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ロシア軍のザポロジエ原発占拠により、世界経済は不況に向かっていくのか。

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 クライシスというものは一度堰を切ってしまうと、まるでドミノ倒しのように次から次へと起こるもの。

 今週のマーケットを見て、そう感じています。

 今日は、中・長期的な下落相場の起点がどこにあるかについて、今のうちに考えておきたいと思います。

 

 最近、強く感じていたことは、ヨーロッパの相場なんですよね。

 なんでそう感じているかというと、これです。

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※世界の株価と日経平均先物より

 

 2022年3月4日9時過ぎ時点では、東京市場はもちろん閉まっていますが、ヨーロッパ市場が開いています。

 特に今日は下げがきつく、原因は、ウクライナにあるヨーロッパ最大の原発といわれるザポロジエ原発がロシア軍に占拠されたという報道があったためです。

 日中、東京株式市場では、この原発が砲撃を受けて火災が発生し、「よもや原発事故かっ!」といった懸念が浮かぶ場面もありましたが、砲撃を受けたのは訓練施設ということで原発自体は被害を免れました。

 ただ、ロシア軍にヨーロッパ最大の原発を取られたとなると、ウクライナ国内の発電能力が低下するため、この影響がヨーロッパの国々にとっていかほどのものになるか、これが、今、欧州の株式市場で暴落が起こっている背景であろうと推察できます。

 それを受けてか、エネルギー、鉱物、穀物は軒並み上昇、米国債の価格も上がっています。

 

 ロシアの株式市場は、ここ数日、取引が停止されているため、ずっと止まっていますよね。

 ロシア国債も事実上のデフォルト状態、ロシア通貨であるルーブルも急降下し、ロシアに端を発した金融危機がまさに起こっている最中です。ロシア国債を購入していたヨーロッパの国々にとっては債務不履行の恐れがあるため、金融危機がヨーロッパに波及するのではないかといったところです。

 金融面でのこのような流れが出来てしまっているところに、電力需給の更なる逼迫が重なるとなると、実体経済の悪化が躊躇なく予想されます。

SWIFTからのロシア締め出し

⇒ロシア金融危機

⇒電力の逼迫

実体経済の悪化

 この一連の流れが出来てしまった以上、株式市場にとっては危機的な状況を覚悟しておく必要があるでしょう。

 

 個人的には、ここに注目しています。

〇米長短金利差(週足)

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※TradingView提供

 

 これはアメリカの2年物国債利回りと10年物国債利回りの差を示しているチャートです。

 2年物国債の利回りを短期、10年物国債の利回りを長期と読み替えてもらえるとわかるんですが、この差が縮小してきています。

 歴史的に、いわゆる「長短金利差」が縮小し、ゼロになると、いずれリセッション(景気後退)に入ると言われています。要は不況になるってことです。

 現時点では、長短金利差が0.3%を切ってきています。

 あと少しでゼロ%になるわけですが、この裏側にあるのが「アメリカにおける金融引き締め政策への転換」と「ロシアのウクライナ侵攻」です。

 ロシアのウクライナ侵攻がなければ、長短金利差の縮小はもっと遅く、後に起こるだろうと予測していましたが、プーチン大統領の決断が世界的な不況を前倒しでもたらす引き金を引いてしまったようです。

 

 株式市場にとっての中・長期的なシナリオの骨格を次のように考えます。

ロシアによるウクライナ侵攻が実体経済をより悪化させる

 その起点がヨーロッパということです。

 

 おそらく、これを抑制するために、この状況を打破するために、また、その後、起こってしまった景気後退から抜け出すために、どこかのタイミングで金融政策の変更、つまり、金融引き締め政策の遅行、もしくは、金融引き締め政策から金融緩和政策への揺り戻しがあるかもしれませんが、これまで発表されている様々な経済指標では判断がつきかねるため、今後、中央銀行がどのように考えるか注視していく必要があるでしょう。

 

 さて、いつも通り、日経平均株価指数について見ていきたいと思います。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 

 日経平均株価指数は昨年の9月をピークに下降局面に入っています。

 大まかな流れとしては、アメリカの金融政策の変更に加え、ロシアのウクライナ侵攻による下落です。発火点はいわゆる岸田ショックではありますが、大局的にはそのような流れのもと動いています。

 このシナリオの軸は「ヨーロッパを起点とした金融危機実体経済の悪化」です。

 チャート面での波形取りは以前お伝えしたものを踏襲し、予測も変えてはいません。

 ちょっと前に日経平均株価指数が26,000円の攻防戦を繰り広げ、いったん下げ止まった時に「下げ止まり感がないんですよね」ということをお伝えしましたが、今日の相場で日経平均株価指数は3度目の26,000円を巡る攻防に突入しました。

 中・長期的に見ると、日経平均株価指数の巡航軌道である1000日単純移動平均線(赤色の折れ線)が現時点で24004.17円なので、いずれこの水準には戻ってくるだろうと考えています。中・長期的な下値の目処は24,000円付近ってことですね。

 これはコロナショック前の株価水準なので、ここまで戻ることには違和感はありません。

 フィボナッチ・リトレースメントでは0.5の水準に23574.30円があり、これはコロナ相場のピークである2021年9月高値からの半値戻しに当たるため、23,500円付近というのも現実的にはあり得る水準かと思います。

 問題は、仮に中・長期的にそれ以上下がるかということです。一応、フィボナッチ・リトレースメントでは0.618という黄金比の水準が待っていて、その値は21871.09円となっています。

 所詮、日本企業の実力はそんなものと考えているので、一応、念頭には入れておきますが、この水準が22,000円割れですね。ここは日経平均株価指数の巡航軌道からそれなりに離れる水準です。

 2021年9月高値から約30%の下落率に当たりますが、コロナショックの下落率に匹敵する値です。

 

 とはいえ、決め打ちは良くないので、中・長期的には下がる可能性は高いかも程度で考えておく必要はあるでしょう。

 

 一方、短期的な見方としては、おおよそ、25,500円、25,000円を下値の目処と考えています。

 おそらくここで「下げたなぁ」という空気にいったんなるように思います。

 その後、反発し、戻り高値は26,500円、27,000円、27,500円、28,000円と切り上がっていくかもしれません。

 ただし、あくまでも短期的なことなので、どこかの水準で再び下落していくでしょう。

 そして、再度の下落が始まり、25,500円を割ってくると、そこから一気に地獄に突き落とされると思います。

 なぜならば、25,500円から24,000円までの間には際立ったサポートライン(下値支持線)がないからです。いわば空白地帯ですよね。

 ということで、25,500円や25,000円ぐらいの水準が超重要な下値支持として意識されてくると思います。

 

 結局、不況になっていくんですかね。経済指標などのデータは悪くないんですが、チャート面で見ると下向きなんですよね。

 片や上昇シナリオも描こうと思えば描けるんですけど、上昇したとしても2021年の9月高値にはほぼ戻らないように思います。

 なぜならば、ザポロジエ原発をロシア軍が占拠したことで、過去の利上げ局面のパターンが通用しないだろうと考えられるからです。

 株式市場にとっての希望は、今後、「利上げをしないこと」、「ロシアに対する金融制裁を緩めること」、もしくは「金融制裁の方法を変えること」になってくるのではないでしょうか。

 しかし、利上げをしなければ、その後、株価が天井を着けた後の衝撃はより大きくなるでしょうし、また、ロシアに対して金融制裁を緩める、変えるというのは道義的に宜しくないわけです。

 つまり、株式市場にとっては、今のところ、短期、中期、長期いずれにおいても向かい風が続く可能性は高いだろうと考えています。

 

 目先、上昇したとしても騙しだと思うので気を付けていきましょう。

 

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