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中小企業200万円・個人事業主100万円。「持続化給付金」って、なんで税金かかるの?

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 いよいよ申請の受付が始まった「持続化給付金」ですが、中小企業や個人事業主がそれぞれ200万円・100万円を上限にもらえるって例のやつです。

 幣事務所では税理士と協力し地元企業の相談対応をさせていただいておりますが、その中で税務処理の話になりました。

 中小企業や個人事業を行っている事業者にとって、持続化給付金は、ついもらう方に目が行きやすいため、「これって、税金、どうなるの?」ってところまでは頭が回らないかもしれません。

 しかし、この意味がわかると、持続化給付金の本質が少し見えてきます。

 家計でも、経営でも、お金の流れがどうなっているかを頭の中でイメージできていると、イザというときの判断がスピーディーになります。

 わかりやすくするために、お金の流れを家計に置き換えて見ていきましょう。

〇家計簿と資産表における「持続化給付金」の位置づけ

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 左側がいわゆる「家計簿」、右側が「資産表」です。

 家計簿には、収入と支出、収入から支出を差し引いた純利益があり、資産表には、資産と負債、その差額である純資産があります。

 持続化給付金は入ってくるお金なのでもちろん収入になりますが、いくつもある収入項目のうち「雑収入」に該当します。

 そして、支出が同じなら、単純に持続化給付金が入ってきたことにより、純利益が増えることになります。

 この純利益に対して税金がかかるという流れです。

 ここで「なんで税金がかかるの?」って思いますよね。

 経産省によると、事業活動を支援することが目的だからって理由ですが、事業活動の直接的な目的は収益を得ることであるため、企業会計上は「益金」に組み込むという理屈です。

 これとは対照的に、1人当たり10万円が給付される「特別定額給付金」は、生活を支援することが目的、つまり、福祉の意味合いがあるため、非課税なんですね。

 

 それでは、会社の帳簿内で、持続化給付金の位置づけを確認していきましょう。

損益計算書貸借対照表における「持続化給付金」の位置づけ

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 企業会計においては、家計簿に当たるのが「損益計算書(P/L)」、資産表に当たるのが「貸借対照表(B/S)」です。

 損益計算書では、収入・支出・純利益がそれぞれ、「益金」と「損金」、そして、その差額である「当期純利益」と表現されます。

 貸借対照表では、おおまかにいうと、家計における資産表と同じと思ってください。

 事業者にとって、帳簿の構造はパっとイメージしにくいかもしれませんが、会社の利益がどのように計算されているかがわかれば十分です。

①売上高-売上原価=「売上総利益

売上総利益-販売費および一般管理費=「営業利益」

 このふたつが本業における利益ですね。

 売上総利益は、一般的に「粗利」と呼ばれますが、実際の売上から仕入である売上原価を差し引いたものです。

 また、販売費および一般管理費は「販管費」なんて呼ばれますが、売上総利益から販管費を引いたものが営業利益になります。

 この営業利益が、普段行っている商売からの純粋な利益ということですね。

③営業利益-(営業外収益-営業外費用)=「経常利益」

 営業外収益や営業外費用は、文字通り「営業外」、つまり、本業以外で発生した収益や費用をいいます。

 営業外収益には、例えば、利息や配当金などの受取金が含まれ、また営業外費用には、利息の支払いや為替差損などがあります。

 営業外収益や営業外費用は本業にかかわるものではありませんが、事業を行ううえで発生するものではあるため、ここまで含めた利益を「経常」的なものという意味で普段から捉えておく必要があります。

④経常利益-(特別利益-特別損失)=「税引前当期純利益

税引前当期純利益法人税・住民税・事業税など=「当期純利益

 仮に、特別な利益や損失がある場合は、経常利益からそれらを差し引くことで税引前の当期純利益が求められ、そこから実際に納める税金を控除し、当期純利益が計算されます。

 

 持続化給付金は課税の対象になる収入です。

損益計算書貸借対照表における「持続化給付金」の位置づけ

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 売上総利益や営業利益の計算過程では表れませんが、経常利益を求める際に営業外収益として出てきます。

 この営業外収益は、持続化給付金の場合、「雑収入」に該当し、経常利益は増えることになります。

 このようなことから、結果として利益が出ると税金が発生するため、持続化給付金は課税対象であるとされています。

 

 でも、この制度は、売上が前年同月比50%以下の中小企業や個人事業主が対象となっているため、通常、当期純利益は赤字になりますよね。

 例外的に、売上が50%以上減っても、もともと経費が少ないため、赤字にならずに済むような会社もありますが、そういう会社は、一応、持続化給付金は課税対象であるってことは知っておく必要があります。

 

 個人的には、中小企業や個人事業主ができるだけ早く窮地から脱出することを主眼に置くなら、持続化給付金を課税対象にするのではなく、非課税にして、回復した後で、単純に税収増に結び付ければいいだけの話のような気がしますが、制度の趣旨が事業収益の補てんとなってしまっているためズレているような気がしています。

 ないよりはマシですが、制度の根本に「税金はなるべく出したくない」というバイアスがかかっているため、こんな中途半端な仕組みになってしまったんだろうと自分で自分を納得させています。

 日本経済が地盤沈下したら、税収は減っちゃうのにね。

 

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