FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

これからの時代、変わりゆく常識を少しだけ早くキャッチし、人生に活かしてみる。

菅さんが総理大臣になったら、FP事務所としては、所得格差の是正の抜本的な解決を期待します。そうしないと、将来、結構やばいと思うよ?

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 菅新政権誕生に向けて、やはり考えておきたいことは経済政策の行方です。

 なぜなら、家計にどのような影響を及ぼすかを探っておく必要があるからです。

 菅政権になった後のことを考える際は、安倍政権の経済政策であるアベノミクスと比較しながら考えていくと見えやすくなるのではないでしょうか。

 

①金融政策

 第1次アベノミクスの頃の金融緩和政策は評価ができます。なぜならば、リーマンショック後、デフレ脱却に向けた力強いメッセージ性があったからです。

 しかし、その後、デフレ脱却が難しく、2016年からマイナス金利政策を始めるようになりました。この結果、過度な不動産市場へのマネーの流入と金融機関、特に地銀の経営体力の悪化が指摘されています。

 要するに、本来の金融緩和政策の趣旨が歪んでしまい、実体経済に期待通りにお金が行き渡らなくなりました。

 そして、2018年、安倍政権下の景気回復が終わり、コロナショックにより本格的に景気が後退していくことになります。

 ここで打ち出されたのがリーマンショック後の金融緩和をはるかにしのぐ大規模金融緩和政策です。これについては現在進行中ですが、この点で、最終的に安倍政権下での金融政策を〇としています。

 

②財政政策

 第1次アベノミクスにおいては、金融緩和と並び財政政策も実施されました。

 しかし、第2次アベノミクスになると、財政政策は抑制され、また、2014年4月と2019年10月に2度の消費税率引き上げを実行してしまったため、結果としてデフレから脱却できず、国内景気は低調に終わりました。

 その後、コロナショックによる景気の大幅な減速で大規模な財政出動を実施しましたが、この点も含め財政再策は△と評価しています。

 

 おおよそ、経済政策の2つの柱である金融政策と財政再策は、結果的には、当初期待していたようにはなりませんでした。

 このため、菅政権が誕生した後も似たような傾向になるだろうと考えています。

 

 それでは雇用はどうでしょうか。

③雇用

 経済政策の目的は物価と雇用の安定です。

 アベノミクスでは、よく言われることですが、雇用が増加し、同時に失業率が低下しました。

 この点で評価はできます。

 ただ、問題は、雇用が増加した要因ですが、単純に「人手不足」と「非正規労働者の増加」です。

 ここにしっかりと切り込めなかったという意味で、評価を△にしています。

 菅さんは、国民生活を重視するようなことを言っています。

 国民生活の改善は、所得については賃金の増加が直結しますが、すでに多くの方が気付いているようにお金だけの問題ではありません。

 例えば、女性の就労ひとつ取っても、子育てしながら働くことを選んでいる女性はたくさんいます。安倍政権では、これをもって雇用が回復したなどと認識していますが、実体は、その多くが非正規労働者であるため、就労(待遇)と子育て・家事と賃金の3つのバランスを組み替えることが必要です。

 ここで重要なのが時間の確保と待遇ですが、直接的にいうと、正社員という待遇を維持しながら労働時間を子育て世帯に合わせて調整できるようにすることです。

 おそらく、これについては菅政権になっても大きく改善できないと思われますが、形式的な働き方改革(残業規制・有給休暇の取得義務化・同一労働同一賃金制度など)ではなく、時間の確保と正社員待遇に向けたライフスタイルを中心とした改善策が講じられるよう積極的にムードを作ってもらえればと思います。

 

 次は消費について考えましょう。

④消費

 アベノミクスでは、総括してしまうと、家計消費は期待する程伸びませんでした。

 この原因は、いわずもがな2度の消費税の増税ですが、それ以前に、老後に対する不安から消費性向以上に貯蓄性向が高まってしまっていることが大きな背景としてあげられます。

 要するに、老後が不安だから必要以上にお金は使わないよねということですが、菅政権では落ち込んだ消費をまず回復することから始め、ある程度回復してきたら、その後、どのように消費喚起を行うかという消費刺激策が注目されることになるでしょう。

 ただ、コロナショックの衝撃があまりにも大きかったため、今後も貯蓄性向が高まることが予測されます。

 事ここに及んでも老後に対する不安が軽減されないならば、おそらく、消費性向の高まりはあまり期待できないのではないでしょうか。

 では、携帯電話料金の値下げについてはどうなのかというと、一定の効果は認められるとは思います。しかし、消費税率が10%に引き上げられる前に見直しをしたという方もいるため、その効果がどこまで広がるかは不透明です。

 FP実務的には、携帯電話料金の見直しは、確かに家計面での効果はそれなりあるとはいえますが、例えば、月1万円の利用料金が4,000円、3,000円になったということですので、ある程度の効果は認められるだろうと考えています。

 ただ、景気が大幅に悪化している状況を鑑みて、国として国民の家計に対しより効果が高いことは消費税の減税であるため、家計の仕組みを知るFPとしては、どうしても焼け石に水と言わざるを得ません。

 

 もうひとつ社会保障制度についての方向性についても見ておきます。

社会保障制度

 社会保障制度は、大きなくくりでいうと、年金・介護・医療・子育て・雇用といったところです。

 年金制度の改正については、現行の年金制度の維持を図ろうとするため、傾向としては「保険料の増加」、「受給額の引下げ」、「受給年齢の引き上げ」の3つを前提として考えておく必要があります。

 安倍政権では実際にこれら3つを行っているため、菅政権でもこのような路線で年金制度については継続されていくでしょう。

 介護については、改正されるごとに介護保険料が引き上げられていますが、超高齢化社会を見越し、老人ホームなどの施設介護よりも在宅介護やデイサービスの利用が推奨されているため、菅政権の下でもこの流れは変わらないでしょう。

 医療については、こちらも超高齢化社会が深まる中で健康保険料の増加と給付内容の減額などが予測されています。菅政権になってもこの流れには変化がないと思われます。

 子育て支援ですが、これについては少子化対策をどうするかと直結してきます。

 ここの具体性が国民生活に寄り添うことでもあるため、具体策が出てこなければ何とも言えません。

 ただ、幼保無償化と高等教育の無償化は安倍政権下で実施されているため、菅政権下でこれにプラスαで何が出てくるかが注目されます。

 雇用については、前述のとおりです。

 

 最後に地方創生でしょうか。

⑥地方創生

 地方創生については、多角的な項目が挙げられますが、内容を経済に絞ると、中小企業支援と地方の雇用の確保となるでしょう。

 アベノミクスでは、これらについて積極的に実施していました。

 中小企業の経営支援策は大げさに言うならば過度な補助金助成金ともいえるほどですが、結果的に中小企業の事業を上向かせた実績も多々あります。

 菅政権でもこれらは引き継がれると思いますが、コロナ禍、コロナ後において、さらなる中小企業支援がどうなるかが注目されるポイントでしょう。

 また、地方の雇用については、人手不足がかなり激しいため、都市部に比べると雇用の改善は大きいように思われます。

 ただし、やはり非正規労働者の増加が指摘されるため、理想を言うならば、地方で活躍する事業者が人手不足の受け皿として正規労働者を雇うことができるぐらいの地方経済の回復まで持っていってもらえると心強く感じます。

 めちゃめちゃ難しいと思いますが・・・。

 

 といことで、菅内閣誕生については、おそらく序盤は期待値が高まるでしょう。

 しかし、菅さんが、安倍政権とは違い国民目線で国民の生活を本当に考えるようなら、本当の意味で期待は持続されると思います。

 個人的には、所得の格差、特に中間層の回復が最も重要な政策課題のように思えますが、ここにしっかりと切り込んでいってもらえるかどうかに注目しています。

 

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