そうだったのか!奨学金。新しく創設された「給付奨学金」制度。
先日、神保町の日本教育会館でファイナンシャル・プランナー(FP)を対象にした「奨学金」についての講習を受けてきました。
文科省の事業として、独立行政法人日本学生支援機構がNPO法人日本FP協会と協力し、これから、全国の高校を対象に、要請を受けた場合、奨学金のアドバイザーとしてFPが派遣されることになります。
なんか、この仕事をしていると、時代の移り変わりを早く感じる時があります。
前回の空き家問題解決に向けた国交省の事業もそうでしたが、今回の奨学金についても国の機関と協力し問題の解決を図ることになります。
今、国は、「ニッポン一億総活躍プラン」の中で、「すべての子供が希望する教育を受けられる環境を整える」ことを目的に、新しい奨学金制度を創設し、教育面からも人への投資を積極的に行おうとしています。
親の経済的な事情により子どもたちが大学への進学を諦めるケースや、大学を卒業し奨学金を返還することができない若者が増えていることが社会的な問題として指摘されています。
ファイナンシャル・プランナー(FP)がこのような問題を解決する役割を担うことは、これからの日本にとって有益なことと言えるでしょう。
さて、今回は、71年ぶりに大改正された「国の奨学金制度」についてお伝えしていきたいと思います。
奨学金とは、そもそも何なのか。
おそらく一般的には、奨学金=「大学に行くために”借りる”お金」といったイメージだと思います。
でも、これだと「国の教育ローン」や「銀行などの教育ローン」と同じになっちゃいますよね。
何が違うのでしょうか。
たとえば、銀行など教育ローンの場合、お金を借りたら元本に利息をつけて返済していきます。
つまり、お金を返す目的は、お金を貸してくれたことへの対価の支払いです。
奨学金の場合も、お金を借りたら元本に利息をつけて返していきます。
でも、お金を返す目的は、次の世代の子どもたちが、経済的な事情を気にせず教育を受けられるようにするためなんですね。
つまり、利息は次世代の子どもたちのために使われます。
だから、奨学金では、お金を返すことを「返済」とは言わずに「返還」と言います。
利息を活用し、子供たちの教育の機会を循環させるという意味で「返還」なんですね。
〇教育ローン:お金を返すこと=「返済」
〇奨学金:お金を返すこと=「返還」
概念的な話ですが、ここが奨学金の最大のポイントなので覚えておいてくださいね。
奨学金は、大学などへの学費を国(独立行政法人日本学生支援機構)から借り、原則として卒業後に返還するものでした。
これを「貸与奨学金」といいます。
貸与奨学金は、大きく分けて2種類あります。
〇第一種奨学金:無利息
〇第二種奨学金:利息が付く
※一時金として)入学時特別増額貸与奨学金:利息が付く
第一種奨学金は「無利息」です。
つまり、卒業したら返還してもらう必要がありますが、利息は返還しなくていいというのが第一種奨学金です。
どうしてなのかというと、対象者が「特に優れた学生等で経済的理由により著しく修学困難な人」となっているからです。
すごく頭が良くて大学に行きたいんだけど、経済的にとても難しいという学生です。
一方、第二種奨学金には利息が付きます。
もちろん在学中は無利息ですが、卒業したら利息を付けて返還する必要があります。
対象者は「優れた学生等で経済的理由により修学困難な人」ということで、第一種奨学金よりも基準が少し緩やかになっています。
これに加え、大学などに入学したときに一時金として貸与される「入学時特別増額貸与奨学金」があります。
入学時特別増額貸与奨学金は、入学金を準備するためのものではなく、入学した月の貸与奨学金に上乗せされる一時金なので、注意してくださいね。
つまり、単独では申し込みできず、第一種もしくは第二種とあわせて申し込みをする必要があります。
こちらも第二種奨学金と同様、在学中は無利息ですが、卒業後は、原則、利息を付けて返還する必要があります。
対象者は、「国の教育ローンに申し込んだが、利用できなかった世帯の学生」です。
申込時の家計収入が一定額以下の人といった要件があります。
それでは、いくらぐらい借りることができるのでしょうか。
進学先によって若干異なるため、4年制大学の場合で見ていきます
〇第一種奨学金
〔国公立大〕
自宅通学) 月額2万・3万・4.5万円から選択
自宅外通学)月額2万・3万・4万・5.1万円から選択
〔私立大学〕
自宅通学) 月額2万・3万・4万・5.4万円から選択
自宅外通学)月額2万・3万・4万・5万・6.4万円から選択
〇第二種奨学金
国公立・私立に関係なく、月額3万・5万・8万・10万・12万円から選べます。
〇入学時特別増額貸与奨学金
国公立・私立に関係なく、1回のみの貸与額10万・20万・30万・40万・50万円から選択
貸与奨学金は、大学などの卒業後に、原則、返還することになるため、あらかじめ返還計画を立てておく必要があります。
卒業して就職し、毎月いくらぐらいのお給料をもらって、その中から、毎月いくらぐらい返還していこうといった計画です。
おおよそのイメージはしておくようにしましょう。
次に、新しく創設された「給付奨学金」について説明していきます。
給付奨学金は、貸与奨学金と違い、原則、返還する必要のないものです。
このため、もちろん利息もありません。
〇給付奨学金:原則、返還する必要がない。
「どうして、くれちゃうの?」と思うかもしれません。
貸与奨学金との最大の違いは「推薦」にあります。
申し込みができる対象は「住民税非課税世帯の生徒・生活保護世帯の生徒、社会的養護を必要とする生徒」となっています。
このうち、日本学生支援機構が提示した「ガイドライン」にもとづき、各学校において推薦基準が策定され、日本学生支援機構の示す推薦枠の範囲内で各学校が推薦します。
ガイドラインには、人物・健康・学力・資質・家計といった5つの項目があり、条件に合致して、学校から推薦が出されないと給付奨学金は受けられません。
でも、申し込みが受け付けられると、奨学金を返還する必要はありません。
それでは、いくらぐらい給付奨学金が受けられるのか見ていきましょう。
こちらは、貸与奨学金と異なり、4年制大学・短期大学・高等専門学校・専修学校にかかわらず共通です。
〇国立
自宅通学:月額2万円
自宅外通学:月額3万円
〇公立
自宅通学:月額2万円
自宅外通学:月額3万円
〇私立
自宅通学:月額3万円
自宅外通学:月額4万円
ただし、注意が必要なのは、返還する必要はないといえども、「入学後、学業成績が著しく不振」、「停学等の学校処分を受けた」場合は、返還を求められることがあります。
今回の改正は、歴史上の大改正と言われています。
その理由は、給付奨学金が創設されたことにあります。
他にも、いろいろ改正されているポイントはありますが、今回は、イメージを膨らませてもらうために基本的なことをお伝えしました。
詳しく知りたいという方は、「独立行政法人日本学生支援機構」をご覧ください。
漫才師のU字工事さんが、わかりやすく動画で紹介しています(そうだったのか!奨学金)。
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