トランプ政権の為替政策と1970年以降生まれのこれからの為替相場。
確定拠出年金制度(日本版401k)をやっている人も、NISA(少額投資非課税制度)をやっている人も、外貨建ての個人年金保険や死亡保険に入っている人も、避けて通れないのが為替の動き。
今、為替を巡る体制が大きく変わろうとしています。
以前、このブログでもトランプ氏が大統領に就任したらマーケットはどうなるかということを取り上げました。
fp-office-kaientai.hatenablog.com
トランプさんは、他国との貿易不均衡を是正するために為替政策を変更する。
日本円との関係は
円高・ドル安
最近注目されている内容は、次のような記事です。
簡単に説明すると、
ドルが強すぎる。
是正しろ!
かなり雑ですが、要約するとこうなります。
トランプさんって、就任してから、選挙中に言ってたことが結構実現できてないみたいで、少しお困りのご様子。
最も声を大にして言っていたことが、国内の労働者に奪われた仕事を取り戻すために貿易政策を見直すことだったので、ここ最近は、いよいよ「為替」についてより強い態度を示しています。
新プラザ合意だっ!
1985年、過度なドル高を是正しようと、アメリカの呼びかけでニューヨークのプラザホテルに、先進5カ国(日・米・英・独・仏)の大蔵大臣と中央銀行の総裁が集まり、会議を開きました。
この会議では、こんなことが決まりました。
基軸通貨であるドルに対して、参加各国の通貨を一律10%~12%幅で切り上げ、そのための方法として参加各国は外国為替市場で協調介入を行う。
先進5カ国との間で交わされたこの合意を「プラザ合意」と言います。
結果は、言わずと知れた「円高・ドル安」。
主なターゲットは日本だったんですが、一応、アメリカの目的は達成された形になりました。
国際協調という合意を取り付け、為替市場の安定を図る名目で、自国に有利な為替政策を実施する。
これを再びやろうとしているのが、トランプ大統領です。
さて、この考え、アメリカ側からしてみればしっかりした根拠はあります。
このチャートは「実質実効為替レート」と呼ばれるものです。
実質実効為替レートは、“各国の為替の力関係”を純粋に見るためのもので、私たちが普段目にする為替レートとは少し意味が違います。
赤のラインが「日本円」、緑のラインが「米ドル」です。
まず、日本円を中心に見てみましょう。
上に行くと「円高」、下に行くと「円安」です。
米ドルの場合も同じく、上に行くと「ドル高」、下に行くと「ドル安」です。
ここ近年における日米の為替の力関係は、
円安・ドル高
となります。
しかも、圧倒的な円安・ドル高です。
通常の日米の為替レートはこんな感じで推移しています。
アベノミクスで円安誘導政策を行っているため、こちらも基本的には「円安・ドル高」となっています。
でも、今の為替はおおよそ1ドル=110円前後をウロチョロ。
日本経済にとっては、ここら辺の水準は、必ずしも十分な円安とは言えません。
だいたい120円台が良い頃合いと思います。
日銀の黒田総裁は、1ドル=124円~125円を天井にする「黒田シーリング」と呼ばれるレート設定を行い、かつて口先介入を行いました。
こういうことも考えると、今の水準はどちらかといえば、日本にとっては円高気味と言えます。
実質実効為替レートでは
円安・ドル高
通常の為替レートでは
円高・ドル安
アメリカは前者を根拠に「ドル高を是正しろ!」と言い、日本は後者を根拠に「いやいや、まだそこまで円安ではない、むしろ円高だ」と言います。
為替介入って国際協調なんですよね。
これまでの歴史を振り返ると、各国が足並みをそろえて為替介入を行うのは稀なことです。
でも、ある一国の力と国際社会のバランスがピタッと一致したとき、奇跡的にプラザ合意のような国際協調が生まれます。
今すぐにではないにしても、世界経済の安定が声高に叫ばれている状況を見ると、地政学的リスクの高まりも含め、「新プラザ合意」なるものが実現される可能性はあります。
これについては、
①ロシアを落ち着かせるため
②中国に北朝鮮への対応を合意させるため
このふたつが外交的な要素としては大きそうです。
私たちが考えておくべきことは、これから「円安なのか」、それとも「円高なのか」ということです。
別の見方をすると、株高なのか、株安なのか、景気が良くなるのか、悪くなるのかということになります。
もう一度、冒頭の「ドル・円チャート」を見てみましょう。
通常の日米の為替レートなので、見方は、上に行くと「円安・ドル高」、下に行くと「円高・ドル安」です。
「これはドルのチャートだ」と考えると、わかりやすいと思います。
単純に、上に行くと「ドル高」、下に行くと「ドル安」になるので。
個人的な見立ては以下のとおりです。
①目先は「円高・ドル安」
②その後、少し経つと「円安・ドル高」
③その後は反転し、大局としてのトレンドは「円高・ドル安」
アメリカの株式や日本の株式、ロンドンの金相場など、他の指標も含め総合的にチャートを眺めていると、このような結論にいたります。
こう考えると、新プラザ合意なるものは、もう少し後のお話になるかもしれません。
ただ、年内の為替転換(長期的なトレンド転換)はあり得るので、もうそろそろアベノミクス効果は終わりかなとも思います。
安倍政権の金融緩和策はもうおおよそ答えが見えてしまいました。
トランプフィーバーと呼ばれるご祝儀相場も、もうそろそろ終わり。
最後の上昇相場が訪れる可能性を見ていますが、その後は、
世界経済の安定を目指した「国際協調路線」
が来て、結果、マーケットのトレンドは大きく転換するも、各国の経済的な力関係が均されていく。
本当の意味でアメリカ一国覇権主義の時代が終わり、経済力が平準化された後の各国の力関係が次の時代をどう形作っていくのか。
1970年以降生まれの私たちの老後は、次の時代、つまり、マーケットの大転換を経験して、その先の世界情勢の中にあるような気がします。
家計と世界経済は直接的には関わっていませんが、間接的に、“風が吹けば桶屋が儲かる”的に成り立っているので、今、巷で流れている報道はかなり注目して見ていく必要があるのかもしれません。