アメリカの金融緩和終了後、金利はどこまで上がるのかを確認する方法。
アメリカ時間3/16、FRB(Federal Reserve Board:連邦準備理事会)はFOMC(Federal Open Market Committee:連邦公開市場委員会)において政策金利であるFF(Federal Funds:フェデラル・ファンズ)レートを25bp(basis point:ベーシスポイント)引き上げ、金利のレンジを0.25%~0.50%としました。
さぁ、これでアメリカはいよいよそれまで続けてきた大規模な金融緩和政策を改め、金融引き締め政策に政策を変更していくわけですが、今後、アメリカでは金利が上昇していきます。
そこで、今回はアメリカの金利がどこまで上がっていくのかについて考えてみたいと思います。
投資初心者向けに解説すると、なぜ、金利が特に重要かといえばその理由はいたって単純なものです。
金利が上がると企業業績が悪くなり、また家計の消費活動にも悪影響が及ぶためです。金利が上がると返済利息が増えますよね。これが原因で企業収益が減少したり、家計にとっても支出が増えることにつながるため景気にとっては良くないわけです。
だから、投資を行う上ではとても重要な要素になってくるんですね。
それでは、具体的にアメリカの金利がどこまで上がるのかなんですが、それを予測している人たちがいます。
CME
CMEはChicago Mercantile Exchangeのことなんですが、これはシカゴにある先物取引所です。CMEでは商品先物取引や金融先物取引を主に取り扱っているんですが、株式先物やオプション取引なども扱っています。いわゆるデリバティブ(金融工学に基づいた取引)専門の市場です。
ここで働いている人たちがアメリカの金利、つまり、政策金利であるFFレートの水準を予測してるんですね。
例えば、こんな感じで。
※CME
英語で書いてあるのでわかりにくいかもしれませんが、この棒グラフは次回のFOMC、つまり、アメリカ時間で5/4に開催されるFOMCでFFレートが何%になるかを予測したものです。
要は、アメリカの次の利上げは何%だと思う?ってことなんですが、Current(現時点)では0.50%~0.75%と予測する人が最も多く、次いで0.75%~1.00%と予測する人が多くなっています。
ということで投資家は次回のFOMCでは0.50%~0.75%の利上げが行われるだろうと織り込みながら投資をしていくんですね。また、0.75%~1.00%の利上げに対してはいわゆるタカ派的な考え方になるので、この水準の利上げが実際に行われるとサプライズとして相場はネガティブに反応しやすくなるかもしれないと予測することができます。
これについては次回のFOMCにおける利上げ幅の予測なんですが、それでは年内はどうかというとこんなふうに見ていきます。
※CME
これは2022年12/14予定のFOMCにおけるFFレートの予測水準を表した棒グラフです。
現時点(Current)では2.00%~2.25%と考えている人が一番多いみたいですね。こんなに上がってたら株式市場は暴落だと思いますが、年内ではこう思う人が今のところ一番多いため、年内2.00%への利上げを現時点では織り込みだしていると心に留めておく必要があります。
んじゃ、来年はというと、現時点では2023年7/26開催のFOMCまでの予測しか出ていませんが、次のようになっています。
※CME
最も可能性の高い水準が2.25%~2.75%、次に高いのが2.75%~3.00%となっています。
先日、FFレートは0.25%~0.50%のレンジに引き上げられたばかりですが、それと比べると随分高い値が予測されています。
来年、本当にこうなるならリセッション(景気後退)の可能性は高まるように思います。
先ほど見た年内の予想レンジが2.00%~2.25%だったので、株式市場にとっては年後半は嵐が訪れるように思います。
なぜ、株式市場はこのように金利が上がるのを嫌うかというと、具体的には企業のEPS(Earnings Per Share:1株当たり利益)や配当利回りの優位性が今と比べ相対的に低下するからなんです。
だって、金利が高くなるんだったらわざわざリスクのある株式投資なんかしなくても安全資産に資金を振り分けておいた方が安心ですもんね。
なので、金利が上がると株式市場にとってはマイナスの影響が出やすいんです。
ただ、株式市場にとって今すぐ悪影響が及ぶかというとそうではありません。繰り返しになりますが、依然としてFFレートは0.25%~0.50%とゼロ金利状態に近い水準です。
このため、金利の低い今のうちに儲けるだけ儲けておこうと株式市場の投資家たちは考えます。
こういった理由から最近の株式市場は再び上昇相場に入っているんですね。
で、実際にFFレートが2.00%の視野に入ってくると、株式市場からお金が流出しやすくなるというのが通常の業績相場のパターンだったりします。
すでに金融緩和相場は終わりました。そしてピークを着けてからの下降局面は業績相場に移行するまでのいわば調整局面という位置づけです。
調整局面がまだ終わっていないのか、すでに終わったのかがわかるにはもう少し時間の経過が必要ですが、何ごともなければ業績相場入りしていくと考えても良いかもしれません。
ただ、何ごともなければということなので、例えばウクライナ情勢がさらに逼迫するとか、原油価格が再び急騰するとか、短期的にも中・長期的に見てもネガティブな要因は依然として多く残っているため、正直、何とも言えないというのが現状です。
今回お伝えしたのは、株式投資にとって金利の動向が非常に重要であること、そして、今後、金利がどれぐらいの水準まで上昇していくのかをどのように把握すると良いかの2点です。
投資に慣れている人はこういうふうに見ていくんですが、投資初心者の頃はどう考えていいかすらわからないのが実情かと思います。
本来、情報には初心者も中級者も上級者もありません。
違いがあるのは、その情報をいかにつかむかという技術だけです。
なので、裏を返せば、誰でも重要な情報にはアクセスすることができるため、こういうポイントを外さないようにすることが投資にとってはとても大切なことといえます。
相場に一喜一憂する暇があったら、しっかりと知識・技術を身につけられるように専念していった方がいいと思います。
それが上達への近道だったりしますしね。
ということで、今回はこれまで。