ピケティのおかげで、日本の経済政策の方向性がはっきりした。
前回は、フランスの経済学者、トマ・ピケティの著書『21世紀の資本』を参考に、格差社会を生き抜くためのライフプランの考え方をお伝えしました。
fp-office-kaientai.hatenablog.com
その中で、経済成長率という言葉が出てきましたが、そもそも日本は、今後、経済成長していくのでしょうか。
これは、経済が良くなるのか、悪くなるのかという景気についての問いではなく、国力そのものがどうなっていくのかという問いです。
どうなんでしょうね。
神様ではないので、そんなのわかりようがありません。
でも、ちょっと考えておきたいことでもあります。
長期的に見て、この国の経済はどのように成長していくのか。
経済成長率(g)=人口増加率+労働生産性上昇率
「経済成長率」は、「人口の増加率」と「労働生産性の上昇率」の和です。
人口が増加し、働き手が増えると同時に、技術革新などで効率的にモノやサービスを生みだすことができると、経済はより成長しやすくなります。
経済成長率とは、経済がどれだけ伸びたかを示す割合ですが、一般的には前年と比べた経済成長の増減率のことを指します。
長い歴史の中では、文明が進歩するにつれ経済は成長し続けますが、毎年の成長率で見ると上昇するときもあれば、下落するときもあります。
上のグラフは、日本の経済成長率の推移を表したものですが、戦後のこの国の経済成長スパンを3つに分けて示しています。
①1956年度~1973年度:平均9.1%
②1974年度~1990年度:平均4.2%
③1991年度~2012年度:平均0.9%
原則的に、プラスとマイナスのすべての経済成長率の歴史的な積み上げが文明の進歩なので、日本も他の国に漏れず国力が増大しているといえます。
ただ、注目しておきたいのは、「成長率が鈍化している」ということです。
経済成長率(g)=人口増加率+労働生産性上昇率
この式をもとに成長率が鈍化するパターンを考えてみます。
パターン①:人口の増加+生産性の低下
パターン②:人口の減少+生産性の向上
パターン③:人口の減少+生産性の低下
この3つが考えられます。
1974年度~1990年度においては、人口(生産年齢人口:15歳~64歳まで)は増加しているので、1956年度~1973年度と比べ経済成長率が低下している理由は生産性の低下と指摘できます。
つまり、パターン①の「人口の増加+生産性の低下」です。
1991年度~2012年度においては、人口の減少が起こっているため、生産性の向上・低下にかかわらず、経済成長率は鈍化しています。
この場合、パターン②の「人口の減少+生産性の向上」と、パターン③の「人口の減少+生産性の低下」のいずれかが経済成長率が鈍化した原因といえます。
経済成長率を上げるために、アベノミクスでは積極的な経済政策を打ち出しています。
「人口増加率の上昇」
・晩婚化対策
・地方創生など
「労働生産性の上昇」
・働き方改革(ワークライフバランスの推奨)
・IT投資の導入促進
・教育改革
・女性の活躍支援など
冒頭の問いに戻ります。
この国は今後、本当に経済成長していくのか。
経済が成長するパターンは3つです。
パターン①:人口の増加+生産性の向上
パターン②:人口の増加+生産性の低下
パターン③:人口の減少+生産性の向上
傍から見ているとアベノミクスは、本心では人口の減少を受け入れつつも、労働生産性を向上させることで経済成長率の極端な鈍化を防ごうとしているように映ります。
現実的には、パターン③の「人口の減少+生産性の向上」しか手の打ちようがないということなんでしょう。
それでは、パターン③:「人口の減少+生産性の向上」の経済成長策のもとで人々の価値観はどのように変化していくのか。
個人的に気になっている点はこの点です。
この国の人々の哲学や倫理観がどのように変化していくのか。
政治への関心が薄くなっているこの国の場合、間接民主制を採用しているため、政治への参加は、直接民主制を採用している国に比べ、なおさら消極的になりやすい傾向があります。
このような中、人々の考えていること=哲学や生きるうえでの価値観を国がどのように吸い上げていくのか、つまり、国の政策に民意がしっかりと反映されるのか、この点を大きなポイントと捉えています。
政治面では、今まで以上に民主主義のあり方が問われる時代になると思います。
この国の経済の成長、つまり、国民の暮らしや生活面から、1970年以降生まれの私たちはしっかりと未来について語ることができる国民になる必要があるのかもしれません。
自分の人生は人に委ねるな。
ピケティから、そんな言葉を投げかけられているように思いました。