ここを突破されると、今度は一気に24,000円に到達していくことが考えられます。
今の調整局面がコロナ相場の調整で終わるのか、それとも、リーマンショック後の大相場の調整として考える必要があるのか、そこら辺のことを考えていきたいと思います。
欧米がロシア産原油の禁輸を検討しているというニュースはこちらです。
朝、マーケットを確認したら原油価格が暴騰してたのでちょっとびっくりしました。
日本時間の日中高値が1バレル=127.54円、あわや1バレル=130円に届くかという水準です。
※TradingView
原油が上がるといろいろなモノの値段が上がり、実体経済にとっては悪い影響を及ぼします。
このような連想が起こり、日経平均株価指数は前場で一時900円ほど値を下げ、最終的に25221.34円の終値で引けました。
〇日経平均株価指数(日足)
※TradingView
テクニカル的には予想していた通りの展開になっているため驚くほどのことではありませんが、25,500円ラインを完全にスルーし、一気に25,000円の攻防戦が始まったことに速さを感じています。
実をいうと、25,000円付近には目立ったサポートライン(下値支持線)がなく、それより下の24,000円までの間が空白地帯になっているため、25,000円の攻防戦を突破されると一気に24,000円の水準まで日経平均株価指数は落ちていくことが予想されるんです。
〇日経平均株価指数(日足)
※TradingView
そこまで落ちてようやく2021年9月の日経平均高値からの下落率が約▲20.0%となります。
この20.0%の下落率というのを覚えておいてください。この意味は、株式市場がリセッション(景気後退)を織り込みだすことを示唆しています。
ちょうどこの水準は1000日単純移動平均線に近い水準であるため、この水準でいったん積極的な買戻しが入り、強く反発していくかもしれません。
ただ、約▲20.0%の下落率ぐらいでは、今回のような非常に大きい調整局面の場合、個人的には「下げたなぁ」という感じはしません。
なぜならば、本当に大きな下落局面というのは、往々にして▲30.0%に達することが起こりうるからです。
〇日経平均株価指数(日足)
※TradingView
リーマンショック後以降の大暴落局面を見ると、例えば、2015年の11月からのアメリカの利上げ局面における暴落では下落率が▲28.56%、コロナショック時の下落率が▲31.24%でした。
このようなことを考慮すると、2021年9月高値からの調整局面の修正a波(修正3波のうち最初に現れる波)の終点は24,000円付近ではなく、さらに下押しした水準:22,000円割れもありうると考えておく必要があるかもしれません。
まさにこの水準が2021年9月高値からの下落率約▲28.0%に当たり、ここまで下げてようやく「下げたなぁ」という実感に到達しえます。
ということで、直近の下値目処についてまとめます。
①24,000円付近
ここは切りの良い数字としての節目ライン
②23,542.78円付近
コロナ相場における半値戻しの水準(フィボナッチ・リトレースメントでは0.5の水準)
その後、いったん反発。
③再び23,542.78円付近をトライか、
④そこを下回ると、22,000円割れ
コロナ相場におけるフィボナッチ・リトレースメントでは0.618(黄金比)の水準、かつ、リーマンショック後の長期上昇相場におけるフィボナッチ・リトレースメントでは0.382の水準。
さて、ここで大きな問題になってくるのが、エリオット波動理論的には、日経平均株価指数が24270.62円をタッチしてしまうと、波形のカウントをコロナ相場基準で考えるのではなく、リーマンショック後の上昇相場基準に切り替えていく必要がある点です。
個人的にはエリオット波動理論をシナリオ作成の主軸として採用していますが、異なる投資理論で考えられている人もいると思うので、参考程度に捉えていただけると幸いです。
〇日経平均株価指数(日足)
※TradingView
さぁ、日経平均株価指数が22,000円割れの水準に達するとします。
その後、考えられることは大幅反発です。
反発には良い頃合いという空気が広がり、いったん日経平均株価指数は大きく買い戻されていきます。
この波をエリオット波動理論では修正b波とします。
この修正b波の終点がどの水準になるかですが、現時点では正直わかりません。
チャートに記している修正b波の終点はあくまでも便宜上の水準ですが、一応、25,000円水準としています。
26,000円水準になるかもしれませんが、おおよそ上値抵抗(レジスタンス)になりえる水準で考えています。
もちろん、それ以上値を上げて推移する可能性もあるため、例えばということでイメージしてください。
この時、どのようなストーリーで株式相場は動いていくのか。
◦ウクライナ情勢において、アメリカの支援を受け、ウクライナのゼレンスキー大統領がポーランドに亡命政府を造り、一方、ウクライナ自体にはロシアの傀儡政権として新政府が誕生する。
実際、本日付で、こんな報道がされています。
事実かどうかは定かではありませんが、これがこの紛争の幕引きであるならば、ここから急反発が来ることも想定しておく必要があるかもしれません。
ただ、この報道にあるように、ロシアがウクライナに傀儡政権を置いたとしても、世界中で実施されつつあるロシアに対する金融・経済制裁は継続される可能性が高いため、株式市場としては、たとえ戻り相場が訪れたとしても疑心暗鬼のまま進んでいくことが考えられます。
特に、さらに金融・経済制裁が強化され、かつ、それらが長引く場合、欧州を中心に景気の悪化が長期化するとマーケットが判断する可能性が出てくるため、株価はどこかの時点で天井をつけ、再び下落していくかもしれません。
ウクライナ情勢がどうなるかは本当にわかりませんが、とにかく、マーケットが反転上昇する条件は、ウクライナ情勢の収束に伴うロシアに対する金融・経済制裁の緩和が中心になってくると思うので、状況をよく観察しながらシナリオを変化させていく必要があります。
仮に、このようなシナリオで日経平均株価指数が22,000円割れ付近から反発し、その後、再び下落していくとした場合、その下落はさらにきつくなることが考えられます。
それを表している波が修正c波です。
〇日経平均株価指数(日足)
※TradingView
この場合の修正c波は、エリオット波動理論でいうところのダブルジグザグのうち2つめのジグザグ波に該当します。
このため、修正c波では修正a波と同程度の下落が起こることを推定します。
そのように考えると、修正c波の終点として最も可能性の高い水準は16,000円程度ということになります。
この水準は、コロナ相場の全戻し水準であり、また、リーマンショック後の上昇相場におけるフィボナッチ・リトレースメント0.618(黄金比)の水準に当たります。
ただ、これはさすがに行き過ぎでしょと思うため、その手前にある19,000円前後も候補としては考えています。
この水準は、コロナ相場におけるフィボナッチ0.786の水準であり、また、リーマンショック後の上昇相場におけるフィボナッチ・リトレースメント0.5(半値戻し)の水準に当たります。
波形取りが切り替わる場合、このシナリオも視野に入れますが、この場合の下値の目処を次のようにまとめておきます。
①19,000円付近
②16,000円付近
まだかなり不透明なため、このようなトレンドもありえるという意味で捉えておこうと思います。
本音をいうと、このシナリオは直接的にはウクライナ情勢を起点には起こらないだろうと考えています。
むしろ、日本国内の問題が日経平均株価指数を押し下げるような気がしています。
日本の株式市場にとって大きな問題なんですが、平たくいうと、日銀の金融政策に対して疑義が生じているということです。
ポイントは2つ。ひとつは金融緩和政策において物価目標を変更する可能性がある点、もうひとつは日銀の量的緩和政策によるETF買いに赤信号が灯りだしている点です。
両者とも以前から指摘されてきたことなんですけど、日銀の金融政策が実体経済を健全に、かつ、効果的に、さらに意味のある形で改善させてきたのかということが問題視されるようになっています。
この期に及んでこのような記事が出始めているということは、実際に何らかの形で金融政策の変更がされることを示唆しているんだと思いますが、ひょっとしたら内々で議論が進んでいるのかもしれません。
物価上昇率の達成目標を下げるのは、日本の株式市場にとっては大いにマイナスになることです。なぜならば、外国人投資家にとっては、もともと「日本ダメだな」と思われているところに、さらに「金融緩和、転換するの?」という印象を与えてしまうからです。
また、ETF買いについては日銀が一気に止めるわけにはいかないと思いますが、これを止めない限り、投資家の持つ「東京株式市場が歪で投資しにくいマーケットだ」という印象がぬぐえないため、どこかの時点でこの政策を変更する場合、一時的であるにせよ、日本の株式市場には売り圧力が広がりやすくなることが考えられます。
ウクライナ情勢に及んで、今後、日銀は岐路に立たされることになるかもしれませんが、このような政策変更が起こりえるのなら、このストーリーが先ほどのもう一段の強い下げ、つまり、修正c波のメインテーマになるのかもしれないと考えています。
この場合、リーマンショック後に起こった上昇相場はいったい何だったのかということがメインテーマになるため、a・b・cの修正3波はその上昇相場に対する調整であるという見立てが強化されます。
このように見ていくと、2021年9月以降の日経平均株価指数の調整局面は、大きな外的要因と大きな内的要因の2つに揺り動かされながら進んでいくのかもしれません。
まだまだ不透明な点は多いですが、なんとなく、ものすごく大きな歴史の転換点に、私たちは直面しているような気がします。
さぁ、これからどうなるのか。
よくよく観察していきたいと思います。