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株式相場の動きが止まっている。いったい、何をそんなに気にしているのか。

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 昨日のアメリカの株式市場、そして、今日の日本の株式市場は動意薄の展開。その原因はFRBのパウエル議長が利上げについて急にタカ派的な発言をしたからです。

 今回は、パウエル議長が何と言ったのかを確認した上で、株式市場の状況と債券市場の今について見ていきたいと思います。

 まずはこの記事から。

www.bloomberg.co.jp

 

 この記事の中でパウエル議長はこのように言及しました。

 必要に応じて次回5月の連邦公開市場委員会(FOMC)会合で政策金利を0.5ポイント引き上げる用意がある

 「おっと、マジか・・・」

 昨晩のアメリカの株式市場の反応は一時的に急落、利上げのペースを速める可能性が高まることに対して警戒感が広がりました。

 基本的な考え方を整理すると、株式市場は金利の上昇を嫌います。その理由は、企業業績に対して悪影響を及ぼすからです。

 例えば、企業がお金を借りる場合、借入れ金利が上がるとそれだけ返済利息が増えます。利息の支払いが増えるということは企業の経費が増えることになるため、結果として純利益が減ることになります。

 企業の成長力をパクパク餌のように食べていたい株式投資家にとっては利上げの情報は苦い味です。だから、株式の投資家は利上げが大嫌いで、利上げが本格的にされるようになると株式市場から退出していきます。

 

 FF金利誘導目標を1会合ないし複数の会合で0.25ポイント超引き上げる、より積極的な行動が適切だとの結論に至った場合は、そうするだろう 

 前回、3/16開催のFOMCでは、「高インフレは退治しなきゃダメなんだけど、ウクライナ情勢もあるし、いつなんどき不測の事態が起こるかもしれないから、一応金利は0.25%にするけど、0.50%に一気に上げることは様子を見ながら考えるよ」といった発言をしていました。

 それが、昨晩、1会合ないし複数の会合で0.25ポイント(0.25%の意味)超引き上げるかもしれないといった真意は高インフレの状況が手ごわすぎると考えていることにあり、これをしっかり退治するには0.25%を超える、例えば、0.50%の利上げのように1回の会合で飛び級のような上げ方が必要になる時が来るかもしれないという警戒感が強くにじみ出ています。

 

 さらにこんなことも言っています。

 同僚と私は、より迅速に行動する必要があるとの結論に達する可能性が十分あり、その場合はそう行動するだろう。

 通常想定される中立水準を超えて、より抑制的なスタンスに入る引き締めが必要になると判断した場合も、そう動く考えだ

 要するに「より速く動くかもしれない」、「中立水準を超えたら金融引き締めを強化する」ということです。

 

 FRBはテーパリング(金融の量的緩和解除)をすでに終え、3月のFOMCから利上げを開始しました。

 今後の道のりはさらなる利上げとFRB保有する資産の縮小ですが、インフレの状況によっては利上げが速まり、資産の縮小も果敢に行っていくというメッセージを発信したため株式市場では警戒感が広がりました。

 

 でも、昨晩、そして今日の株式市場を見ていると、一時的に反応し下落したものの、そこまで言うほど下落していない、むしろ、パウエルさんがマーケットの反応を試しているような小さな下げ幅だったので、マーケットは今、こんなことを考えているように思われます。

 パウエルさんがタカ派的なことを言ってたけど、とはいえ、FFレートが0.50%になったところでまだ金利低いよね。だから、大丈夫!

 こんな思惑が働いているようです。

 安易だわぁ。

 

 そんなわけで、現在のアメリカの株式先物市場は若干上げています。そして、アメリカで取引されている日経平均先物も若干の上げ。

f:id:fp-office-kaientai:20220322213255p:plain※世界の株価と日経平均先物

 

 パウエルさんの発言はマーケットにとってそれほどネガティブに受け止められているわけではなさそうです。

 

 というわけで、日経平均株式指数のチャートを確認すると、今日の動きはこんな感じでした。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 

 50日移動平均線を突破し、100日、200日移動平均線の下に戻ってきました。

 方向感としては上げ、フィボナッチ・リトレースメントの0.5や0.618の水準が視野に入ってきています。

 MACDも上昇トレンドを描いており、今のところ強気相場を維持している状況です。

 現状では一気に大きくバッと上昇する可能性は薄いと思いますが、おそらく近いうちに反転下落していくかもしれません。

 その理由は、アメリカの長短金利差の縮小か、原油価格の上昇のような気がします。

 注目すべきは米国債利回りです。

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※世界の株価と日経平均先物

 

 5年債利回りが10年債利回りよりも高くなっています。これを逆イールドといいますが、このような短期債の利回りが長期債の利回りを上回る状況を株式市場は嫌います。

 上の表にはありませんが、米国債の利回りは現時点で、3年物国債利回り>10年物国債利回り、5年物国債利回り>10年物国債利回り、7年物国債利回り>10年物国債利回りといったように、より期間の短い国債の利回りが長期利回りを超えるようになっています。

 

〇米長短金利

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※TradingView提供

 

 これはアメリカの長短金利差、つまり、2年物国債の利回りと10年物国債の利回りの差を表したものです。

 どんどんとその差が縮まってきていることがわかります。一般的には金利差が0.00%を下回ると逆イールドと呼ばれ、半年から2年先程度でリセッション(景気後退)局面が訪れると言われます。

 一方、アメリカの3ヶ月債の利回りが現時点で0.574%となっていることから、すぐにリセッション入りするとは言い切れません。

 しかしながら、債券市場ではリセッションの足音を感じ取るように動いているため、利上げ観測が早まれば早まるほど、金利上昇に伴うリセッションへの警戒感が高まる可能性は見ておく必要があるでしょう。

 

 片や、原油価格が1バレル=110ドルに戻っていることも警戒すべき点ではあります。

 

WTI原油CFD(日足)

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※TradingView提供

 

 マーケットとしてはウクライナ情勢が硬直化し、動意が薄いため、原油価格もいったん小休止している状況のようです。

 

 さぁ、もう少しでアメリカ市場がオープンします。

 今晩の米株式市場、そして明日の東京株式市場はまだ動意薄の展開なのか、それとも、上下どちらかに大きく動き出すのか。

 株式市場は何気に今、重要な局面を迎えているような気がしています。

 

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