FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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金融相場から業績相場へ。これからは、天井を意識しながら資産運用をした方が良いという話。

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 今週の日経平均株価指数は特に、上値が重いというか、なかなか上がらないなぁという印象を持った方は多いのではないでしょうか。

 アメリカの株式市場は強い動きを示しているのに、日本はなぜもたついているの?

 今週、よく言われていたことは「日本の場合、コロナワクチンの接種が遅いからなのではないか」といった指摘です。

 確かにその一面はあると思いますが、もっと単純に「決算発表が本格化する中で利益確定の売りが出やすくなっている」というのが直接的な原因のような気がします。

 日銀が3月点検の方針を発表し、日経平均株価指数連動型ETFはもう買い入れないとしたので、TOPIX連動型ETFにマネーが移っていっているという背景もありますが、これに決算発表によるローテーションの変更というか、銘柄の入替えというか、そういうのが重なっているのもあるでしょう。

 でも、より本質的な要因は、アメリカ市場へのマネーシフト。

 チャートを見ながら、特に今週は、この動きが顕著になったような気がします。

 そりゃ、そうですよね。

 アメリカの景気回復が目に見えて出てきているわけで、例えば、雇用統計とか、PMIとか、数字的には良かったので、今週はこれらが注目され景気回復が強く意識された相場展開だったような気がします。

 また、これらの経済指標に輪をかけて、バイデン政権による2兆ドルのインフラ投資計画がようやくはっきりと意識されてきたのも今週でした。

 それまではこのニュースについてはあまり意識されていなかった相場の動きでしたが、ここに来て強力な財政出動への関心が高まり、これもアメリカの株式市場にとっては有利に働いたようです。

 

 さて、アメリカの株式市場は次のステージに移行したと考えています。

金融相場から業績相場へ

 耳慣れない言葉かもしれませんが、金融相場は、投資家が中央銀行の金融政策に強く関心を寄せる相場、業績相場は、投資家が企業の業績に強く関心を寄せる相場、と考えるとわかりやすいかもしれません。

 コロナショック後、世界経済は大きく悪化しました。

 これを受けて、アメリカでも、日本でも、ヨーロッパでも、大規模な金融緩和政策が実施されていますが、長期金利が上昇してきたことで景気回復への関心が高まり、今度は企業の業績に対して関心が持たれるようになってきています。

 

 さらっと書くとこんな理解でいいんですが、コロナショック後の相場は異常相場なので、景気循環と相場ステージの関係性がズレていたりします。

 この辺の違いは認識しておく必要があるので、一応、書いておきますね。

 通常の景気悪化や不景気のような局面では、単純に景気を浮揚させるために金融緩和政策が実施されます。

 この段階が金融相場というステージなんですが、コロナショックでも同じことが実施されました。

 でも、このステージで普段と違うのは、金融緩和政策に加え大型の緊急経済支援策が実施されたことです。

 日本の場合、身近なものとしては特別定額給付金や持続化給付金、雇用調整助成金の拡充など、通常の金融緩和政策では行われない特別な支援が実施されているは周知のことと思います。

 なので、今更なんですが、コロナショック後においては相場のステージを3段階に分けて考えておく必要があります。

①緊急経済支援相場

②金融相場

③業績相場 

  この前提を踏まえた上で、今日は話を進めていきたいと思います。

 

 今回はチャート上、波形取りがはっきりしてきたS&Pを皮切りに相場ステージの話も絡めて分析していきます。

 

〇S&P500(日足)

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 すごくシンプルなチャート画像にしましたが、単純に波動を確認するのが目的です。

 イメージで捉えてみてくださいね。

 んじゃ、金融相場はいつまでか。

 厳密には区切るのは難しいんですが、今までの相場の雰囲気でいうと、おそらく3まででしょうか。

 3までといっても、その間、1までの波では緊急経済支援相場と金融相場が混ざっていますし、2~3の中は金融相場ではありますが、景気の回復への期待感が色濃く含まれていたりします。

 なので、明確な区分があるというわけではありませんが、ざっくり3までの波が金融相場と捉えてください。

 ということは、業績相場は4以降です。

 ここでは企業業績の回復が伴って景気が本格回復していくというか、どちらかというと成長していくため、これを織り込みながら相場が展開していくと思います。

 このステージでは楽観論が激し目に出たり、悲観論が激し目に出たりします。

 楽観論については経済指標や企業決算の内容が足元で明るいデータとして出てくるからなんですが、悲観論についてはしつこく高値警戒感が意識され、急落や暴落といった言葉が紙面で注目を浴びるようになります。

 要は、回復から成長へのステージなので、「いいじゃん、いいじゃん」って思う投資家と、「やばくない?」と思う投資家がはっきりと目に見えてくる段階がこの業績相場の特徴です。

 また、コモディティー、いわゆる商品取引ですが、ここも今まで以上に注目されてきます。

 要は、実体経済が回復していくため経済活動が活発になっていくのでモノが買われやすくなるってことです。

 つまり、物価の上昇率が上がりやすくなる局面もこのステージといえます。

 その中で「長期金利」が途轍もなく意識されてきますが、投資に慣れている人は景気が良くなるんだから金利が上がるのは当たり前と考えるので、長期金利が上昇したところで買いへの意欲は弱まりにくいでしょう。

 むしろ、景気回復や経済成長の結果、長期金利が上昇すると捉えるため、マーケットには追い風になりやすいといえます。

 ただ、この空気が続くわけではないので、業績相場の後半になると、悲観論が大勢を占めてきます。

 悲観論の主役もまた「長期金利」です。

 長期金利が高すぎる!

 これが悲観論が増える理由ですが、この局面では金融緩和政策の変更が強く意識されてきます。

 長期金利の上昇に対してはそりゃそうだよねで済む話なんですが、この悲観論では「短期金利」がより意識されやすくなるため、結果的に「長期金利」も意識されやすくなるという現象が起こります。

 

 業績相場はこういった理由で終わりを迎えていくんですが、バイデン政権のインフラ投資の原資は増税です。

 富裕層と法人企業への増税

 しかも、法人企業においては海外で展開している米国企業に対する課税強化であるため、本当にこれが実施されるなら、この手前で急落するかもしれません。

 とはいいつつも、その手前で金融政策の変更が意識されてくると、このタイミングも急落は意識しておく必要はあるでしょう。

 あとはアメリカの場合、住宅価格がさらに上昇してくるため、これも爆弾を抱えていると強く意識されるでしょう。

 

 ざっと簡単に説明しましたが、業績相場はこんな感じです。

 ついでに言っておくと、業績相場の段階では、実体経済は経済の成熟期に入るため、業績相場の後半の後半で経済の成熟が意識されることは覚えておきましょう。

 この時には相場は急落や暴落が強くなると思いますが。

 

 さて、もう一度S&Pを見てみましょう。

〇S&P500(日足)

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 4から5の波が業績相場であると仮定すると、このステージでコロナショック後の長期上昇局面が終わりを迎えるだろうと推測するのは妥当といえるかもしれません。

 問題は、この波が長いのか、短いのかという期間(チャート横軸)と、急激な上昇なのか、緩やかな上昇なのかという角度です。

 この波形取りが正しいなら、残りの上昇はそれほど長くはないだろうという結論に至りますが、ここが難しくて、今のところ、第5波(4~5の波)は延長されるようなイメージを持っています。

 この第5波は乱高下を伴うため、特に延長された以降は高値圏で上値を叩かれ、その後、買戻しがあり、また高値圏で買い叩かれるといった連続波動になる可能性が高く、この動きに投資家が疲れたところで一気に急落や暴落が起こると見ておく必要があります。

 こういう意味では上級者にとっては面白い相場といえるかもしれません。

 

 それでは、もう少しテクニカル面でチャートを眺めてみましょう。

〇S&P500(日足)

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 このチャートでは、一番外枠のトレンドラインを引いてあります。

 とりあえず、このトレンドラインを上限として第5波の軌跡をイメージしておきます。

 こう見ると、第5波は延長せず、順当に乱高下しながら上値を試す展開が考えられますが、延長する場合は傾斜角が緩くなる必要があり、釣り竿のようななだらかな曲線を描きながら、最後にポキっと折れることになるのかもしれません。

 でも、このシナリオだと速いんですよね。

 6月に入る前で上昇局面が終わるため、傾斜角がスティープな値動きをしてくれないとこのシナリオはイメージしにくいかもしれません。

 そう考えると、第3波はまだ終わっていなくて、次のようなシナリオイメージが成り立ちます。

〇S&P500(日足)

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 この場合、11月前後が天井日柄になりますが、先ほどのシナリオと見比べても、どの道、早いか、遅いかの話で、やはり年内の天井は考えておく必要があるのかもしれません。

 ということで、数カ月先に向けては警戒感は強めておきましょう。

 

 それでは、直近のチャート分析を行っていきます。

〇S&P500(日足)

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 まず、ボリンジャーバンドですが、バンドの上外枠から突き出しています。

 これは、目先、高値圏にあることを意味していますが、直近では、そろそろ小さめの調整が入ってもいい感じです。

 25日指数移動平均線(太い紫色)からも大分上に離れているため、来週は売られやすくなるかもしれませんね。

 

〇S&P500(日足)

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 一目均衡表は、見るに及ばず、ここしばらくずっと三役好転が維持されています。

 

〇S&P500(日足)

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 MACDは上昇トレンドを維持していますが、高く位置してしまっているため、そろそろフラット化してくるかもしれません。

 要するに上値が重くなり、調整が入る可能性が高まっているということです。

 調整は半値戻しぐらいはあるように見えますが、その後は日足レベルでは買戻しされるような気がします。

〇S&P500(週足)

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 週足レベルだと、少し見にくいですが、もう少しで中規模調整入りですかね。

 日足レベルと併せて考えると、4月後半、5月前半辺りで目立った調整って感じでしょうか。

 月足レベルでは、ここでは表示しませんが、MACDは上向いているため、上昇トレンドは見ておいた方が良いと思います。

 月足レベルでは第5波(4以降の波)が含まれますが、おそらく中規模調整でマーケットは少し混乱するかもしれません。

 

〇S&P500(日足)

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 RSIは70.0を超えてきましたね。

 MACDと合わせて考えると、売られやすい水準に達しています。

 

〇S&P500(日足)

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 最後にパラボリックですが、まだ陽転が続いています。

 ただ、日数的にそろそろ陰転かなといったタイミングかもしれません。

 

 ということで、S&Pについてまとめると、

①年内で天井をつける可能性には警戒が必要

②ただし、数カ月は上昇基調が続くだろう

③直近では、プチ調整、中規模調整には警戒の必要性あり

といったところでしょうか。

 今から始める場合は、買っておいた方がいいですが、天井が遠くない可能性についてはよくよく注意しておきましょう。

 

 ちなみにNYダウも似たような感じです。

 ナスダックは、ここ最近出遅れていましたが、少しずつピッチを上げてきているというか、S&PやNYダウに追いつこうとしています。

 これだけ見ても、アメリカは金融相場から業績相場に主眼が置かれていることがわかりますが、そのうち、この3つの指標が総じて上げていく可能性があります。

 そのタイミングでようやく日本の株式市場も復活かといったところでしょうか。

 今回は日経平均株価指数については触れませんが、今の揉み合い相場というか、三角持ち合いというか、斜行三角形というか、この波形パターンで30,000円の攻防戦が繰り広げられています。

 この意味は、冒頭で触れたように、決算とか、コロナワクチンとか、そこら辺の影響が強いためもたついているということなんですが、これが上振れるのか、下振れるのかは、もう少し日を待つ必要があるのかもしれません。

 日経平均株価指数については、また後日、アップしようと思います。

 

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