FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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株式投資のシナリオの組み立て方と日経平均株価指数の今後の展開予測。

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 さて、今回は、久々にチャート分析をしてみたいと思います。

 ブログ中断中も、相変わらずマーケットの観察は怠ってはいないというか、投資自体は継続していたので、その延長線上のお話です。

 今年に入って株式市場の局面が大きく転換してきてはいますが、シナリオって作ってます?

 自分の投資方法は、シナリオを描いて戦術を組み立てるという方法なので、まずはこの話から始めようと思います。

 投資初心者の場合は、投資に至るまでの流れという意味でイメージしてみてくださいね。

 

 次の図は、「株式投資の変動要因」をまとめたものです。実際に、今行っている資産運用の個別指導でも活用し、また、先日、ジャパンネット証券にされたインタビュー記事でも取り上げられました。

 

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※筆者作成

 

 株式投資の変動要因は、図のように外側の円から内側の円に向かって考えていくとイメージしやすくなります。

 一番外側にある変動要因は「国際情勢」です。国際情勢がどのようになっているかの大まかな部分を捉え、お金の流れがどこに向かうかを想像するために使います。

 例えば、米ソ冷戦が終わり、アメリカによる一極主義も終焉を迎え、その後、新興国・地域が勃興する時代に突入し、世界はどちらかというと混沌としてきたという大まかな環境設定です。

 次に来るのが「世界経済」や「自国経済」、私たち日本人であれば「日本経済」になりますが、マクロ経済がどのような状況にあるかを想像しておきます。

 この段階で注目すべきは経済政策(金融政策・財政政策)ですが、ちょうど今のような局面では、アメリカが金融緩和政策から金融引き締め政策に政策転換を図ろうとしているという環境設定を行っていきます。

 そして、「業界動向」ですが、これは世界経済・自国経済の影響を受けます。経済政策がどうなるかによって業界の動きがどうかわるかという環境設定を行っていきます。

 例えば、これからアメリカの政策金利が引き上げられてくるとすると、金融セクターが伸びるだろうと推測することができるかもしれません。

 ここまでが株式投資を行う上での間接的な変動要因ですが、これらはどちらかというとマクロ的な視点といえるかもしれません。

 間接的な変動要因について想定し終わった後は、いよいよ直接的な変動要因であるミクロ面を探っていくことになります。

 それが「企業業績」と「売買(需給)」です。

 企業業績は決算の内容です。平たくいうと企業分析を行い、どの企業の株式を買うか、もしくは、売るかをリストアップしていきます。

 そして、実際の売買の場面では、チャート分析などを行いながらタイミングを計っていきます。

 このような一連の流れの中で株式投資は完結していきます。

 

 難しいし、面倒くさいですよね。

 これが本来の株式投資で、こういうことを考えずに簡単に済ませていこうとすること自体、大きな間違いを生みます。

 現代社会では、物事を簡単に捉え、あまり深く考えようとしない、むしろ、深く考えることがナンセンスであるというような風潮がありますが、そういうことをしていると、どんどん馬鹿になっていくだけなので、それなら、資産運用はそもそもやらない方が良いと思います。

 

 ここまでのお話は株式投資の変動要因を順序だてて追いながら、株式投資の流れをつかんでいくというものでしたが、ここからはシナリオの組み立て方の事例をお見せします。

 今のような局面で、実際に私が行っているシナリオ作成になりますが、見やすいようにまとめますね。

①国際情勢

 アメリカの力が過去に比べ相対的に低下してきており、結果として、中国共産党政権の復古主義やロシアの資源外交などを通じたプレゼンスが高まってきている。

 つまり、21世紀における大国の興亡がすでに始まっており、今後、世界は混沌とし、秩序を維持しようとする勢力と新しい秩序を構築しようとする勢力の狭間でマネーが動いていく可能性が高くなるだろう。

 そんな中、2020年、新型コロナ感染症が広まり、広く世界の日常が変化し、これも含め、今後の大国の興亡を注視していく必要があるだろう。

 

②世界経済・自国経済

 現状に関しては、コロナショックから抜け出すことを目的に敷かれていた世界的な金融緩和政策が転換期を迎える局面にいよいよ達してきた。

 例えば、アメリカのFRBの場合、すでにテーパリングが実施され、今年の3月以降、政策金利であるFFレートの引き上げが予定されている。この背景にあるのはサプライチェーンの逼迫による急激な物価上昇や人手不足による賃金上昇であるが、これらを是正するためにFRBの資産縮小も含め、金利上昇がどこまで進むかを十分注視しながら運用を行っていく必要がある。

 また、昨今のウクライナ情勢において、緊迫度がより高まっており、仮に紛争になった場合、株式市場にとってマイナスの影響を与える可能性があるため、ロシアが動くことを想定したシナリオも描いておく必要がある。

 

③業界動向

 セクター(業種)別にマーケットを眺めると、超長期的には国際情勢のリスクに対応するために金などの鉱業セクターは押さえておく必要がある。

 また、金利の引き上げ局面が訪れることを想定し、金利の上昇によって恩恵を受けやすい金融セクターに資金をシフトしておくことも一計ではないか。

 

④企業業績

 金利上昇局面では、企業の成長率や配当利回りが相対的に剝げ落ちていく可能性が高まるため、絶対必要条件としては、企業業績の良い優良企業株を物色することを心掛け、特に、これまでのコロナ相場でPERが割高になっているグロース株(成長株)は避け、景気循環株などの伝統的な大型株に資金を非難させておく必要があるだろう。

 また、株価の下落を想定するならば、順張りで株式やETFを買うのではなく、むしろ、信用取引やインバース、ベアファンドなども含め、リスクヘッジできる銘柄を物色しておいた方が良いと考えられる。

 さらに、国際情勢の変化から見たゴールド買い、エネルギーセクター買いなども併せて検討し、ポートフォリオ全体の組み換えが必要な時期に来ているかもしれない。

 

⑤売買(需給)

 このような環境設定の下、実際の売買においては、テクニカル分析を行い、3ヶ月以内という比較的短い投資期間を想定した銘柄選びをしつつ、また、1年未満の長期ポートフォリオの構築も併せて行っていった方が良いように思われる。

といったシナリオです。

 難しいですよね。難しいのは仕様がないです。慣れましょう。

 シナリオの要点としては、相場の大局としては利上げ局面になってくるので、それに見合ったポートフォリオのリバランスを行う点を軸に、差し迫っているウクライナ情勢に際し、どう対処するかという点です。

 こんなふうに深く掘り下げて、一定の深さまで潜り切ったら、一気に水面に出てくるような思考法がシナリオ作成には求められます。

 ①~⑤までの一連の流れは難しいように思えたかもしれませんが、まとめた要点ではいたってシンプルな見方になってますよね。

 これがシンプルに物事を考えるという本当の意味です。

 私が、常々、簡単に考えてもシンプルな思考はできないと言っているのはこういうことなんです。

 だから、物事を簡単にしか考えようとしないのは馬鹿になるために時間を費やしているだけにすぎないため、やめましょうといっているわけです。

 

 ちなみに、私はすでにポートフォリオを組み換えています。

 ベアマーケットを想定しているため、従来から行っているベアファンドとインバース系の ETFの追加購入、エネルギー関連のETFを新規購入し、今はゴールドのETFを買うかどうか検討中です。

 株式市場は下げ止まりの空気が感じられないので、様子を見ながら、これらの銘柄を売って、再度、リバランスするかどうかはもう少し後にしようと考えています。

 

 さて、大分長くなりましたが、チャート分析です。

 TraidingView提供のチャートです。

 

日経平均株価指数(週足)

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 テクニカル分析としては、中期で眺めて短期を探るというスタンスに切り替えているので、まずは週足チャートで模様を眺めていきます。

 エリオット波動理論の波形取りとしては、リーマンショック後の長期上昇局面の位置づけによってシナリオを変えていきます。

①長期上昇局面が終わったシナリオ

 このシナリオでは、波形取りとして、2021年9月高値を衝撃Ⅴ波の終点とし、それ以降、現在進行中の株価を修正波として調整局面に入っているとカウントしています。

 フィボナッチ・リトレースメントは、コロナショック後の底値からカウントしていますが、天井からの戻り0.382の水準が25287.37、半値(0.5)水準が23587.82となっているため、遅かれ速かれ、ここら辺までの下値模索の動きは想定しておく必要があるでしょう。

 MACDを見ると、依然としてMACDMACDシグナルを下回り、また下を向いているため、中期的には下降トレンドであろうという見立てです。

 リーマンショック後の長期上昇局面が終わったというのがこのシナリオの特徴ですが、このシナリオがはっきりと成立するには、日経平均株価指数が半値戻しの水準である23587.82近辺に降りてくる必要があるためしばらく時間を要します。

 ただ、一気に降りてこないため、当面のサポートラインは、まず26,000円水準、次の下押しラインは25,000円と、段階を踏みながら下げいくと思われます。

 24,000円辺りで底を着くというのがこのシナリオではしっくりしますが、そう考えると、一応、半値戻しを妥当な底値と捉えておくようにしましょう。

 

②コロナショック後の上昇局面はまだ終わっていないシナリオ

 このシナリオでは、2021年9月の高値をコロナショック後の衝撃Ⅲ波と捉え、現在進行中の修正波を衝撃Ⅳ波とする考え方です。

 ということは、衝撃Ⅳ波が終わると、最終上昇波動である衝撃Ⅴ波が訪れるため、今回の調整では、先ほどのシナリオよりも浅い水準で下値を着けるだろうと考えることができます。

 その水準は、フィボナッチ・リトレースメントでは、先ほどと同じく、25287.37近辺が可能性の高い値として挙げられますが、その間、26,000円付近の攻防が予想されるため、26,000円近辺と25,000円近辺での買戻しを想定しておく必要があります。

 いずれにせよ、その後は戻り相場となり、最終上昇局面としての衝撃Ⅴ波として、再度、30,000円を目指す相場展開を想定しておく必要があるでしょう。

 このシナリオの特徴は、どちらかというと、通常の相場セオリーで、つまり、金融相場から業績相場に転換し、業績相場が終わると急落していくというシナリオになるため、先ほどのシナリオと比べると、後々の下落の衝撃は大きくなることが考えられます。

 ここが注意点ですね。

 

③シナリオ①と②の間のシナリオ

 このシナリオは、2021年9月の高値で衝撃Ⅴ波が終了し、A・B・Cの修正波が完了したとしても、その後の戻りが2021年9月の高値を抜けず、再び下落するという考え方です。

 個人的には、これかなと思っていますが、その場合、現在進行中の調整は、たとえ行ったとしても25,000円近辺で下値を着けるような気がしています。もちろん、その間、26,000円水準の攻防はありますが。

 その後、値を戻し、日経平均株価指数が30,000円に満たずに途中で腰折れし、再び、強めの下降局面に転じていくという流れです。

 このため、エリオット波動理論でいうと、今起こっている調整が修正A波、次に来る戻りが修正B波、そして、最後の調整として下落の深い修正C波が待っているだろうということになります。

 この場合、最終的な下値の目処、つまり、底値としては、フィボナッチ・リトレースメントの値としては0.618水準である21888.25も視野に入れておく必要が出てきます。

 こう考えると、本当にそうなるかなぁという疑念が頭をもたげてくるため、現実的には、シナリオ①をメインにしながら様子を伺っていくのが妥当であろうという結論に至ります。

という感じですかね。

 

 それでは、もう少し視覚的にチャートを見ていきましょう。

 TradeingView提供のチャートです。

 

日経平均株価指数(日足)

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 日足チャートに切り替えました。先ほどの週足チャートはリーマンショック後からの流れを見るための長さでしたが、このチャート面ではコロナショック後の流れを見ていきます。

 週足チャートでは、基本的に中期投資という位置づけでシナリオを描きましたが、シナリオ①をメインにして投資を考えていくというスタンスです。

 これを前提に置きつつ、日足レベルでは現状の立ち位置から短期的にどこまで値を下げていくかを探ります。

 ひとつ目のポイントは、SMA(単純移動平均線)が右下を向いている点です。

 特に注意すべきは、50SMAが100、200、300SMAとの間でデッドクロスし、下回っている点です。

 この意味するところは、日経平均株価指数は、絶賛、短期下降トレンド中ということですが、仮にここから上げたとしても、目先、28,000円水準がせいぜいで、次の28,500円水準に及ぶほどの力はないだろうと考えることができます。

 むしろ、下げ基調にあるため、下値をどのように切り下げていくかを注視し、先ほどの週足チャートで示したサポートラインの値を目指しながら徐々に切り下げていくイメージを持っておく必要はあるでしょう。

 どこで下げ止まるかなんていうのは誰にもわからないので、仮に、難平(ナンピン)買いをするなら、26,000円水準が1回目、25,000円水準が2回目といった具合におおよその価格水準で買い戻しを仕掛けてみるのも良いかもしれません。

 個人的には、下げたなぁというコンセンサスが得られる水準は25,000円ラインだろうと考えているので、ここら辺に近づいてきたら、今のポートフォリオをいったんリバランスしようかなぁと考えています。

 とはいえ、アメリカの利上げは、特に来年以降ですが2.5%を超えてくるような気もするため、日経平均株価指数は、再度、上昇局面に転じたとしても、30,000円の攻防で負けるような気がします。

 このため、仮に値を戻す場合は、28,000円を当面のレジスタンスラインとして意識しておこうと考えています。

 

 ここまでをまとめると、短期的には、日経平均株価指数は26,000円が当面の下値攻防ラインとして意識されるため、素直に流れに身を任せた方が良いように思います。

 この水準を下抜けすると、25,000円、24,000円が視野に入ってくるため、間違っても26,000円で一気に買戻しだ!なんて思わない方が良いかもしれません。

 戻り相場は、あくまでも徐々に徐々にゆっくりと状況を見極めながら行うものです。

 相場の空気を感じながら、アメリカさんがどう出るかを見つつ、投資判断を下すようにしましょう。

 ウクライナ情勢がありますからね。

 

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