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動きが止まった日経平均株価指数。その理由と今後の展開、2つのシナリオ。

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 先週の日経平均株価指数は、3/9(水)以来続いていた上昇基調にブレーキがかかった形で幾分調整気味となりました。

 短期的には非常に難しい局面を描いていますが、これから反落していくのか、それとも、反発していくのか・・・。

 短期投資で迷ったら大局を見極めるべし。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 

 このチャートを見て、パッと思うのは「日経平均、下がるのかなぁ」ということではないでしょうか。

 確かに200SMA(200日の単純移動平均線:紺色の線)で上昇が跳ね返されたので調整かなと思うかもしれません。

 かといって、3/9(水)以降続いてきた力強い上昇が終わるのかという疑問もあるでしょう。

 こういう見方って短期的な目線ですよね。短期的な目線で見ているからそんなふうに思ったりします。

 個人的には、今、短期投資で運用を行っているので気持ちはわかります。いやぁ~、どっちに動くのか、非常に難しい。

 

 こんな時はこれが大事です。

基本に返って大局を見る

 マーケットの中心にあるのは「インフレの高進」です。

 コロナ禍に伴うサプライチェーンの逼迫、供給制約なんて言われますが、そもそもこれがインフレ高進の原因です。そしてその後、ロシアによるウクライナ侵攻があり、インフレ高進に拍車をかけています。

 そんな中、アメリカの中央銀行に当たるFRB連邦準備制度理事会)が金融政策を金融緩和から「金融引き締めに転換」しました。これに伴いアメリカの10年物国債利回りは上昇し、先週、2年物国債利回りとの差である「長短金利差がマイナス圏に突入」しました。

 一方、先週の金曜日に発表されたアメリカの「雇用統計」は、FRBの姿勢に対してはそれほどタカ派的でもないとの受け止め方になっています。

 3月の非農業部門雇用者数が前月比43.1万人増と前月と比べ下回ったものの増加はしており、また、3月の失業率が3.6%とさらに低下したことを受けて、雇用環境は改善されていると受け止められました。

 賃金については、3月の平均時給が前月比、前年同月比ともに伸びており、賃金の上昇がさらに目立つようになっています。

 確かに足元では賃金が上昇し、雇用環境がさらに改善されているため、FRBとしては利上げを急ぐだろうと思うかもしれませんが、雇用統計の発表に先駆けてFRBが5月のFOMC連邦公開市場委員会)でFF(フェデラル・ファンズ)レートを50bp(ベーシスポイント)引き上げることがすでに織り込まれていたので、株式市場の反応としてはサプライズにはほぼなりませんでした。

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※世界の株価と日経平均先物

 

 ここまでをまとめると、こんな感じです。

◦インフレ高進

FRBが金融引き締め政策を開始

◦長短金利差が縮小し、マイナス圏に突入

◦雇用環境は改善されている

 これだけ見ても、株式市場にとっては非常に大きな変動要因が目白押しになっていることがわかります。

 因果関係を整理すると、大きな流れでは、

サプライチェーンの逼迫➡人手不足➡賃金上昇➡インフレ高進➡金融引き締め➡長短金利差縮小

となるかもしれません。

 このような基本的な流れの中で、ロシアによるウクライナ侵攻が発生し、そんなこんなで株式市場は動いています。

 

 まぁ、普通に考えると、長期的にはだろうとなります。例えば、2022年後半、2023年、2024年辺りは、今のところ、この見方が優勢ではないでしょうか。

 ただですね、中期的、短期的には必ずしもとは限らず、そこが株式相場を難しくさせています。

 中期的にも下がるの?いや、そうとも限らない・・・。

 短期的にも下がるの?いや、そうとも限らない・・・。

 これを見極める必要があるので、決め打ちはせず、臨機応変に状況を見ながら運用を行っていく必要があります。

 

 そこでテクニカル的なシナリオとしては、従来の見立てに加え、もうひとつ準備していたシナリオもアップしておきます。

 まずは従来のシナリオです。

 日経平均株価指数は2021年9月の高値をピークに下落波動を描いており、長期的には24,000円割れを想定しているというシナリオです。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 

 個人的には日経平均株価指数のこの巡航軌道をメインシナリオとしていますが、中期的、短期的に少し修正を加えたものが次のシナリオです。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 

 従来のシナリオとの違いは、3/29(火)につけた直近高値を3/9(水)から続いてきた上昇のピークとし、今起こっている調整がもう少し続いた後、再び上昇局面に転じていくというシナリオです。

 その先は従来のシナリオ通り、再び下降局面入りするというものですが、中期的、短期的な見立てとしては、少し上がってまた上がるというのがこのシナリオの特徴です。

 このシナリオの場合、直近の下値の目処は、27,000円近辺(0.382水準)、26,500円近辺(0.5水準)、26,000円近辺(0.618水準)としています。

 その後反転上昇し、再び28,500円を目指す動きが起こり、ここを突破すると29,000円、29,500円と上値が切り上がっていくだろうという想定です。

 そして、上昇局面が終わると、従来のシナリオのような下降局面に転じていきます。

 エリオット波動理論においては、従来のシナリオ同様、このシナリオでも、2021年9月高値からの波動を「ダブルジグザグ」と位置づけています。

 MACDはそろそろ反転しそうなシグナルが出てきており、また、RSIでは必ずしも割高であるとはいえませんが、割高な水準に近づいているため、日経平均株価指数の調整がもう少し続くと見るのは妥当かもしれません。

 

 一目均衡表も一応見ておきますが、先週の金曜日、日経平均株価指数が雲の上限に乗っかってきたため、雲抜けするかどうかがポイントになるでしょう。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 先週金曜日のローソク足の真下に50SMA(50日単純移動平均線)が来ているため、フィボナッチ・リトレースメントにおける0.382水準である26940.41円近辺は下値のサポートとしては強く意識されるかもしれません。

 ということは、おそらく、27,000円近辺がこのシナリオにおける直近の下値目処のような気がします。

 ということで、結論としては、新たに示したシナリオとしてはまとめると、こんな感じになります。

 

日経平均株価指数(日足)

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※TradingView提供

 

 個人的に気になるのは、アメリカの長短金利差がマイナス圏に突入したことです。

 歴史的には長短金利差がマイナスになると将来的にリセッション(景気後退)入りすると言われていますが、アメリカの3ヶ月物国債利回りを見ると、現時点では0.525%と依然として低い水準にあるため、株式市場としては短・中期的には足元で景気に対する悲観論はまだ薄いように思います。

 このようなことも含め、新たなシナリオを準備したんですが、もうひとつ、気になる点があります。

株式市場の高インフレ慣れ

 これなんですよね。

 そもそもですが、コロナ禍からの回復で始まっているインフレの高進がロシアのウクライナ侵攻を受けてさらに上昇していく中で、利上げやFRBのバランスシート縮小といった金融引き締め政策だけで落ち着くのかという疑問が残ります。

 インフレ高進の中身が、通常の景気回復・拡大局面から過熱期に至る過程で起こるディマンドプル型(需要の拡大が引き起こすインフレ)のインフレではなくコストプッシュ型のインフレであり、サプライチェーンの逼迫や戦争といった構造上の問題によって引き起こされているため、解決に相当な時間がかかるような気がします。

 このような状況の中でFFレートは現時点で0.25%~0.50%のレンジ内にあります。

 つまり、

高インフレなのに、金利が低い状態

が足元ではもうしばらく続く可能性が高いため、株式市場は「まだ行ける!」と短・中期的に判断するかもしれないと見るに至りました。

 個人的には、先々週、「チャート面が見えなくなった」と感じました。この理由は、このような読みの難しさにありました。

 こんなふうにマーケットを大局から紐解き、投資家の心理状態を読み解く作業は時として難しさを感じざるを得ません。

 ふたを開けると単純だったわけですが、自分の力量としてはまだまだ未熟と痛感させられます。

 資産運用の奥深さを実感した先週でした。

 お金のためにやる資産運用はつまらない。ひたすら考え抜く楽しみがあるからこそ、資産運用は面白い。

 

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