コロナショックの次の展開:日米におけるマネーの供給量の違いが「円高・ドル安」をもたらす?
日経平均株価指数。
2020年3月24日(火)の前場終値は、前日比1138.95円高の18026.73円となっています。
久々の大幅高で午前の取引は終了しましたが、その理由は、3月23日に開催した臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、アメリカのFRB(米連邦準備理事会)が量的緩和を無制限に行うとしたからです。
昨晩のNY市場では、この報道があったにもかかわらず、前日比582.05ドル安の18591.93ドルで引きているため、アメリカと日本では受け止め方が違うみたいですね。
おそらく、アメリカとしては、国内の新型コロナウィルスの感染が拡大しており、また、経済の落ち込みが著しく懸念されているため、こちらの方が財政政策や金融政策よりも、より重く受け止められているのではないでしょうか。
それに比べ、日本は悠長に構えているような気がしますが、アメリカは悲観の中にあり、日本は楽観の中にいる印象です。
日本が楽観的でいられる理由は日銀のETF買いでしょう。
3月1日から数えて、昨日の23日まで1兆2224億円のETFを市場から吸収しているため、その効果がようやく表れてきたといえます。
さて、冒頭にあげた日経平均株価指数のチャートですが、更新しておきます。
これまでの分析と基本的な方向性は同じですが、局面としては近々、いったん反転する兆しが見て取れます。
これはあくまでもイメージですが、今後の相場の展開を予測すると、次のように考えています。
①現在の日経平均株価指数は、ようやく底値を探る展開になってきた。
②今日の前場の動き(1000円以上の上昇)は、「とりあえずの底値」、もしくは、「一時的な上昇」である。
仮に、今日の上昇が「とりあえずの底値」だった場合、日経平均株価指数はいったん22000円を目指す可能性がある。
逆に、今日の上昇が「一時的な上昇」である場合、もう一段の下げが来ることが予想され、下値の目標値としては15662.80円近辺を目指すであろう。
③いずれにせよ、コロナショックによる日経平均株価指数の急速な下落は近々転換点を迎え、今後は短期的に上昇に転じる可能性が高くなってきた。
④しかし、この反転上昇は「騙し」であるため、新型コロナウィルスの感染の影響が実体経済に色濃く出てくると、再び下落する可能性が高いと思われる。
下値のタイミングはタイムラグがあるため分析のようにはならないかもしれませんが、イメージとしてはこんなところではないでしょうか。
ただ、やはり気になるのは、アメリカと日本の受け止め方の違いです。
マーケットは思惑で動くため、現実で何が起こっているかということは、実をいうとあまり関係がありません。
重要なのはマネーの量の違いであるため、今回のFRBによる無制限の量的緩和というニュースを、アメリカ市場では「直視されず」、日本市場では「評価された」という、実に中身のない議論をマーケットがひたすらしているにすぎません。
マーケットはパニックの中にいるため、ここから抜け出すための気持ちの落ち着きが必要ですが、市場はこれを待っています。
今後の勝負は、
アメリカの財政・金融政策の規模と日本の財政・金融政策の規模の戦い
です。
おそらく、早晩、アメリカはパニックから回復すると思われます。
なぜならば、アメリカの財政政策と金融政策が動き出すと、とてつもないドルマネーが市場に供給されることになるからです。
一方、日本の場合、金融政策はいいとしても、財政政策が弱くなるため、この差が為替に表れ、
いずれ「円高・ドル安」の流れ
になることが懸念されます。
日本国内の景気で考えると、現実的には、目先の支援、例えば、企業や家計に対する財政出動や雇用の確保が必須ですが、これに向けた手当がアメリカと比べ薄くなる可能性が高いため、資金供給量に差が出てしまい、ドルが割安・円が割高という構造になりやすくなります。
こうなると、日本にとっては物価の下押し圧力がかかることになり、デフレの程度がさらに深まることが考えられます。
デフレ経済がさらに長引く可能性を見ておく必要がありますが、このような経済状況は、リーマンショックで経験したように、企業にとっては売上の減少、家計にとっては所得の減少につながりやすくなります。
参考までに、ドル・円相場のチャートについても触れておきます。
こちらもイメージですが、ドル・円相場の方向感としてはチャート的に「円高・ドル安」の波形であろうと考えられます。
問題はその深さですが、どうやら、ドル・円相場は1ドル=95円を目指しているように映ります。
直近では、1ドル=102円台をマークした後、急速に円安が進み、現時点では1ドル=110円台に戻していますが、この円安・ドル高は単にレパトリ(レパトリエーション)であるため、ドル通貨の力強い需要に引っ張られる形で円が売られているのにすぎません。
この動きが落ち着くと、米ドルと日本円における供給量の綱引きが逆転する可能性があり、チャートでは、方向感としてこのような動きを捉えているようです。
なにはともあれ、ようやく、マーケットはマネーの供給量を見定めるステージに入ってきました。
今後は、日米ともに、具体的な政策内容に関する情報がより多く出てくることが考えられるため、情報を注視し、マーケットの動向を探るようにしていきましょう。