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FRB(米連邦準備理事会)、資産縮小の影響は?

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 アメリカが金利を上げる?

 じゃあ、日本はどうなるの?

 今回は、アメリカの金融政策についての話題です。

 2014年ぐらいからでしょうか、FRB(米連邦準備理事会)における米連邦公開市場委員会FOMC)のニュースはかなり注目されていました。

 日本時間で昨夜開催されたFOMCでは、次のようなことが決定されました。

www.nikkei.com

〔今回のFOMCのポイント〕

①2008年の金融危機後の量的緩和政策を完全に終結

②大幅に膨らんだ保有資産を縮小し始める。 

 

 マーケットでは、いつかいつかと待ち望まれていた決定ですが、ここに来てようやくFRBが決断したということでホッと一息ついている状況です。

 リーマンショック後、アメリカを始め世界の国々では、金利を下げる政策金融緩和政策)が採られました。

 金利を下げる方法には「質的緩和」量的緩和の2種類があります。

 前者は直接政策金利を下げる方法、後者はさまざまな資産を中央銀行であるFRBが買い取る方法です。

 いずれも市中にお金が回るようにするための政策です。

 このようにして、金融機関を通じ資金が企業や家計の手元に渡り、アメリカの景気は少しずつ回復してきました。

 そして、2014年、量的緩和策である資産の買い入れを停止し、保有した資産を維持し続けていました

 資産の購入を止めたからといって量的緩和策が完全に終わったわけではありません。

 買い続けていた資産を、今度はどのように売却するかという問題があります。

 一気に売ってしまうと、マーケット(資産市場)は大混乱に陥ります。

 なので、資産はもう買わないけど、これからはとりあえず持っておいて、満期を迎えたものに対して再投資をしますとしていました

 買い増さないけど、資産の保有量は維持しますというのがこれまでの段階です。

 

 しかし、今回のFOMCで、この政策も終わらせようということが決まりました。

 それが量的緩和政策の完全な終結です。

 保有している資産などが満期を迎えても再投資はしない

 つまり、FRBは満期を迎えた資産から手放していくことになるので、これまでとは逆に、マーケット(資産市場)からマネーを吸い上げる形になります。

 これを保有資産の縮小」と言います。

 いつからなのか。

 10月からだそうです。

 今年(2017年)の10月から3月にかけて、米国債の縮小幅を月60億ドル、住宅ローン担保証券MBS)の縮小幅を月40億ドルにし、1年後にはそれぞれ月300億ドル、月200億ドルにまで増やし、資産の縮小規模を総額6,000億ドルにするとしました。

 

 一方、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レートの誘導目標は年1.00%~1.25%と据え置きです。

〔FFレートの推移(参照:外為どっとコム

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 量的緩和策を完全に終わらせる代わりに、質的緩和策であるFFレートの低位操作は維持するという決定です。

 わかりにくいかもしれませんので少し補足します。

 量的緩和策では、国債住宅ローン担保証券MBS)などの有価証券を買い入れることで金利を下げていました。

 この金利長期金利(返済期間の長い金利)と言います。

 これに対し、FFレートは短期金利(返済期間の短い)と言い、目先の資金需要に深くかかわってくる金利です。

 今回のFOMC量的緩和策が完全に終わるとなると、長期金利は上昇しやすくなります。

 片や、短期金利であるFFレートは据え置きで、金利の変動はドロー。

 これらが意味するのは、アメリカ国内の資金需要は完全に回復しているわけではないが、以前よりも良くなってきている。

 これからは、目先の資金繰りのためだけでなく、将来への投資にもお金が向かうようにしていこうということです。

 別の表現をすると、経済の異常事態は脱した、これからは経済を正常化させていくという意思とも言えます。

 

 さて、この先どうなるのか。

 先ほどの日経新聞の記事ではこんなことが書かれています。

 来年以降の政策見通しでは、会合参加者の中心シナリオが18年は3回19年が2回追加利上げとなった。

 ただ、利上げが打ち止めとなる政策金利の天井」2.75%と見込み、19年から20年にかけて利上げを停止する可能性も示唆した。

 FRBの分析では、経済の巡航速度である潜在成長率が1.8%に低下しており、中立的な金利水準そのものが下がっているためだ。

 来年、再来年と、政策金利=FFレートの天井を2.75%と予測してる委員が多いんですね。

 ここまでの利上げが実現するかどうかは定かではありませんが、FOMCのメンバーは状況を見ながらゆっくりと金利を引き上げていこうとしているようです。

 

〔30年物米国債利回りとNYダウ〕

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 これは、「30年物の米国債利回り」(青)、「NYダウ」(黒)のチャートです。

 30年物米国債利回りは長期金利ではなく、超長期金利です。

 トレンドは1994年以来ずっと低下しています。

 一方、NYダウはずっと上昇、今でも史上最高値を爆進中です。

 注目したいのは、2009年、リーマンショック後の波形です。

 NYダウが一本調子で上がっているのに対し、30年物米国債利回りは下降トレンドを描いていますが、綺麗な逆相関になっています。

 大規模な金融緩和政策でマネーがだぶつき、株式市場に向かっていると同時に米国債も買われてるんですね。

 これは、リーマンショック後の景気浮揚策で、景気回復期待からのリスクオンと金融緩和策に追随する形でのリスクオフが同時に働いてきたという意味です。

 

 個人的に考えているシナリオは次のようなものです。

①金融緩和政策から金融引締め政策の変更の過程で資産市場が急落する。

②その結果、金融政策の変更を中止せざるを得なくなり、再び金融緩和の流れになる。

 このように見ている理由は単純です。

 アメリカの株式市場(ここではNYダウ)が上げすぎているため。

 遅かれ早かれ、いずれかの時点でリーマンショック後の長期上昇相場に対する大規模調整が起こると思いますが、きっかけはなんでしょうかね。

 金融引締めにアメリカの実体経済(物価や消費)がマイナスに反応してしまうというのが大局的な見方になるでしょうが、その間、北朝鮮を巡る地政学的リスクや、EUの中でも不良債権に苦しんでいる国や中国の地方債問題なども相場の変動要因としては重要度が高いと思います。

 アメリカが政策金利をどこまで引き上げていくかと、いつまで上げるのか。

 とりあえず、これを軸にして考えていく必要がありますが、当面は、金利高・株高・円安ラインでまたつながりました。

 日本は依然として金融緩和を継続していくことになりますが、世界的に不動産マネーに引っ張られている傾向があるため、最終的にはアメリカの金融政策の変更が日本経済に影響を及ぼし、特に、株式市場と不動産市場でマネーの逆流が起こる可能性を見ています。

 こうならなければいいんですが、リーマンショックから来年でちょうど10年。

 いつまでも上昇相場は続かないことを歴史は証明しています。

 

 

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