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株式市場の下落局面はいったん終わりを迎えたか。2月米雇用統計を踏まえてマーケットの現状を確認する。

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 昨晩、日本時間でいうと22:30ですかね、アメリカの2月分の雇用統計が発表されました。

 雇用統計が発表されるまで株価は下落基調でしたが、発表後は一気に値を戻しました。

 この動き、気になりますよね。

 かなり重要な局面なので、今回は、現状について確認していきたいと思います。

 

 まずはアメリカの雇用統計から。

〇2月失業率

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 アメリカの2月の失業率は、前月比0.1%減の6.2%となっています。

 市場予想が6.3%だったのでわずかに改善といったところです。

 昨晩の米国株式市場ではここにはあんまり反応しなかったようですね。

 

 ということで、2月の非農業部門雇用者数について見ていきます。

〇2月非農業部門雇用者数

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 結果は37.9万人増。

 先月が4.9万人増だったので7倍超の増加数です。

 市場予想が18.2万人だったため、倍以上の結果でした。

 ここですよね、マーケットが反応したのは。

 失業率はおおよそ予想通りでしたが、雇用者数の伸びがマーケットに大きなインパクトを与えました。

 

 ここでアメリカの10年物国債長期金利)の動きを確認しておきますね。

〇米国10年物国債利回り

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 一時的に1.537%まで下がりましたが、終値が1.566%で高止まっています。

 

 ん~、ここで考えるべきポイントは、

金利が上がっているのに、この局面で株価が上昇するってどういうこと?

です。

 教科書通りに考えるならば、金利の上昇は景気の回復や成長期待の表れのため、これから景気が良くなっていると市場が判断し、株価が上昇したと受け止めることができます。

 まぁ、教科書通りといえば教科書通りですよね。

 ただ、これまでの経緯も含めて考えると、「景気が回復する」⇒「金利が上昇」⇒「平均配当利回り<10年物国債利回り」⇒「債権へのマネーシフト」⇒「株価下落」が起こっていたので、雇用統計の結果を受けての株価上昇は、おそらく景気回復期待というよりもむしろ、それまで10%程度下げ続けていた株式市場の買戻しが入ったということでしょう。

 なので、この戻りが本物かどうかを見極める必要があります。

 

〇ナスダック

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 今の株式市場はナスダックを中心に動いているので現状を確認すると、「ローソク足が下ヒゲで、安値で雲を突き抜けていた」、「遅行スパンが株価を下回った」ということで、完全に雲抜けするかどうかがポイントになってくるでしょう。

 一目均衡表では、ナスダックはあと一歩のところで踏ん張っている感じですね。

 MACDを見ると、「依然として下落トレンド」を描いています。

 まだ下値がフラット化していないため、ナスダック市場ではさらなる下落が起こる可能性はあるようです。

 どちらかというと昨晩の戻りがそんなに大きくなかったので、長期金利が高止まっていることへの警戒感がぬぐい切れていないといったところでしょう。

 もうひとつ、RSIについて見ていくと、39.89で40.0を下回る水準にあるため、40.0を抜けなかったんだぁという印象です。

 2月高値からの大きな下げが起こっていたので、RSIは40.0を下回り30.0台を付けてからの買戻しのように考えていますが、RSIを見ている分には買戻しをしても大丈夫かなぁとも思います。

 ただ、どうでしょうね、MACDの下値フラットが全然見えず、また、長期金利が高いため、ここから一気に値を戻していくとは言い切れません。

 なので、ボリンジャーバンドも見てみます。

〇ナスダック

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 ボリンジャーバンドボラティリティー(変動幅)を視覚的に見る指標です。

 ローソク足の下ヒゲで枠を下回っているため、こちらについては買戻しが入ってもおかしくないシグナルにはなっています。

 いずれにせよ、MACDの下値フラット化が見えてくるまでは、NASDAQは完全な買いシグナルとは言えないかもしれませんね。

 ということで、これらの指標を総合的に見ると、一目均衡表と同じ結論になってしまいます。

 下落基調の持続化をあと一歩のところで凌いでいるといったところです。

 

 株式市場の中心がナスダックである以上、このような現状把握は重要な要素になりますが、他の株式市場の動きも確認しておきます。

〇S&P500

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 まず、一目均衡表では雲入りした程度で、他の2つのシグナルは点灯していません。

 MACDは下値がフラット化してきました。

 そして、RSIは40.0程度で止まり、50.0程度に上がっています。

 ボリンジャーバンドも確認していくと、次のようになっています。

〇S&P500

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 枠を下回ってますね。

 なので、S&P500は、短期的にはトレンド転換と考えていいかもしれません。

 ただ、注意点は長期金利の高止まりです。

 テクニカル的には、短期的に値を戻すことが見えますが、もう一段金利が上昇するともろくも崩れる可能性があるため、2週間程度の猶予って感じでしょうか。

 

 NYダウの場合、どうなんでしょうね。

〇NYダウ

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 NYダウは前述のナスダックやS&P500と比べれば、高値からの下落が少ないですね。

 一目均衡表においても、さしたる下落シグナルはないと言っても良いでしょう。

 MACDはフラット化、RSIは40.0台から50.0台に切り上げたので、これをもって短期トレンドは上昇とはいえます。

 ただ、波形的には、この戻りは騙しっぽく映るため、もう一段下落する波形とも見て取れます。

 おそらく、金利の影響が薄い割安株への物色が今入っているので固いとは思いますが、さらに長期金利が上昇して実体経済への影響がクローズアップされると崩れるんじゃないかと思います。

 

 とりあえず、アメリカの株式市場はこんな感じになっているということを踏まえて、気になる原油動向を見ておきます。

WTI原油

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 原油価格は上昇基調ですね。

 1バレル=66.09ドルと再び値を上げてきています。

 これは減産延長が要因ですが、実体経済の回復に伴う原油高ってわけではありません。

 なので、株式市場にとって、この動きはノイズ要因になるため、いらぬインフレ懸念の増幅を喚起する可能性があります。

 といっても、コロナ前の水準に戻しているだけなので、これをもってインフレだとはいえません。

 このため、今後は、これ以上原油価格が上がっていくと要注意ってことですかね。

 金利先高懸念とインフレ懸念のダブルパンチは、今の株式市場にとっては株価の下落要因になります。

 

 さて、これを受けての日経平均株価指数です。

日経平均株価指数

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 昨日もアップしたんですが、同じものを短期視点でクローズアップしています。

 日経平均株価指数は、MACDが下値のフラット化が見てていないため、下落トレンドを描いていると判断していますが、昨晩のニューヨーク株式市場も考慮すると、週明け戻りは入りそうです。

 ただ、日経平均株価指数の構成銘柄の中にはハイテク株や成長株がそれなりに含まれているため、ナスダック市場の影響を受けるようになっています。

 なので、この点が気がかりなんですが、アメリカ市場と日本市場との大きな違いは、日本の10年物国債の利回りが0.097%まで落ちたことです。

〇日本10年物国債利回り

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 このため、買い戻されていた債券から株式にマネーが移っていくことは考えられます。

 MACDも、金利の低下を示唆しているため、日本においては金利が少し安定してきたといえます。

 

 というこで、日本の株式市場は、目先、上昇するかもしれません。

日経平均株価指数

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 ただし、前回のブログでも解説しましたが、昨日、安値で28822.22円を割り込んだため、波形としては中規模調整局面が発生したと判断しています。

 このため、今後、いったん買戻しが入っても、再び下落するだろうと考えています。

 イメージとしては、横軸において、本当の戻り相場になるのに時間がかかるという意味です。

 

 少し長くなりましたが、やはり長期金利の動向ですね。

 現状の日米の当期金利は、アメリカ:1.566%、日本:0.097%。

 アメリカ>日本はいつも通りなんですが、この差が昨日で急拡大しました。

 いわゆる日米金利差の拡大てすね。

 日米の長期金利について関係性を整理すると、

①米長期金利:上昇・日長期金利:低下

②米長期金利:上昇・日長期金利:上昇

③米長期金利:低下・日長期金利上昇

④米長期金利:低下・日長期金利:低下

の4つになりますが、現状は①です。

 今後、どうなると思います?

 なんとなくですけど、アメリカは昨晩の株式市場の戻り、というか、雇用統計を受けて、長期金利の上昇を容認するような気がします。

 なぜならば、本来なら雇用統計が大きく改善した場合、金利が上昇して、今のような局面では株式市場は下落するはずですが、株式市場は予想に反して景気の回復を好感しました。

 このため、景気が回復して金利が上昇しても、株式市場はポジティブに受け止めたということで、金融緩和を拡大させなくても大丈夫という判断につながる可能性があります。

 この場合、先ほどのパターンでいうと①か②の可能性を見ておく必要がありますが、この状況を株式市場がどこまで許容できるか、つまり、今後、目先、金利水準が切り上がっていった場合、株式市場がどこまで金利の上昇を織り込むか、ここが焦点になろうかと思います。

 簡単にいうとですね、「長期金利がさらに上がっても、株式市場はまだ行ける!」と判断するなら株価は上がるということです。

 この場合、次の米10年物国債利回りの水準は2.0%を見ておく必要があります。

 この間、株式市場は大きく乱高下するかと思いますが、その中で中央銀行と株式市場がどのような対話をしていくか、ここがポイントといえます。

 中期的に見ると、いずれ、株式市場は暴落する可能性は高いと見ていますが、その間の物語の序章といえるのが今の局面です。

 もうちょっとしたら中長期のテクニカル分析もしてみますが、週足や月足チャートを見ていると、その衝撃は楽観視できるとは必ずしもいえません。

 これをいかにおさえるかがFRBの役目で、全世界から注目されている一大事といえます。

 この間、日銀はどう振舞うのか。

 個人的には、コロナ相場という異常性は昨年の12月22日で終わったと考えています。

 これからは、正規のセオリーに基づいたチャート分析がしやすくなると思いますので、よりテクニカル重視の分析をしていこうと考えています。

 

 さぁ、これからどうなるか。

 FRBと日銀の動きには注視していきましょう。

 

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