S&P500が3000レベルを下抜けする材料は何か。そこからが本当の阿鼻叫喚相場。
少し時を置いてしまいましたが、S&P500の長期シナリオをアップしておきます。
6月開催のFOMCで、FRBは0.75bpの利上げを行いましたが、それを受けていよいよべマーケットが本格化し、リセッション(景気後退)の確率が高まってきました。
このブログではかねてから急落が起こると予測していましたが、今年に入ってからは下値のメドをひたすら模索する作業を中心に行っています。
理屈を説明するのは面倒なので、今回は長期シナリオをイメージとして捉えてみていただくに留めます。
今回の主題なんですが、S&P500がオレンジのゾーンに入ってくる場合、どのような材料を想定しておく必要があるかということです。
ちなみに、黄色のゾーンの場合、単純に「急激な利上げによるリセッション局面入り」がメイン材料になります。6月FOMCで、FRBは、今年以降のFFレートの水準がどうなりそうかを次のように発表しました。
2022年:3.4%
2023年:3.8%
2024年:3.4%
そして、FRBの発表にもとづき、2022年6月20日時点で、FEDWATCHでは次のような確率のもと、FFレートの水準を予測しています。
先ほどのチャートにおける黄色のゾーンでは、来年早々、FFレートが3.8%程度になると前提にした場合、S&P500は3200水準は見ておいた方が良いだろうと結論付けています。
問題は、その後、反転上昇するのかということなんですが、それはいくらなんでも苦しいよなぁと感じているからです。
理由としては、単純に、アメリカのCPIが8.6%あって、FFレートを仮に3.8%まで持って行ったところで、果たしてCPIを3.0%程度まで下げられるのかという疑問を抱いているからです。
アメリカのCPIが非常に高くなっている主要因は、コロナ禍からの急激な回復によるサプライチェーンの逼迫と、それに拍車をかけているウクライナ戦争であるため、金融引き締めだけでは物価の高騰を抑えることが難しく、想定を超える利上げがそのうち必要なのではないかといった思惑が広がるような気がします。
FRBは、現在、最高で3.8%を想定していますが、これが4.0%を超え、5.0%程度に向かって行くと、先ほどのチャートの黄色ゾーンを下回り、オレンジのゾーンに入っていくのではないかと考えています。
S&P500がオレンジゾーンに入っていく第一の理由がこれです。
〇S&P500日足チャート
その他の理由としては、何らかの金融ショックが起こってもおかしくないと考えています。金融ショックの類としては、例えば、どこかの国の債務不履行リスクや住宅ローン、クレジットローンなどの債務ショック、新興国や後進国などの通貨危機なんかがどこかのタイミングで起こるかもしれません。
オレンジゾーンというのは、それだけ世界経済が深刻になるという意味です。
他に考えられることとしては、アメリカだけでなく、ヨーロッパ経済もリセッションに陥る、もしくは、これから回復軌道に乗るだろうと思われている中国経済が立ち直れない、といったことは想像に難くはありません。
そもそも、ウクライナ戦争による物価高騰の影響をもろに受けるのはヨーロッパで、リセッションとしてはヨーロッパの方が程度がひどいように思いますし、欧米経済との関係性を考慮すると、中国経済もリセッションの影響を免れることは難しいだろうと考えるのが妥当なような気がします。
つまり、世界経済自体がリセッションに陥っていくシナリオがオレンジのゾーンといえます。
これはダークホース的な考え方ですが、何を間違ったか、日銀が、世論に負けて、指値オペの水準を引き上げてしまうことです。
さすがにないとは思いますが、例えば、現在の▲0.25%~0.25%の間で行っている指値オペを0.5%、0.75%というように引き上げてしまうなら、日本だけでなく、世界中の株式市場はさらに余計に暴落すると思います。
参院選に当たり、政党によっては「金融緩和政策を止めよ」という意見が広がってきているようですが、指値オペ自体、ステルステーパリングのようなもので、徐々に緩和を弱め、金融緩和の出口に向かおうとしているわけです。にもかかわらず、「金融緩和政策を止めよ」というのは暴論中の暴論で、金融政策の本質を理解していないことに等しく、日銀人事が変更される来年4月以降どうなるかには注意を払っていく必要があります。
以上、まとめると、オレンジゾーンに入る材料は次のようになります。
①物価が高止まりし、FFレートが5.0%に向かって行く?
③世界経済自体がリセッション入りする?
④日銀が金融緩和政策を解除してしまう?
の4つです。
〇S&P500日足チャート
S&P500は、目先、3500、3200が下値のメドとして強く意識されやすいように思います。この間に、コロナ前の高値水準である3400水準がありますが、ここも意識されやすいでしょう。
現段階では、中期的に見て、S&P500はつるべ落としのような暴落が待ち受けていると考えていますが、3200レベルを下回ると、3000が強く意識されるでしょう。
おそらく、この過程で小規模のリバウンドが入りながら下落していくと思いますが、ぐっと力強く止まるように見える水準が3200か、3000であろうと思われます。
つまり、それまでの小幅反発よりも少し大きめに反発するのがこの水準になろうかと思いますが、その後、仮に3000を下回ると先ほど挙げた材料が起こり、S&P500はオレンジ色のゾーンに突入していくように思います。
これがあり得なくないからやっかいなんですよね。
この場合、最終的な底値水準としては、2400、1800水準が視野に入ってきます。
積立で放ったらかし投資を資産運用の王道と捉える向きがありますが、もし、これらの水準に達する場合、この水準では、おそらく、円高・ドル安になっているため、余計に損失が深くなります。
この時、積立投資で放ったらかしにしている人はどう考えるのか。
きっと、「長期投資だから、何年か待てばもとに戻るよ」、こんな意見が広がるでしょう。
この期に及んでも思考停止です。
グローバリズムが終わり、産業構造がこれまでよりもブロック経済化していく中で、次の時代はおそらく、軍需産業を中心に、エネルギー、食糧、国内経済といった、国家の基盤に関する安全保障分野に最先端の技術が活用されやすくなるように思います。
国家の中核を再構築していく流れになるため、敵同士は奪い合い、仲間同士が分かち合うといった世界経済の二極化が現れやすくなるでしょう。
その狭間で敵と味方がいかに共存していくかという流れになるため、これまでのグローバリズム程はマネーの流れはスムーズには行かないだろうと考えられます。
世界経済が良くなるのか、悪くなるのかはわかりませんが、中途半端になる可能性も大いにはらんでいることは否めません。
株式市場が深く下がり、その後、右肩上がりで株価が上昇していくかは正直わかりません。
個人的には、少なくとも、株価の巡航軌道は、今のところ、ニュートラルと捉えています。
最近は、こんなことを考えています。
物価と雇用次第ですが、これまでのようにゼロ金利が妥当なのかという議論が起こるような気がしています。
リーマンショック後、アメリカ株が右肩上がりで推移してきたのは、金利水準を下げてきたからで、経済成長率が高いからではありません。
むしろ、その間、経済成長率が高いのは新興国です。
つまり、アメリカの場合、国内経済が弱いがために金利を低位で保ってきたという背景があります。
産業構造を変えないならば、次の金融緩和でもゼロ金利政策が再び起こることは考えられますが、物価が3.0%程度の水準に戻っている状況で、国内の需要を再構築していくような産業構造に転換する場合、やはり、適度な金利水準の維持は必要になってくるように思われます。
このように考えると、今進もうとしている株式市場の暴落局面が終わりを迎えた後は、おそらく、緩やかな、なだらかな、株価の上昇が好ましいとされるのかもしれません。
この場合、本当に株価はもとの水準に戻るのか、もしくは、戻るとしても、相当長い年月が必要なのではないかということも想定しておく必要はあるでしょう。
長期投資は、日ごろ短期投資を行っていく中で積み上がった結果に過ぎません。
このため、投資自体は、たまには中断してもいいですが、考えながらなるべく続けることが大切です。
安易に何も考えずに投資をすることは、それ自体博打であり、たとえ積立投資といえども、学びながら、そして、考えながら実践していくことが重要といえます。
この暴落劇でせっかく芽生えた日本人の投資行動が潰えず、その先の「考える投資」に向かっていくならば、積立投資は日本人にとって有意義なものになるでしょう。