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世界経済、景気後退局面への移行固まる!? 今、マーケットが考えていることは何か。

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 株式市場は昨日大きく上げたと思ったら、結局、戻り売りに押されて、また下がっちゃいましたね。

 昨晩、ヨーロッパとアメリカである重要な経済指標が発表され、この結果を受けて、中・長期的な投資環境はほぼ確定したような気がします。

 何かというとこれですよね。

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※世界の株価と日経平均先物

 

 ECB(欧州中央銀行)の政策金利が0.00%に据え置かれたこと、アメリカの2月におけるCPI(消費者物価指数)が前年同月比で7.9%に上昇したこと、の2つです。

 さぁ、ここで言葉を覚えましょう。

ECB=European Central Bank=欧州中央銀行

CPI=Consumer Price Index=消費者物価指数

 経済記事には、往々にして英語表記の言葉が嫌というほど出てきます。いちいち「英語嫌っ」とか言ってると、それだけ読解が妨げられるため、英語で出てきたものは、特に頭文字で記されている言葉は元の言葉に戻し、英語で覚えていった方が意味を理解しやすくなります。

 マネーリテラシーが身に付かない妨げのひとつが経済記事の英語表記問題です。そもそもリテラシー自体が「読み書きの能力」という意味なので、英語についての読み書き能力がある程度なければマネーリテラシーは身に付きにくいというわけです。

 

 さて、話を戻します。

 ヨーロッパの中央銀行であるECBが政策金利を0.00%に据え置きました。これは、ウクライナ情勢を受けて物価がさらに上昇し、このタイミングで金利を引き上げた場合、ヨーロッパの景気が悪化する恐れがあると判断したからです。

 投資初心者の場合、この報を受けて、ひょっとしたら株価が上昇すると思うかもしれません。でも、投資に慣れてくると、そのような印象で動くことを戒めます。

 つまり、ECBのラガルド総裁が記者会見でどのようなことを発言するか、それを確認しにいきます。

 この行動が投資には重要で、理解をしにいく、自分で調べるという行為こそが投資を上達させていきます。

 資産運用の相談を受けることがありますが、往々にして多くの方が「簡単に事を済ませよう」とします。つまり、このECBの話題でいうと、「政策金利が据え置かれたから株は買いだ!」などと早計に判断してしまい、結果としてこのような「簡単に」、「表面的に」物事を見てしまうと、後で痛い目を見ることにつながります。

 事態は逆に動きました。昨晩のニューヨーク市場や日経平均の夜間取引において株価は下落、おそらく朝起きると「なんで下がってるの?」と思う人がたくさんいるかもしれません。

 そこに疑問を持って自分で調べていくと、こんな記事にぶつかります。

www.bloomberg.co.jp

 内容としては、ECBは政策金利を据え置いたものの、これは現時点としての一時的な判断で、近々、債券購入プログラムの縮小(いわゆるテーパリング)を終わらせると述べました。

 その理由は、物価の上昇が将来的に景気後退をもたらす可能性が高く、放っておけば景気自体がハードランディングしかねないからです。

 テーパリングを開始する時期は今年の5月から、そして7月から9月ぐらいには終わらせる予定だとしています。

 ただし、政策金利の引き上げに関しては、テーパリング終了後すぐにやろうとは思っていないと発言しました。

 FRB(The Federal Reserve Board:連邦準備理事会)総裁のパウエルさんが昨年言ってたのと同じようなことを言っています。

 ECBのラガルドさんの目的は「金融政策の正常化を通じ、景気の後退をソフトランディングさせること」にあります。金融政策の正常化とは金融緩和政策を終わらせ、いったんフラットにするという意味です。その後の金融引き締め政策については、利上げ以外まだ具体的なアナウンスがないため、十分様子を見ながら対応していくというメッセージをマーケットに送っています。

 といいながらも、ある程度決めてるんでしょうけどね。

 ということで、マーケットの反応としては、「ECBは利上げをしなかった。しかし、近々、テーパリングが終わり、利上げを実施するだろう」との思惑から、「中・長期的なEU経済にとってはマイナスである」と判断し、株価の下落につながったようです。

 マーケットは、最近、「ウクライナ情勢でヨーロッパやばいんだから、利上げとかしない方がいいんじゃね?」と思っていたわけですが、ラガルド総裁がタカ派(利上げ推進派)的発言をしたため、「おそらくヨーロッパは、間もなく景気後退に入るだろう」と踏みました。それが昨晩の株価下落の起点です。

 これで景気後退への道筋がひとつ固まりました。

 

 そして、もうひとつ重要なのが昨晩発表されたアメリカの2月のCPI(消費者物価指数)です。

 前回は前年同月比で7.5%だったんですが、今回、2月のCPIが前年同月比7.9%、コンセンサス予想と同じ数値で、再び物価の上昇が確認された形になりました。

 マーケットは織り込んではいたんですが、この数字が出てくると、やはり「物価の上昇がひどい」と改めて受け止めているようです。

 アメリカの場合はヨーロッパと違い、今月のFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)で政策金利であるFFレートを0.25%に引き上げる可能性が高いため、4月以降のFOMCでどこまで金利が引き上げられるかに注目しています。

 「ひょっとしたら、想定されているよう4月以降年6回の0.25%ずつの利上げでは済まないのではないか・・・」

 今回のCPI上昇を受けて、年内の利上げがさらに必要かもしれないとの見方が広がり、アメリカの10年物国債利回りは上昇し、株価は下落しました。

 これも、近々、アメリカでも景気後退が起こるかもしれないという懸念が再認識されたということです。

 アメリカの金融引き締め政策への転換は、ヨーロッパと同じく、景気後退のペースを緩やかにすることにあります。ソフトランディングですね。

 

 アメリカも、ヨーロッパも、中・長期的に景気が減速していくだろうという方向性で見ていることがはっきりしました。

 これは、コロナからの回復とウクライナ情勢による物価のさらなる上昇が原因です。

 ここ2日ほど、WTI原油などの原油価格が急落していますが、おそらく一定の水準で高止まりしながら推移していくだろうと考えられます。

 ウクライナ情勢が落ち着いても、ロシアに対する金融・経済制裁が長引くならば、サプライチェーンの逼迫に伴う物価の高止まりが予測されるため、世界経済の減速は自然な流れになっていくように思います。

 

 さぁ、投資環境のストーリーが、いよいよ景気後退局面の到来に移行しました。

 今後は、景気が少しずつ悪くなっていく中で、どのような投資戦術を組み立てていく必要があるかを考えていくことが求められてくるでしょう。

戦略面:景気後退に向かって行く環境のもとで投資を行う

戦術面:どの国・地域、どのセクター、どの金融商品に、どれぐらいの投資期間(短期・中期・長期)で投資すべきか

 こんなことを考えていこうと思います。

 

 ちなみにこれまで購入していた「XLE:Energy Select Sector SPDR Fund」は先ほど売りました。1か月ほどで約10%の運用利回りを得られました。

 原油は短期的には落ち着きを見せると思いますが、中・長期的には、このXLEはまだ上がるかもしれません。

 これについては様子を見ながら再投資するかもしれませんが、目下、ゴールドのETFで「GDX:VanEck Vectors Gold Miners ETF」を仕込むかどうか検討中です。

 もう少し戦略面と戦術面を練ってから。

 

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