「米金利引き上げ」に見るマーケットの大局観
今回(2017年3月15日)のFOMC(Federal Open Market Committee:米連邦公開市場委員会)。
かなりの注目度がありましたが、結果は以下のとおりです。
FF金利(Federal funds rate:フェデラル・ファンド・金利)
誘導目標 年0.50%~0.75% ⇒ 年0.75%~1.00% に引き上げ
あまり馴染みの薄い人にとってはチンプンカンプンかもしれませんが、確定拠出年金やNISAなどで資産運用をしている人にとっては必要不可欠な情報のひとつと言えます。
金利には大きく分けてふたつあり、ひとつが「短期金利」、もうひとつが「長期金利」というものです。
“短期”金利は「期間の短い金利」、“長期”金利は「期間の長い金利」のことですが、前者が「国の政策金利」、後者が「国債の利回り」を指します。
今回のニュースのように「どこどこの国が金利を上げました~」という報道は、国の政策金利=短期金利が引き上げられたことを意味しています。
この手のニュースを読むときは、次の点を考えてみましょう。
- なぜ、金利を引き上げたのか
- これから景気がどうなるのか
今回のFFレート引き上げでいうと、
〔なぜ、金利を引き上げたのか〕
・アメリカの景気が少しずつ良くなり、安定してきているから。
・良くなりつつある実体経済に冷や水を浴びせかねない株式市場の過熱感を抑えるため。
〔これから景気がどうなるのか〕
・雇用や賃金、物価、消費など実体経済を映し出す指標が少しずつ改善し、今後、安定的な経済成長が見込める。
というようにまとめられるかもしれません。
一般的には、金利の引き上げは景気に過熱感があるときに行うように捉えられがちですが、中央銀行の主な役割は「物価の安定」=「安定的な経済成長」を図ることにあります。
そのために金利の操作を行いますが、今回のように実体経済にまったく過熱感がなくても金利を引き上げることが間々あります。
金利を操作する目的は、実体経済(=家計や企業などが行う日常的な経済活動)を安定させることなので、今のように資産市場(=株式や為替などのマーケット)が一方的に過熱しているような局面では、これ自体が実体経済を不安定にさせるリスク要因になります。
このリスクを軽減させるために利上げに踏み切ったというのが、今回のFOMCです。
マーケットではよく「織り込み」という表現がされます。
前もって認識しているという意味ですが、この利上げについても事前から散々予測され、金利が引き上げられることを前提に株式や為替(ドル)が買われていました。
これにともない、株高・ドル高の流れが定着していましたが、この勢いが強すぎたため、マネーの力(資産市場の動き)による実体経済への悪影響を今のうちに少しだけ削ぐことにしたんだと思います。
別の表現をすると、FRBはトランプ新政権の経済政策を相当警戒しているとも言えます。
結果はどうだったのでしょうか。
昨日の米株式市場では、NYダウが前日比112.73ドル高の20950.10ドル。
今朝の国内為替市場では、前日17:00時点に比べ1円31銭円高の1ドル=113円38銭~41銭。
アメリカの株式市場ではプラスに受け止められ、日本の為替市場ではマイナスに受け止められたようです。
この違いはなんでしょうか。
〔アメリカの株式市場〕
「年内、あと2回の利上げ」⇒「景気が良くなる」⇒「株買い」
つまり、実体経済が安定的に推移しだしていることが公にされたことで安心感が広がり、トランプ大統領の経済政策の効果に株式市場の関心が移った。
〔日本の為替市場〕
ドル買いはいったんお休み。
とりあえず円を買い戻してから、日米の金利差が広がることを期待し、あとでまたドルを買おうという発想。
こうみると、日本の方が慎重なようですが、いずれにせよ、アメリカでも日本でも「金利先高観」が持たれているようで、今後は「金利高」・「ドル高」・「株高」の動きになるように思われます。
ただ、警戒はしましょう。
FRBのイエレン議長は慎重にマーケットを見ています。
特に、トランプ新大統領決定後の米株式市場の一方的な上昇傾向を。
アメリカの株式にはすでに割高感があります。
一方、日本の株式は出遅れていて、まだある程度安心して上げる余地が残されています。
日本の株式市場がアメリカの株式市場の動きに引っ張られて上昇のスピードが早まり、一定の水準に達したとき、そのあと、株価はどうなるのか。
上放れるのか、それとも反転するのか・・・。
すでにマーケットはここに注目しているので、資産運用をされている方は十分気をつけてくださいね。