株式市場の急落劇「個人投資家VSウォールストリート」 下剋上の果てはいかに。
これも、超大規模金融緩和の影響なのか、株式市場に下剋上の嵐が吹き荒れています。
玄人の個人投資家VSウォールストリートのエリート投資家。
ここ最近の株式市場の暴落は、個人投資家がヘッジファンドを出し抜いた結果起こった現象のようです。
いろいろと記事を読んでいると面白いんですが、ウォール街を舞台にした映画を見ているような感覚です。
違うのは、ウォール街が舞台ではなく、あるSNSの掲示板だったという点です。
さらっと読みやすいのは、このハフファインポストの記事です。
もうひとつ、ウォールストリートジャーナルの記事も掲載しておきます。
ちょっと難しい印象を持つかもしれませんが、ハフファインポストと併せて読むと理解が深まります。
簡単に一連の動きを要約すると、個人投資家がウォール街のエリート投資家に対抗するためにレディットというSNSの掲示板で意見交換をしながら、瀕死のゲーム企業であるゲームストップ株価を吊り上げにかかった。
これまでの一連の株価上昇の動きはこういう背景もあったが、そんなことは普通気づかない。
ウォールストリートのエリート投資家は、株価が高値圏にあるため相場の下落を予測し、オプションや先物、信用取引などでショートポジション(売り)を取っていた。
しかし、予想に反して相場は上昇、高騰といってもいいぐらいの上昇でしたが、エリート投資家たちは大きく損失を被り、損失の穴埋めをするために保有しているアップルなど優良企業の株式を売却しました。
この動きが他の株式にも波及し、ここ数日の株式市場急落劇を演出するに至りました。
いわゆる「つれ安」ですよね。
どうですかね、この記事を読んで。
いくつかポイントがありますが、
この急落劇は超大規模金融緩和がなせた技である
というのが第一です。
そして背景にあるのが、
掲示板
を舞台にした個人投資家のウォールストリートのエリート投資家に対する共同戦線。
口裏を合わせ、一気に買い付け、爆上げを演出し、ウォールストリートを出し抜いたわけですから、ここにドラマ性を感じます。
そして、ウォールストリートのエリート投資家たちは、
プロに胡坐をかき、超大規模金融緩和によるカネ余りに根拠なく油断していた
ため、玄人の投資家たちの奇襲により大きな損失を被った。
みんな安心してますよね。
大規模金融緩和だから株価は上昇し続けるって。
普通に考えたらそんなわけないのに、常識というか、セオリーが通用しなくなったマーケットでは、時として、そんな不満分子たちが暴挙に出ることもあり、これが引き金となって株価が暴落することがあるということを目の当たりにした良い例ともいえるでしょう。
個人的には民主党のオカシオ=コルテス下院議員の言う、
ウォールストリートの投資家は長い間、私たちの経済をカジノのように扱って来た
に注目しています。
そもそも民主党とウォールストリートの結びつきは強かったのに、いまさら何言ってんの?って思いますが、大統領がバイデンさんになり、財務長官がイエレンさんになったことで、いずれ所得格差の是正が打ち出されることを想定すると、おそらく、投資家に対する縛り、例えば、増税や金融規制といったものが現実化するんだろうと推測しています。
この一連の問題の本質は、コロナ禍で苦しんでいる人たちがいるにもかかわらず、株式市場などで巨万の富を得ている人たちもいるという点です。
まさに道徳観念がゼロなわけですが、それを金融緩和政策が後押ししています。
金融緩和で救われている人たちもいます。
一方、金融緩和で巨万の富を得ている人たちもいます。
国の行う政策には長所・短所がありますが、短所に光を当てすぎてしまうと、今回のようなドラマが起こったりするわけです。
SNSを通じて知り合った個人投資家たちは、おそらくウォールストリートを目の敵にしていたのでしょう。
この人たちにとっては正義だったのかもしれません。
しかし、ウォールストリートのエリート投資家たちにも正義はあり、それは富裕層の資産を運用しているという業務的な役割です。
こういった正義の対立が、結果的に他の人々を巻き込み、仮に、まったく関係のない人たちの生活に悪影響を及ぼすというのなら、超大規模金融緩和政策の意味を問いただす必要があるのかもしれません。
そして、こんなドラマがネットを通じて行われていても、日本の金融機関の人たちはつみたてNISAなどで積立投資を行っている人たちに「途中で売っちゃだめですよ」とかって言っちゃうんだもん、心情的には下剋上を行った個人投資家たちを応援したい気持ちになります。
さて、日経平均株価指数の現在地を見ておきましょう。
○日経平均株価指数
ちょっと見にくいかもですが、まだ、従来どおりのポジティブシナリオで予測を立てています。
現状、1月25日につけた28,822.22円を天井にプチ調整が入っています。
問題はこのまま中規模調整に移行するかという点ですが、26,809.30円を下回ると中規模調整確定です。
この場合、最終的な下値目標値は
①26,105.35円(0.318)
②25,266.11円(0.5)
③24,426.87円(0.618)
が可能性の高い水準といえますが、ざっくり言って「25,000円水準を目指す」程度に捉えておく必要はあるでしょう。
ただ、ダイバージェンス・インディケーターが50を下回り、もう少し下がってくるとブルが点灯するため、いったん下げ止まる可能性はあります。
そして、その後は反転上昇、一定の水準まで戻ったら再び下落、その下値目標値が前述の水準であろうとご理解ください。
っていっても、わかんないですけどね。
今回のゲームストップに端を発する下剋上は、個人投資家の集団的な仕掛けであるため、おそらく一過性のもののように映ります。
そう考えると、中規模調整までは発展せず、従来のシナリオどおり30,000円を目指すだろうという目は消えません。
一方、NYダウを見ると、一応下げ止まってはいます。
○NYダウ
一目均衡表の雲に差し掛かっているため、水色の基準線が赤茶色の転換線を抜け、さらに雲まで抜けてしまうと、おそらくトレンド転換したという判定にはなるでしょう。
その時が買戻しのタイミングですが、今のところ、ポジティブシナリオでは、雲抜けせずに反転上昇、★印の水準で上値を抑えられ、急落と考えています。
ヨーロッパの株式市場を含めて考えると、似たような動きになっていますが、あとは我慢比べでしょうね。
テクニカル的には、結局、「つれ安」がどこまで継続するかに焦点が移ってきていますが、EU諸国の方が下げ幅が深くなっています。
この点を考えると、コロナ第3波の経済的な影響も重なっているだろうと推測できますが、買い勢力と売り勢力の我慢比べ。
我慢できなければショートポジション(売り)が勝ち、我慢できればロングポジション(買い)が再び巻き返す。
長い目で見れば買いなんでしょうけど、今後は、やはり金融緩和の副作用がどう出てくるかと、金融緩和がどのように解除されていくか、この2つには注目する必要があるでしょう。