資産運用は難しそうと思っているけど、自分なりにやっておく必要があると思っている初心者のために、こういうやり方はどうかと、目いっぱいギリギリで考えてみた「最低限のポートフォリオ」
資産運用の戦略絵図をどう描くか。
この1枚の絵図で投資戦略を組み立てていきます。
投資スパンにおける設定条件)
○日経平均株価指数は3年3ヶ月で下値が一巡する
○その理由は、おおよそアメリカ大統領選挙のサイクルだろう
○つまり、アメリカの世界戦略や経済政策、金融政策が変わる局面に合わせて、マネーの流れが変わる
マーケットを取り巻く世界情勢の設定)
○バイデン政権下での米中関係は、トランプ政権の時よりもマイルドになるだろう
○ただ、政治面では人権問題などを筆頭に強硬に出る可能性が高い
○外交・軍事面においては、必ずしも東アジアへのプレゼンスを弱めるわけではないだろう
○経済面では政治・外交の駆け引きの道具として使われるが、極端な軋轢に発展する可能性は比較的薄いだろう
○この結果、米中の対立構造は、トランプ政権時のナショナリズム路線からグローバル路線に揺り戻され、特にSDGs(持続可能な開発目標)を掲げる企業への投資、いわゆるESG投資を中心にマネーが集中されるようになるだろう
○ただ、これは、あくまでも米国政権が民主党政権の場合に限られる可能性が高いため、特にコロナショック後の景気回復以降の富裕層への増税が発行された後は、共和党政権の巻き返しが起こる可能性を見ておく必要がある
ファンダメンタルズの設定条件)
○コロナ後の景気の回復が織り込まれているが、今後は、景気の回復は実現されることを前提に、どのように成長・発展していくかを予測する必要がある
○アメリカのGDP成長率や消費者物価指数は上昇する可能性が高いと考えられる
○また、雇用が回復する過程で失業率は低下していくだろう
○ただ、景気の回復や成長に伴い中・長期の金利水準が切り上がっていくため、FRBの金融政策が緩和拡大・ニュートラル・引締めのいずれに修正・変更されるかによって株式市場の変動が異なる
○さらに、世界経済の回復に伴い、原油需要の回復も見込まれてくる可能性があるが、原油価格が高騰してくるとシェールガスへの切り替えが進むため、今後、極端なスピードで原油価格が上昇するかどうかは考えにくい
こんな感じで条件を設定しましたが、もう一度チャートに目を移していきます。
○日経平均株価指数(月足)
さて、10年を超える長期投資において、日経平均株価指数が上昇するだろうと想定する根拠は、設定条件でESG投資が活発化する可能性を見ています。
このため、チャートの波形は、(3)の波によって強い上昇相場が訪れるだろうと予測しています。
ただ、これが本物になるかどうかは、アメリカの大統領選挙に左右されるため、2024年の大統領選挙で共和党が勝利すると、世界的なSDGsの枠組みが弱まる可能性があり、この点が大きくマネーの流れを揺さぶるだろうと考えておく必要があるでしょう。
また、長期的な視点では、米中関係がどうなるかも見ていく必要がありますが、現状、バイデン政権では、方針として中国との経済関係は比較的良好な姿勢を表明しているため、政治面において中国の人権問題に強硬に出る可能性を除けば、マネーの流れを活性化させるグローバリズムが拡大する可能性が高いと見ています。
これについては、SDGs同様、良し悪し、賛否両論あるかと思いますが、マーケットを眺める上ではこのような可能性を見ています。
それでは、中期的にはどうかについて見ていきましょう。
○日経平均株価指数(月足)
中期投資は5年スパンで捉えています。
厳密にいうと、日経平均株価指数の下値サイクルが3年3ヶ月になっているため、おおよそ5年以内の動きがどうなるかという視点は持つようにしましょう。
この期間で重要なのは、アメリカの中長期の金利がどうなるかです。
実質GDPの成長率や物価は上がる、失業率は下がる、そして原油価格はまだある程度上がるだろうと仮定すると、必然的に中長期の金利は上がるだろうと考えておく必要があります。
ただし、金利が上昇すると、完全に回復していない実体経済に悪影響を及ぼすため、つまり、企業コストの上昇ですが、これを受けてハイテク株の多いNASDAQ市場は崩れるに至っています。
現段階では、おそらく値を戻すことが考えられますが、ハイテク株から金利の上昇を好感する銀行株、景気回復の恩恵をより受けやすい旅行株・運輸株・食品株など、これまで出遅れていた株への物色が広がり、今後は、実体経済を鮮明に映し出す企業の株式が買われやすくなる展開が予測されます。
こうなると、今度は、金利の上昇が実体経済により強く影響を及ぼすことが予測されるため、次の段階の長期金利の水準、例えば、米10年物国債利回りが2.0%近傍に向かって行くにつれ、株式市場は警戒感を高めていくことになるでしょう。
この揺れを何度か経験した後に天井を迎えることになるかもしれません。
チャートでは、一応、現在のマーケットは32,000円水準を視野に入れていると見ていますが、30,000円を突破すると、この水準が次のターニングポイントになる可能性が高いだろうと考えています。
この水準から大きく値を崩す可能性を追っているのがこのシナリオですが、仮にその場合、おそらく大規模調整局面が到来し、中期的にはまず、26,000円を下回る水準がとりあえずの目処になるでしょう。
この水準は、リーマンショック後の底値から数えたフィボナッチ数の0.236に当たります。
そして、その後はいったん値を戻すと思われますが、一定の水準まで値が戻ると、再び下落していくでしょう。
この段階での下値水準は、フィボナッチ数の0.382、日経平均株価指数では22,500円を割ることも視野に入ってきます。
ただ、この動きがコロナショック後の実体経済の回復がまだ伴っていない株式市場にとって、早いか遅いかには、依然として疑問が残ります。
このため、一応、32,000円水準を突破する目も見ておく必要があります。
この場合、最終的には40,000円近傍を目指す可能性がありますが、このシナリオはこのシナリオで、現段階では可能性は明確にはなっていません。
なぜならば、上昇のピッチが速すぎるからです。
このピッチの実現可能性を追うならば、おそらく、FRBがツイストオペを実施し、10年物国債の利回りが急低下、ETFの買入れ規模を拡大したり、バイデン政権が、週明けに具体的な合意がなされるであろう1.9兆ドルの追加経済対策の他に、さらに追加で経済対策が出るといった動きが必要になってきます。
このようなことから、現段階では32,000円近傍を上値の目処とし、これを長期上昇波動の頂点、つまり、天井とし、中期スパンを眺め、先ほどのような大規模調整局面がいずれ訪れるだろうとしています。
○日経平均株価指数(月足)
短期的(1年以内)には、おそらく年内で、先ほどの32,000円近傍で天井をつけ、長期上昇波動が終了するというのがこのシナリオです。
この場合、米10年物国債利回りが2.0%を突破することが考えられますが、にもかかわらず、FRBが金融緩和政策に対して強い修正や変更を加えない、さらなる追加の経済対策も行わないなどが条件になってきます。
このようなFRBの現状維持姿勢をマーケットが悪く受け止める、つまり、実体経済や企業業績の悪化と受け止めると、株価は総崩れになる可能性が高くなりますが、逆に、その金利水準ならまだ低く、実体経済や企業業績にはむしろ良好と受け取めるなら、株価は32,000円水準を突破していくでしょう。
このため、FRBとマーケットとの対話がどうなるか、特に金利を巡る攻防はしばらく続きますが、この点が非常に重要なポイントになります。
ということで、長期・中期・短期と逆順で眺めてきましたが、どの投資スパンでどの銘柄をどのような配分で仕込むかという話をします。
どちらかというと、投資初心者向けに設定しますので、中級者、上級者の方には物足りなかったり、本当にそれでいいのかなと疑問に思うかもしれません。
中級者・上級者の方は持論もあると思いますので、あくまでも初級者向けの話としてお付き合いください。
長期投資)10年超
資産配分)60%
投資対象)債券・金を中心に
この狙いは、債券については、主に国債になりますが、米10年物国債といった期間の長いものから得られる利息です。
例えば、米10年物国債の利回りが今のところ1.5%程度ですが、それが上昇していくとすると、年利1.5%程度で金利が付いてきます。
また、金への投資については、景気が回復し成長していく段階では価格が下落していく可能性は高いですが、投資期間が10年超ですので、株価の下落局面においてのヘッジと考えていきます。
このようなことから、確定拠出年金やつみたてNISAをされているような初心者の方にとっては、海外の債券型投信やゴールド型投信に60%程度資産を割いていくようにしましょう。
中期投資)5年未満
資産配分)30%
投資対象)債券・金を中心に
中期投資においては難しいですが、初心者向けという点で考えると、株式相場が天井をつけると仮定するならば、長期投資同様、10年物国債の利回りから得られる利息狙いで国債を購入しておくか、債券型の投信を選択しておくことは必要でしょう。
金についても長期投資と同様、ヘッジ目的です。
そして、残りの10%分で短期積極投資となります。
短期投資)1年以下
資産配分)10%
投資対象)株式
短期投資(1年以下)においては、株式市場は依然として活況を呈する可能性があるため、ここは今まで通り株式は持ち続けます。
ただ、期間は短めであることは留意しておきましょう。
なぜならば、先ほどお伝えしたとおり、日経平均株価指数の短期的な上昇目処が32,000円近傍であるため、ここで大きく崩れ去ると、次は大規模調整局面が訪れる可能性があるからです。
確定拠出年金を行っている方の場合、その手前でスウィッチングするか、銘柄を入れ替えておいた方が良いですが、その場合、債券・金シフトです。
この時、金融ショック気味になるかもしれないと判断するなら、現金、つまり、キャッシュに一時避難していきたいところですが、確定拠出年金ではそれが不可能なので、ドルコスト平均法で下値を拾うことを願うといった行動の縛りは覚悟する必要があります。
また、つみたてNISAを活用している方の場合、そもそも年間の非課税投資枠が決まってしまっているため、事実上、スウィッチングや銘柄の入替えが難しいと思います。
このため、日経平均株価指数が23,000円近傍で天井をつけると仮定するならば、前もって積立投資契約の解約は検討しておく必要が出てくるでしょう。
その後、大規模調整局面が落ち着いたら再開すればいい話です。
あくまでも、これは短期的な話で、中長期の運用スタンスではありませんので、混同しないようにしてください。
理想をいうならば、初心者の場合、短期投資は特定口座か、NISA口座で、中期投資も特定口座か、NISA口座で、そして長期投資で確定拠出年金制度やつみたてNISA口座の利用といった配分です。
別の表現をすると、短期投資や中期投資では回転売買ができる仕組みのもとで投資を行い、長期投資では積立投資という仕組みで投資を行っていくのが良いと思います。
中級者や上級者になると、例えば、信用取引や先物・オプションなど、様々な手段を用いる手があり、逆張り投資ができるようになります。
ただ、初心者にはハードルが高いので、簡単な方法としてはこのようなアイデアが良いのではと考えています。
今のような局面では、中級者や上級者の方にとっては、中期・長期で株式比率を高めておく方法もありなんですが、初心者にとっては、いざという時の投資判断が下せない可能性があるため、このような分け方にしてあります。
今回、こんなふうにいろいろと書き綴ってきましたが、確定拠出年金やつみたてNISAをされている方のほとんどが、実務経験上、長期投資一点張りになっています。
これでは時間の分散をしておらず、またそれに合わせた資産の配分も講じられていないため、おのずと投資銘柄の分散が意味のないものになってきます。
このような方の場合、前述した投資戦略を練っている方と比べると、リスク、つまり、不確実性への対応力がどうしても弱まってしまうため、長期投資が本来発揮できる力を削いでしまう可能性が高まります。
だから、口を酸っぱくしてこのブログでは、長期投資一点張りは止めましょうという話をしています。
これを難しく感じるから、多くの方が長期投資一点張りなんだと思いますが、これをクリアできないと、結果的に、もし相場が大きく崩れた場合、長期投資とは何だったのかということになってしまいます。
おそらく、結果的には20年後、株式市場はさらなる長期上昇波動を描いて上昇していく可能性が高いため、やってて良かったぁと思う人が続出するとは思いますが、この場合、ドルコスト平均法や積立投資が神話化されていくでしょう。
で、信じてやまない人が多く現れ、いずれ大暴落した後にハッと我に返り、国や金融機関に対して批判の矛先が移っていくような気がします。
資産運用は自己責任なんです。
自己責任は、資産運用の世界では、自分自身で情報を探り、分析し、判断し、決断することなんです。
国の言うことを妄信し、金融機関の言うことを鵜呑みにし、自分でそれらのことに疑問を持たなければ、結果が良くても自己責任を果たしたということにはならないんです。
儲かればいいじゃんと思う人もいるかもしれませんが、資産運用は、損した時にどう振舞えるかを問うゲームです。
儲かるのは誰しも喜ばしいことでしょう。
でも、損した時になぜ損したのかを考えられる力、失敗した理由を自分自身に問える力こそが、インテリジェンスを育む肥やしになるんです。
資産運用は人生の歩みと似ています。
今を生きながら、もう少し先を読み、もっと遠い先の将来もおぼろげに念頭に置きながら、人は人生を歩んでいきます。
その過程で人は知識を習得し、考える力を養い、決断を下す。
だから資産運用は面白いんですが、ここに照準を置いて資産運用を考えてみると、今まで以上に自分にとって資産運用がどういう意味なのかがわかってくると思います。