コロナショックの今後と日本における本質的な問題。
アメリカのFRB(米連邦準備理事会)が15日に開催したFOMC(米連邦公開市場委員会)において、FF(フェデラルファンド)レートの誘導目標を1.0%引き下げました。
レンジが0.00~0.25なので、政策金利は実質的に0.00%とほぼゼロ金利状態という意味です。
これに加え、米国債などを大量に買い入れる量的緩和政策を復活させるそうですが、その買い入れ規模は、今後数カ月で5000億ドルとの予定です。
ここ数日、連続して金利の引き下げをしてきたFRBですが、ここに来て一気にゼロ金利まで引き下げてきたので、景気減速への影響を金融政策面で積極的に抑えていこうという力強い意志が伝わります。
慣れていないと、この記事、わかりにくいかもしれませんが、簡単に説明すると、目先の資金需要と将来の資金需要の減退を食い止める策です。
今、アメリカでは、企業活動や家計において必要とされるお金が急速に細ってきています。
この理由は、もちろん新型コロナウィルスの感染拡大による景気の後退懸念ですが、お金やモノの取引が一気に冷え込んできているため、FRBとしては、金利を引き下げることで、企業や家計がお金を借りやすくし、消費にブレーキがかからないように積極的に支援する方向で舵を切ったというのがこの記事の意味するところです。
一方、日本ではどうなのか。
日銀が、今日、3月16日(月)正午、緊急で金融政策決定会合を開催しました。
このときに何を決めたのかというと、
①ETFの購入目標額を年6兆円から年12兆円に引き上げ
②CPと社債の買い入れ枠をそれぞれ1兆円ずつ増額
③中小企業への金融支援としてゼロ金利で資金を貸し出し
の3つです。
ただし、利下げについては、現在の政策金利であるマイナス0.1%のまま据え置きし、これ以上の金利の引下げはしないと決めたそうです。
日本の場合は、すでにマイナス金利状態であるため、これ以上の金融緩和を行っても、銀行をはじめとする金融機関の経営体力が削がれるため、かえって逆効果と判断したのかもしれません。
むしろ、注目すべきは、CP・社債の買い入れ枠の増額と中小企業への資金融資です。
CP(コマーシャル・ペーパー)は無担保の約束手形、社債は企業が発行する借用証書です。
両方とも、企業にとっては、目先の資金を獲得するために発行されるものであるため、これを日銀がより積極的に買い入れるとなると、企業の資金繰りにとっては助かります。
また、中小企業に対してゼロ金利、つまり、利息を付けずにお金を貸してくれるため、こちらも企業の目先の資金繰りにとっては非常に助かります。
本来なら、この意味を企業経営者は知っておく必要がありますが、金融政策においてはしっかりと支援体制を整ったと判断できます。
アメリカにしろ、日本にしろ、経済政策のうち、金融緩和については踏み込みました。
あとは財政出動ですが、トランプ大統領の発表した支援策は、評価としてはあまりされていないように映ります。
また、日本においても、第1弾、第2弾と発表されてはいますが、従来の制度を転用しているか、もしくは、若干、新しく追加している程度に過ぎないため、両国とも、もう少し積極的な財政出動措置を講じなければ、実体経済の減速に対しては真正面から対応するのが難しくなる恐れがあります。
今日の日経平均株価指数は、前日比▲429.01円の17002.04円で終えました。
日銀の金融政策決定会合の結果が伝わっても、蓋を開けると利下げはしないとのことだったため、期待外れということで下げた形ですが、今晩のアメリカ市場の反応待ちといったところでしょうか。
チャート的には、波形的に下げ止まった感が見られないため、いったんここで値を戻しても、実体経済の急減速が世界各地ではっきりしてくるようになると、そのタイミングで株価は下がりやすくなることが考えられます。
経済指標については、今後もしばらく注意が必要です。
さて、話は変わりますが、今回のコロナショックの本質は、この国の諸問題を含め考えると、経済の低成長から脱却できないというところにあります。
その最たる原因は、この国の人々の「安定志向の高まり」ですが、それを作ってしまっているのは「超高齢化社会」と「少子化社会」、そして、その後に続く「多死社会」による「人口減少問題」と言えるでしょう。
これを少しでも解消するために、国は、みんなで働いて豊かになりましょう、そうすれば、この問題は解決しますと言わんばかり、子どもを産みましょう、共働きをしましょう、夫婦で子どもを育てていきましょう、賃金を上げて所得を増やしていきましょうなどの政策を掲げています。
そんな中、消費税を2014年、2019年と引上げ、現在、この国はデフレから脱却することを諦め、経済の低成長を国の運命であるかのように受け入れるようになってしまいました。
にもかかわらず、1970年以降生まれの私たちのような若い世代に対し、みんなで働いて豊かになりましょう、そうすれば巡り巡って人口が増えますと言っています。
この国が経済的になかなか前に進めなくなっているのは「安定志向の高まり」です。
安定志向が高まっているということは、特に若者が将来に対して不安を強く抱いてしまっているためです。
ここを解消し、未来に希望を持てる社会に変容させていかなければ、おそらく、コロナショックが収まったとて、いつか来た道にまた戻るしか、私たちの帰る場所は用意されていないと思います。
この社会の仕組みを変えるには、単純に資産の組み換えを大規模に行っていく必要がありますが、本当は、今回のショックが良いヒントになっているような気がします。
企業が内部留保を抱える目的は、まさにこのような非常事態に備えるためですが、事ここに及んでも、企業は資金を積極的に市場に吐き出そうとしないでしょう。
そして、家計が貯蓄を抱える目的も、本来、このような非常事態に備えるためですが、特に資産の保有高が多いような高所得、高資産のある家庭では、このときこそ、積極的に資産を吐き出す必要があります。
しかし、おそらく、そのようなことはあまりしないでしょう。
つまるところ、これが今の日本人のマインドで、みんなで安全な場所を求め、みんなで安定をむさぼるという姿勢。
その結果、みんなで不安定になる。
まさに合成の誤謬。
政治家の方たちには、この状況を果敢に打破する策をどうか披露していただきたいと思います。