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2021年、バイデン政権でマーケットはどうなる?

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 株式市場は新年早々、ひとつの山を越えたようです。

 アメリカの連邦議会において、上院で民主党が多数派を奪還、これで上院・下院ともに民主党過半数を獲得し、いわば「ブルーウェーブ」の状況になりました。

 面白いですよね、ブルーウェーブって言葉。

 そういえば、アメリカの国旗って赤と青で色付けされてますけど、赤が共和党、青が民主党、これで1月20日から完全な青の政権としてバイデン新政権が始動することになります。

 去年の大統領選ラリーでは思惑が交錯してましたよね。

 トランプさんが勝つか、バイデンさんが勝つかで、マーケットの争点がいくつかありました。

 そのポイントのひとつが上院の行方でしたが、当時は上院は共和党、下院は民主党ということで、いわゆるねじれ国会でした。

 トランプさんが大統領選挙に勝利して、上院を共和党が維持するなら、コロナ禍にあって現政権踏襲ということでマーケットには安心感が広がるだろうという予測がされていました。

 一方、バイデンさんが勝って、上院は共和党のままの場合、民主党政権でありながらもねじれ状態は解消されないため、バイデンさんの政権運営は難しいだろうということで、マーケットとしては「あんま変わんないよね」ということで様子見の雰囲気もありました。

 バイデンさんの政策の特徴は「大規模な財政出動」と「富裕層に対する増税」です。

 バイデン勝利&上院共和党継続シナリオでは、政権運営が難しくなるだろうということだったので、マーケットとしては大規模な財政出動をすることはなかなかできず、また富裕層増税も難しくなるため、結局、トランプ政権の踏襲じゃんということで期待外れ感を持ちながら様子見ムードが広がっていました。

 ところが、昨晩の結果、つまり、上院も民主党過半数を獲得したという方を受けて、一気に見方が変わりました。

 上院・下院とも過半数を獲得するというブルーウェーブがマーケットにもたらしたのは、

実体経済の回復

です。

 これは「大規模な財政出動」に着目した見方ですが、どうやら「富裕層への増税」による投資資金の減退については目をつぶったようです。

 個人的には、この受け止めを、

富裕層に増税するというマイナスの影響より、財政出動を大幅に吹かすことによる景気浮揚効果の方が大きいと捉えられた

と見ています。

 それと、政策の優先順位としては富裕層増税をどのタイミングで実施するかという点が不明確なため、必然的にコロナ対策としての財政出動が注目を浴びたということなんでしょう。

 

 そんなこんなで、昨晩、NYダウは前日比437.86ドル高の30829.40ドルを付け、コロナショック後の最高値を更新しました。

 見方としては、今回の民主党の上院奪取を受けて、マーケットは、

超大規模な金融緩和政策のもと、財政出動も大規模になる

ということで、アメリカの経済政策を高く評価し始めました。

 まず、この点が今後のマーケットのベースになります。

 この点を別の言葉で表すと、

ドルマネーの供給量が多すぎる

と表現できるかもしれません。

 これ、少し難しいんですけど、見方は分かれます。

①十分過ぎる量のドルマネーの供給をしてくれた!

実体経済の回復状況を見れば、多すぎるのではないか!

 ①の受け止め方が今のマーケットでは多数といえます。

 一方、②に対する懸念もあり、資産バブルを指摘する原因のひとつがこれです。

 どの道、これらの対立は、いずれチャートに表れてくるので、記憶に留めておく程度にしておきましょう。

 それにしても、真っ当ですよね、アメリカのやり方は。

 不景気から這い上がるのに、ちゃんと金融緩和に財政出動を当ててくる。

 日本が出遅れてるのは、いわずもがな財政出動の規模が足りておらず、また、消費税の増税社会保障制度に対する老後不安もあり、これらが、つまるところ、需要不足を生み出してしまっているので、実体経済の回復は正直、あまり見込めないと考えています。

 国はお金を使わず、むしろ増税をして、庶民はお金を貯めようとする。

 経済、回るわけないじゃんってことですよね。

 

 少し話が脱線したので、戻します。

 アメリカで確定した「大規模金融緩和」と「大規模財政出動」の流れが何をもたらすのかですが、景気の回復期待というお話をしました。

 ドルマネーの量が圧倒的に増えるわけですから、為替はこんなふうになります。

○ドルインデックス

 ドルインデックス(ドル指数)は、他国の通貨に対するドルの動きと考えてください。

 上に行くとドル高、下に行くとドル安なので、単純にドルが高いか、安いかで見るとわかりやすいと思います。

 ドルマネーの量が他の通貨と比べ相対的に多くなっているため、ドルの価値が下がり、ドル安の流れが続いています。

 チャートを見る限り、まだしばらくドル安局面は続くと思います。

 これは、繰り返しになりますが、ドルの供給量が多いからですよね。

 でも、短期的にはドル高転換の兆しが見える波形にはなっています。

 つまり、もう少しの間、ドル安トレンドは続くが、その後はドル高トレンドに変わるだろうということです。

 それでは、ドル安からドル高に転換する理由はなんでしょう。

実体経済が回復するから

 セオリー通りに運ぶとするならば、実体経済底堅い回復を背景にしたドル買い、つまり、アメリカに対する安心感がドル高を引き起こすということです。

 だって、実体経済が回復していくってことは、アメリカ国内の資金需要が回復するってことで、つまり、企業活動が活発になり、消費も活発になるので、物価も、金利も上がっていきます。

 ここでは金利の上昇が注目されるわけですが、チャートを見ると、見事にそれが表れています。

アメリカ10年物国債利回り

 少し雑ですが、金利は10年物国債の利回りを見ると覚えておいてください。

 これは日本でも同じです。

 アメリカの10年物国債の利回りは、コロナショック後、一時的に0.5%程度まで落ち込みました。

 それが経済政策の功もあり、コロナワクチンへの期待もあり、実体経済が回復するだろうということで少しずつ上昇してきています。

 それがようやく節目である1%に達し、ここからさらに上昇するかどうかということが注目されています。

 コロナ前は、アメリカ10年物国債の利回りは3.0%を上回っていました。

 その前は、米中の対立激化で景気の下振れ懸念から1.3%ぐらいまで下がっていましたが、その後、3.0%を超えるところまで行っていました。

 この水準よりも前に金融緩和の出口戦略が語られるようになっていたので、おそらく、2.0%を超えてから、物価や雇用の状況も踏まえ、「金融緩和、どうする? まだ続ける? それとも、少しずつ終わらせるようにする?」といった議論が出てくるでしょう。

 今のところ、「テーパリング」といって、金融緩和の出口戦略は「国債の買い入れを段階的に縮小させよう」という通常通りの作戦でいくのが主流になるというのが大方の見方です。

 金融緩和政策の下では、中央銀行であるFRB国債を買い入れることで市中に資金を供給し続けます。

 だんだんと景気が良くなってくると、国債の買入量を少しずつ減らし、市中に流し込むお金の量を減らしていきます。

 で、物価や雇用の状況を安定させながら、金融緩和政策により調整していくわけですが、それでも景気が良くなっていくと、今度は過熱感ありと判定するため、そこで金融緩和は終わりにし、金融引締めを行ったり、増税によって市中に流れるマネーの総量を減らしにかかります。

 なので、金利がこれから上昇するだろうという見方が広がり、先ほどのドルインデックスにおいては、いずれドル高転換が訪れるだろうと推察することができます。

 

 これまでの話をいったんまとめますね。

①超大規模金融緩和と大規模な財政出動による景気回復期待の高まり

②序盤はドル安局面がまだ続くが、実体経済の回復に伴いドル高転換

金利は以前として低い水準だが、景気が回復するにつれて2.0%、3.0%を目指していく

 昨晩のブルーウェーブから、この3つが連想されるわけです。

 だから、株が上昇してるんですね。

 こういった相場の環境要因を背景に株式が買われるのを、

リフレトレード

といいます。

 リフレっていうのはリフレーションです。

 簡単にいうと、デフレーション(デフレ)は物価が継続して下がること、インフレーション(インフレ)は物価が継続して上がること、その間にあるのがリフレです。

 デフレからは脱却してるけど、インフレまでは行っていない状態です。

 要は、景気は極端に悪くなく、また極端に良くもなくといった、安定した状況をいいます。

 マーケットを取り巻く環境が安定しているので、プレイヤーたちは安心して強気のトレードを行うことができる。

 これがリフレトレードです。

 

 ただ、波乱要因はあるんです。

 金利が上がっていく可能性が高いですよね。

 特にこれまで上昇してきた高収益銘柄、例えばハイテク株なんかにとっては、金利の上昇に伴うコスト増の影響が顕著に表れるため、ナスダックのけん引力は弱まります。

○ナスダック

 昨晩、ナスダックが下げたのは、これが要因でが、ブルーウェーブの成立により、富裕層に対する増税とハイテク企業に対する規制強化も想定され、いったん調整が入っている様子です。

 といったところで、一定の水準まで下げたら買い戻されるでしょうね。

 なんせ、お金が余りまくっているので。

 割安になってから再び買われ、その後はもう少し上がっていくのではないでしょうか。

 でも、ナスダックはアメリカの株式市場をけん引してきたという事実があります。

 金利上昇、富裕層増税、ハイテク規制の3つは、今後も要警戒ポイントですので、株式市場の転換はここから始まるかもしれません。

 注視はしておきましょう。

 

 じゃあ、NYダウってどうなん?って話ですが、昨年来のポジティブシナリオは継続しておきます。

○NYダウ

 今のところ、31,500ドルの水準を目指しているように伺えます。

 たぶん、そのうち、ここも抜けてくると思いますが、なんか異常ですよね。

○NYダウ(1928年10月1日~)

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 これは1928年10月からのものですが、歴史的な時間軸で見てみると、完全に節目に到達しています。

 単純に、

上値抵抗線(赤色の太線)を抜けるの?

ってみんな思うと思いますが、バイデン政権の下でこのトレンドラインを抜けるかどうかが非常に注目されます。

 テクニカル派にとっては、悩みに悩んで結論が出ないのはこれなんですよね。

 相場の環境要因は一応整ってはいます。

 でも、テクニカル的には、いつ売り浴びせられてもおかしくない水準です。

 このラインを抜けたら、それこそマーケット史上、歴史に残る大相場といえるのではないでしょうか。

 

 また、ここで少しまとめておきます。

①超大規模金融緩和と大規模な財政出動

②為替はドル安からドル高へ

金利は上昇

④ナスダックなどのハイテク株はバイデン政権でいずれ転換

 こう見ていくと、コロナはすでに過去の産物。

 実体経済の回復がさらに織り込まれる中で、ハイテク株が切り崩される。

 この間、ある程度の時間はかかると思いますが、金融政策の転換が起こり、市中からマネーが少しずつ消えていく・・・。

 その結果、株式市場に大規模調整が起こるって感じなんですかね。

 こんなふうに考えていくと、バイデン政権ってやっぱり爆弾抱えてるよなぁと思ってしまいます。

 上院を共和党が維持する方が長期的に見てマーケットはまだ安定していたってことなんでしょう。

 

 ついでに上海市場も見ておきましょう。

○上海コンポジット

 上海コンポジットは、揉み合いの末、上放れています。

 これも上院で民主党過半数を占めたことからですが、中国にもマネーが流れ込んでいる様子が伺えます。

 結局、こういうことなんですね。

 いずれ、安全保障面を含めて考えると、中国からのマネーの逆流が起こり、これに関しても波乱要因として注目はされるんでしょう。

 中国に対する人権問題に対してバイデン政権がどう出るか。

 個人的には、米中の狭間で日本政府がどのように外交・防衛を打つかが気になりますが、東アジアにおける安全保障リスクは高まるだろうと想定しています。

 中国株が上昇しているのは、中国環境政策とバイデン政権のグリーンニューディールが関係しているからでしょう。

 SDGs投資でドルマネーとの結びつきが深まりる中国。

 そこに日本も乗っていくことになるので、ここに大国の興亡としての大いなる矛盾が存在するように映ります。

 ちなみに、SDGs、持続可能な開発目標における投資は、企業にとってはコスト増を意味します。

 なので、かなり余裕がある企業でなければ、結果的に企業経営の足を引っ張るわけですが、足を引っ張らずに企業収益に転換できる企業のみが、今後、生き残っていくわけです。

 この波に日本が乗ろうとしているわけですから、おそらく日本の場合、本末転倒の結果に終わるでしょう。

 原発どうする?、社会保障どうする?、デフレからの脱却どうする?

 根本的に解決しなければならない問題を脇においてSDGsに乗ろうとする日本。

 この1点で、我が国の場合、所得格差が異様に広がる未来が待っています。

 資産運用していかなければ、将来、老後の生活が危うくなるという考え方に、おそらく多くの日本人は馴染めないと思います。

 個人的にも、家計をリスク(不確実性)に晒しながら、子育てや老後の生活設計を組み立てるのがいかがなものかと考えています。

 こういう意味で、資産運用をしなければ将来詰むというこの国の現状を憂うるばかりですが、コロナ禍における感染症対策や経済支援も同じような構図で、そこには人が生きるというドラマに対する想像力が為政者には薄いような気がします。

 

 話が脱線したので元に戻しますが、最後に日経平均株価指数について見ておきましょう。

日経平均株価指数(1965年1月5日~)

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 たまにこのチャートを用いていますが、日経平均株価指数もいよいよ節目に差し掛かっているようです。

 ピンク色の点線が上値抵抗線として立ちはだかっています。

日経平均株価指数(1965年1月5日~)

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 まさに根拠なき熱狂ですが、足元の経済はガタガタなのに、将来への過度な期待から日本の株式が買われています。

 あいからわず、日経平均株価指数もポジティブシナリオは継続中です。

 節目に差し掛かっているので、転換を迎えるかどうかが注目されますが、アメリカにおいて「大規模金融緩和・大規模財政出動」、「ドル安」、「金利上昇」の流れを汲んでいるので上昇しています。

 ただ、本当にこのまま上がり続けるのかは疑問です。

 なぜならば、テクニカル的には転換点に来ているからです。

 相場環境は強気なんですが、テクニカル的には要警戒。

 実をいうと、アメリカ市場も、日本市場も、これは似たような傾向ではあります。

 ということは、転換のタイミングがいつなのかです。

 それは結局、アメリカ次第。

 バイデン政権が本格始動し、その後、どうなるか。

 コロナ第3波はもう問題ではなく、むしろ、ワクチンの有効性がどうなのかによるといったところでしょう。

日経平均株価指数

 今日は、午後2時現在、昨晩のNYダウの上昇を受けて、日経平均株価指数も上がっています。

 前場で500円ぐらい上がってましたが、東京のコロナ感染者数が2,000人を超えるだろうという報道を受け、値を戻しているようです。

 こういうの聞くと、資産価格を上げるためにお金使うんじゃなくて、コロナで大変なことになっている実体経済にお金を使えよって思いますが、もう、やっぱこの国は期待が持てないなって気になります。

 

 最近、思うんですよね。

私たちは何のために選挙に行くんだろうって

 結果だけを見ると、おそらく、選挙の意味は、

感受性が劣化した政治家を選びに行く行為

って気がしてなりません。

 がんばっている政治家はいるんでしょうけど、こんなに国民の声とかけ離れている政権もないような気がします。

 コロナが収束しない理由はただひとつ。

国が国民に信用されていないから

 これ、お金と同じなんです。

 国が政治的に信用創造できなくなっているから需要が不足している。

 今は円高ですが、そのうち、長い目で見れば、おそらく、長期円安波動に転換していくと思います。まだずっと先の話ですが。

 この原因は信用収縮です。

 これはどういう意味かというと、経済成長しない国という意味です。

 今は、まだアメリカに守られているため、問題なく見えますが、アメリカの力が弱くなると、日本の国力は必然的に落ちていきます。

 その時、これまでの「円安で景気が良くなり、円高で景気が悪くなる」といった歪な為替の動きは終わり、ひたすら日本の価値は下がっていくでしょう。

 何十年先になるかはわかりませんが、大国の興亡の中で日本が先進国から転落する日。

 この日のために私たちは今、資産運用をしているようなものです。

 

 資産運用って本当は面白いんです。

 年初、1回目のブログは、アメリカの上院で民主党過半数を獲得した話から、マーケットの環境要因、チャート分析を通じ、最後はこんな話になってしまいました。

 でも、こんなふうに頭の中の想像を膨らませることができるのも資産運用なんです。

 生きるとは不確実な連続に慣れ親しむことのような気がします。

 いろいろ今年は考えざるを得ない年になりそうです。

 気を張らずに頑張っていこうと思います。

 

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