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株高・国債高。教科書通りにはいかないマーケットの不思議。

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 ここ数日、日経平均株価指数について言及していたので、今のマーケットの主人公であるアメリカ市場について見ておきたいと思います。

 このチャートはNYダウですが、先週下値をつけてから一気に反転し、急上昇しています。

 方向感は上昇トレンドですが、とりあえず、コロナショックの底値からの上昇相場の最終局面にいよいよ入った可能性がある点は押さえておきましょう。

 アメリカの大統領選挙でバイデンが勝つことを想定した動きですが、本質的には、大統領選挙の答えが出るので、これで一安心ということで買い上がっているところです。

 買いの材料としては「大規模な経済対策予算への期待」が挙げられます。

 これ、結構、重要ですからね。

 新型コロナウィルス感染症に伴う経済のダメージを回復させるために、追加の経済対策を講じようということで、その予算規模の要求が共和党民主党でなかなか折り合いがつきませんでした。

 今もまだ折り合いがついていませんが、仮に、今回の大統領選挙でバイデンが勝利し、また上院も民主党過半数を獲得すると、ねじれ国会が解消され、予算の成立が実現されやすいということで株式市場では買いを誘っています。

大規模な予算が執行されるかもしれない⇒経済回復

 だから、株高ってことなんですね。

 株式市場はバイデン民主党を好感しているってことです。

 

 一方、債券市場はというと、アメリカの10年物国債の利回りを見てみると、米国債が買われ、利回り(金利)が低下していることがわかります。

アメリカ10年物国債利回り

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 あれって思いません?

 株高なのに国債が買われるってなに?って。

 教科書通りの解釈をすると、株が買われることはリスクオン、つまり、リスクを取りに行っているわけなので、安全資産である国債は売られ、その利回り(金利)は上昇します。

 でも、実際はその逆で、株式が買われているのに国債も買われ、利回りが低下しています。

 はい、ここに株式と国債が必ずしも分散投資になるわけではないということが隠されていますが、これが資産運用の実践の難しいところです。

 それじゃあ、なぜ、国債が買われ、利回りが低下しているかというと、

大規模な経済対策予算の執行で米国債への信認が損なわれるかもしれない

からです。

 要は、アメリカがこれから経済を回復させるためにさらにお金を使おうとするわけですから、国の財政基盤が弱まります。

 その財源を確保するために国債を発行するわけですが、国債の発行は国債を売っていることと同じことなので、結果として利回り(金利)の上昇を引き起こします。

 そうなると景気には悪いので、国債を発行する代わりに中央銀行であるFRB国債を買い取ることで利回り(金利)の上昇を抑えようとします。

 そんなこんなで、株価が上昇しているにもかかわらず、国債が買われ、金利が低下するという現象が起こっています。

 これって、特に大規模金融緩和政策を実施するようになった以降は珍しいことではなく、むしろ日本もやっていることですし、当たり前のことになっています。

 なので、このカラクリを知っておかないと、教科書通りに考えてしまい、資産運用を失敗しちゃうんですね。

 

 今回、覚えておいてもらいたいことは、株価が上がっても、国債が買われ、金利が低下することも普通にあるという点です。

 特に今のような局面では、株式市場と債券市場が見ている時間にズレが生じています。

株式市場では、バイデンが大統領になるということで大規模な予算組みへの期待から、「目先」株価が上がりやすくなっている。

 一方、

債券市場では、「将来」、アメリカの財政が悪化するとの予測から国債が買われやすくなっている。

 このチャートを見て、このようなことを読み解くのはちょっと難しいですよね。

 でも、コツを覚えればそんなに難しいことではなく、

教科書通りにマーケットが動いていない場合に疑問を持つ

ことを繰り返していると、自然に身に付いていくものです。

 

 ついでにドル・円も見ておきますね。

○ドル・円レート

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 バイデン相場になってからは特に円高が進行しています。

 ちなみに、このチャートでは、下に行けば円高、上に行けば円安です。

 ドルのチャートとして見るとわかりやすいですが、下に行けばドル安、上に行けばドル高ってことです。

 なぜ、円高・ドル安になっているかというと、今までの話の流れで気づいた方もいるかもしれませんが、大統領選挙が終わった後、大規模な追加予算が組まれるかもしれないからです。

 要は、ドルがいっぱい市場に放出されます。

 ドル余りですよね。

 だから、ドルの価値が下がり、円に対して「円高・ドル安」になるわけです。

 これ、必ずしも日本だけじゃないですよ?

 外貨建の保険に加入しちゃってる人なんかは注意が必要ですが、例えばオーストラリアドルと円の関係性でも、ドル安に引っ張られるため、円高・豪ドル安になりやすくなります。

 とりあえず、ドル全面安と思っておいた方がいいかもしれません。

 

 ここまで考えると、日本株は?って思いますが、最近、日経平均株価指数の記事を多めに綴っていますので、そちらをご参考いただければと思います。

 簡単にいうと、日本株はもちろん上げるでしょうけど、ある程度上げると、仮に円高が進んでしまった場合、それに足を引っ張られてしまうため、もうちょっとしたら上げ幅を縮め、下落するって感じでしょうね。

 

 さて、今回は、株式と国債金利、為替がどう絡み合っているかという話をしました。

 教科書通りにいくとは限らないのが、実際の資産運用です。

 このため、実践経験を積んで感覚を身に付けなければ相場は理解できないんですが、積立投資でコツコツ資金を投じている暇があったら、投資しながらコツコツ勉強していく方がよりためになると申し述べて締めくくりたいと思います。

 今回の大統領選挙は、完全に新たなトレンドを形成するはじめの一歩になるため、iDeCoやつみたてNISAで放ったらかしにするのではなく、なるべく情報をキャッチし、理屈を理解しながら次の運用について考える材料としていってくださいね。

 

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