どうして活用しないの? 国の行う「経営者・個人事業主・フリーランス向け退職金・年金制度」
FP事務所の主だった業務のひとつに「お金の流れを組み換え、貯まる仕組みを整える」というのがあります。
これを実現するために切っても切り離せないのが国の制度。
国の制度をしっかり活用すると、効率的にお金が貯まりやすくなります。
〇今回の記事の目的
事業主向けの退職金や年金の準備方法を知る。
〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル
〔貯蓄・資産運用〕
◦事業主向け退職金・年金の準備
◦小規模企業共済
〇記事の概要
Ⅰ.小規模企業共済は、国の行う退職金・年金制度
Ⅱ.小規模企業共済の特徴は?
Ⅲ.最後に
Ⅰ.小規模企業共済は、国の行う退職金・年金制度
今回のお話は、会社の経営者や個人事業主、フリーランスの方向けに準備されている「小規模企業共済制度」です。
〇小規模企業共済とは
事業主のために用意されている、国の退職金・年金準備制度
これ、不思議なんですけど、意外と存在すら知らないという人が多いんです。
国としては、商工会議所や商工会などを通じかなりアナウンスしてると思うんですが、実務的な感覚としてはそれほど認知度は高くないと感じています。
どちらかというと、退職金や年金は、民間の保険会社が提供している貯蓄性の保険で準備するから必要性を感じていないということなんでしょう。
でも、これって、今どき逆なんですよね。
金融緩和政策のもと、金利は低水準で推移しています。
特に2016年から続いているマイナス金利政策のもとでは、保険会社の提供している貯蓄性の保険もあまり利息が付いていません。
だからこそ、国の制度をきちんと活用するのが大切なんですが、実際はどうもそうなっていないのが現状のようです。
考え方としては、このように考えてみてください。
まずは「国の制度」
次に「民間の保険」
たとえば、病気やケガの保障は、国の制度として「健康保険制度」がありますよね。
これを補完するのが「民間の医療保険」という位置づけです。
これと同じく、事業主の退職金や年金では、まず「小規模企業共済制度」があって、その上乗せ保障という位置づけで「民間の貯蓄性保険」があるわけです。
Ⅱ.小規模企業共済の特徴
小規模企業共済の特徴は、何と言っても利回りの高さです。
条件)
◦加入者:個人事業主(40歳)
◦課税所得金額:600万円
◦加入期間:302か月
◦掛け金月額:10,000円
このような条件で利回りを試算してみましょう。
共済金には2種類あり、「共済金A」は亡くなられたり、廃業された場合の受取退職金、「共済金B」は老齢給付で、いわゆる年金として分割で受け取る場合の総額です。
小規模企業共済の掛け金は、「小規模企業共済等掛金控除」により全額を所得控除できます。
このため、節税効果が高いんですね。
これらをもとに試算した「実質返戻率」が、共済金Aでは「174%」、共済金Bでは「164%」となっています。
ということは、つまり、年率換算した実質利回りは以下のようになります。
共済金A:2.94% / 年
共済金B:2.54% / 年
この値を見ただけでも、お金が貯まりやすいのは一目瞭然ですよね。
今どき、民間の保険会社が提供している貯蓄性の保険でこの利回りを出せる商品はないと思います。
確かに外貨建ての保険は外国で運用されるため利回りが高めに設定されていますが、小規模企業共済は為替の変動リスクがなく、しかも国の行う制度なので、安全性が高いと言えます。
Ⅲ.最後に
FP事務所の主だった業務のひとつに「お金の流れを組み換え、貯まる仕組みを整える」というのがあります。
会社の経営者や個人事業主、フリーランスの方にとって、とても助かる退職金・年金制度が「小規模企業共済制度」です。
事業経営としては、これだけでもお金の流れをプラスに変えることができます。
お金の使い道はいろいろとありますが、お金を有利に活かすという点で考えると、やっぱり国の制度は優れものですね。