日経平均株価指数の下値目処。欧州発金融ショックの可能性の先に見えるもの。
さて、今回は、日経平均株価指数の考察回です。
内容としては似たようなことを先日更新したとこなんですが、これからはこんな雰囲気で解説していこうかと思います。
趣旨が伝わればいいんですが、例えば、短期、中期、長期の予測として、天気予報のように表示してみました。短期は2週間ぐらい、中期は3ヶ月未満程度、長期は1年未満程度でおおまかに分けています。
その下にコメントを書きましたが、ポイントですよね、私のアンテナが反応している点をちょびっとだけ記してあります。
そして左側がチャート面ですが、これを見ながら解説していくという流れです。
それでは参りましょう。
〇日経平均株価指数(日足)
※Tradingview提供
先週は大きな動きがありましたね。ロシア軍がザポロジエ原発を占拠したということで株価が一気に下落しました。
ヨーロッパの株式市場の下落ぶりはかなりのものでしたが、同時にロシア国債などの債券がデフォルトするかもしれないという懸念も台頭し、ヨーロッパでロシア国債を購入しているような国の株価は余計に下げた印象を持っています。
ポイント①
◦ヨーロッパの電力不足に拍車がかかる
◦ヨーロッパ発の金融ショックが起こる可能性
最新の報道では、ロシア軍がもうひとつ、南ウクライナにある原発を掌握しようと計画しているらしいので、株式市場のセンチメントとしてはさらにネガティブといったところでしょうか。
片や良いニュースもありましたね。
アメリカの雇用統計です。アメリカの雇用統計は毎月第1金曜日に発表されるんですけど、この結果が良かった。
ちなみに雇用統計っていうのは、基本的に雇用者数と失業率を軸に見ていきますが、これに加えて平均時給も非常に重要視されます。
ポイントは、2月の非農業部門雇用者数が市場予測を大幅に上回ったものの、2月の平均時給が前月比、前年同月比ともに下落した点です。
雇用者数が増えた!、平均時給が減った!
何を意味しているかというと、アメリカはコロナ禍経済から脱してくるということです。
要は、少しずつ元の日常に戻ってきたかもしれないってことなんですが、人手不足が解消され、結果として時給が元の水準に戻り始めていると読み解くことができるため、アメリカの高インフレが改善されるかもしれないというシグナルになります。
ポイント②
◦アメリカのインフレ改善の兆し
そうはいっても、目下、ウクライナ情勢の悪化により原油などのエネルギー資源、金などの鉱物資源、小麦などの穀物といった、いわゆるコモディティーが急激に上昇しているため、アメリカで雇用状況が少しずつ改善されていったとしても、物価上昇のリスクはなかなか収まらないだろうというのがマーケットの大方の見方です。
そこで考えるべき点は何かというと、パウエルさんですよね。
FRB(連邦準備理事会)議長のパウエルさんが、つい最近、こんなこと言ってましたね。
「3月の利上げは支持するが、ウクライナ情勢が不透明なため、その後は様子を見ながら判断しま~す」
何を言っているかというと、3月にアメリカの政策金利であるFFレートを0.25%に引き上げるのはやぶさかではないが、それ以降はウクライナ情勢に伴うインフレの状況を見ながら慎重に判断していくということです。
ということで、3月利上げはほぼ確定なんですが、マーケットの見立てはこんな感じになっています。
※CME Group
これは、マーケットが織り込むFFレートの利上げ水準とその可能性を示したグラフです。
現時点では98.8%、0.25%の利上げを織り込んでいて、3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)ではほぼ間違いなくこの水準で利上げが実施されるかと思います。
これはね、本当は、株式市場にとっては好材料になるんです。
なぜならば、ついこの前まであり得た0.5%の急激な利上げはしないという確証ができたので、投資家にとっては安心感につながるんですよね。
そして、4月以降、FOMC(連邦公開市場委員会)は年内で6回開かれる予定なんですが、すべて0.25%ずつ利上げをしたとしてもFFレートは1.5%にしかならないので、それくらいなら株式市場にとっては、「まぁ、いっか」と思えちゃうんです。
結局、株価というものは受給、つまり、投資家の売り買いで決まるものなので、投資家がどう思うか、究極的にいうとそれだけだったりするんですよね。
アメリカの金融政策が緩和から引き締めに政策変更される流れの中で、この利上げだけを見ると、株式市場は買いだよねって投資家が思うのはよくわかります。
ポイント③
◦FRBの3月利上げは0.25%、以降、年内6回全て0.25%引き上げでも、2022年は1.5%までしか上がらない
とはいえ、やっぱりウクライナ情勢なんですよね。
欧州初の金融ショックの可能性を債券市場は織り込み始めていて、また、先ほど述べた電力逼迫リスクの拡大もあって、株式市場に対しても極めて強い向かい風が吹く可能性が高まっています。
だから、パウエルさんは4月以降は様子見でといっているわけで、今のところ、年内でどれぐらいまでFFレートが上がるかは依然として不透明なところです。
0.25%ずつの引き上げでずるずるいくのか、途中、利上げは一時停止とするのか、逆に急激なインフレ退治を高く掲げて、どこかのタイミングで0.5%の引き上げを実施するのか、ここら辺はよく観察しておいた方がいいでしょう。
ということで、今のマーケットの背景はなんとなくわかったかと思います。
それでは、日経平均株価指数のチャート分析をしてみましょう。
〇日経平均株価指数(日足)
※Tradingview提供
日経平均株価指数の現在値は、終値で25985.40円です。実をいうと、その日の夜間の日経平均先物が25870円をつけたので、週明け月曜日は弱気スタートで始まるのかもしれません。
シナリオのストーリーとしては前述のとおりです。
短期的にはウクライナ情勢の動向に翻弄されるように日経平均株価指数は推移していくと思いますが、ロシアに対する金融面、経済面での制裁が世界経済に及ぼす影響が甚大なので、欧州発の金融ショックが起こる可能性と電力逼迫による世界経済の悪化は常に念頭に入れておく必要があるでしょう。
反面、先ほど述べたようにアメリカの雇用状況の改善により、FRBが0.25%の利上げを実施するというプラスの意味も意識すると、日経平均株価指数のシナリオとしては、短期、中期は下げ、長期は揺り戻しが起こる可能性を見ています。
あくまでもウクライナ情勢次第ですけどね。
チャート面に記した楕円形は、目先の下値目処です。いつもゴニョゴニョと矢印で示していますが、見にくいかなと思い、こんなふうにしてみました。
この楕円をトランポリンのようにイメージしてもらいたいんですけど、例えば、直近では25,000円ぐらいでこのトランポリンに落ちてきて、その後、ぽよ~んと跳ね、また24,000円ぐらいまで落ちてからトランポリンによってぽよ~んと跳ね返されるイメージです。
個人的には、日経平均株価指数の巡航軌道を1000日単純移動平均線と考えているため、いずれ、おおよそ24,000円水準ぐらいまでは下げてくるだろうと予測しています。
これが中期の見立てですね。
その後の長期的な見立ては、24,000円付近で反発した後の再調整局面をイメージしています。
つまるところ、アメリカの雇用情勢が改善されてきたからといって、世界経済がリセッション(景気後退)する可能性が高いので、24,000円からの反発はそんなに大きくないと見ています。
このため、最悪、反発後の下値を、つまり、ここが底値になるかもしれないという見立てなんですが、22,000円水準とあえて置いています。
不況、広がるようなぁって思いながら今のマーケットを眺めているんですが、最終的にロシア解体までいくんですかね、これ。
ソ連崩壊から約30年、仮にロシアが解体されるなら、もしくは、ロシアが極度に弱体化するならば、その後の世界情勢はどうなるか、そしてマネーはどこに向かって行くのか。
どこかのタイミングでそんなことを考えてみようかと思います。