FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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ポジション・トーク。FRB議長発言とドル・円の行方。

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 さて、この人、誰でしょう。

 最近、経済関連のニュースで話題になっている人です。

 答えは、FRB(Federal Reserve Board:米連邦準備制度理事会)のイエレン議長。

 って言われたところで、なんとも思いませんよね。

 でも、この人が、今後の世界の金融政策に大きな影響をもたらすかもしれないんです。

 

 FRBとは、日本で言うと日銀のようなところです。

 今の日銀の総裁は黒田さんですよね。

 黒田バズーカという言葉で世間を賑わせました。

 お役目は、金融政策を通じ物価の安定を図ることです。

 金融とは金利の環境のことです。

 金利を上げたり、下げたりすることで物価をコントロールしていくことになります。

 その結果、経済の安定と成長につなげていきます。

 FRBのイエレン議長も同じような役目を担っています。

 アメリカの金融政策を通じて、物価の安定を図る話合いをするのがお仕事です。

 

 ポジション・トーク

 聞き慣れない言葉かもしれませんが、立場により話す内容が違うという意味です。

 これ、結構面白いので紹介しておきます。

 世の中、こう言う人、多いんじゃないでしょうか。

 たとえば政治家。

 所属する政党によって意見が異なることはわかります。

 もちろん、その人の政治信条によって考えが違うことも頷けます。

 でも、ある団体のために、さも利益誘導しているかのような発言、これってポジション・トークなんじゃないですか?

 

 実を言うと、資産運用の世界では、ポジション・トークが普通に行われています。

 前述したFRBのイエレン議長は、まさかそんなことは・・・と思ってしまいますが、どちらかというと反トランプサイドのため、トランプ大統領の政策がどのようなものなのかを見極めながら、アメリカの中央銀行であるFRB議長の職責を全うしようとしています。

jp.reuters.com

 前任のバーナンキ議長から交代するときはいささか不安の声もありましたが、イエレン体制になり、結構、慎重に言葉を選んでいて、個人的には信用に値すると思っています。

 今回の米下院金融サービス委員会では、

米経済は、向こう数年にわたり拡大を続け、金融当局は利上げ継続が可能になる

と発言しました。

 ちなみに下院は、日本でいうところの衆議院です。

 これについては、マーケットでは織り込み済みだったので、それほど大きな衝撃はありませんでした。

 また、同時に

当局として、低すぎるインフレ率を注視している

と付け加えています。

 この点については指標から判断するとなるほどという印象もありますが、逆にこれがあるためにFRBは積極的に利上げを行わないだろう、つまり、利上げのスピードは緩やかになるという安心感から、この日のNYダウは上昇しました。

 

 アメリカはここ最近、少しずつ利上げをしています。

 リーマンショックからの回復を受け、企業収益が改善し、雇用も拡大し、物価も安定してきています。

 しかし、イエレン議長の心配の種はインフレ率(物価の上昇率)がまだ低いよねということで、この状況で株式などの資産市場が高騰し続けると、実体経済に悪影響を及ぼすことになるため、プラスの発言とマイナスの発言を同時に発信し、マーケットの暴走を食い止めようとしています。

 だいたい中央銀行のトップは、どこの国もプラス・マイナス両面のことを言い、客観的な表現をするように努めますが、今回の発言は注目されていた分、上手いなという印象を受けます。

 

 これもポジション・トークですね。

 イエレン議長は、一国の金融政策を預かる責任ある立場です。 

 中央銀行の役割は、金利の環境を整え、物価の安定を図ることなので、金融市場の影響を受けやすい資産市場(株式市場など)と実物市場(私たちに身近な経済)の過度な生き違いを防ぐことにあります。

 資産市場の人たち(投資家など)はもっと株価が上がってほしい、実物市場の人たち(経営者や労働者、消費者)はもっと景気が良くなってほしいという、それぞれの思惑があります。

 その間に入り、イエレン議長はどちらにも気を配る発言をすることで、マーケットの急激な動きを抑制しました。

 

 さて、ここからが問題なんですが、FRBの方向性は、これまで引き受けや買い取りなどで積み上がっていた金融資産を市場に放出していく量をさらに増やすようになります。

 これは「量的緩和の縮小」と言いますが、その規模がどれぐらいになるのかでマーケットの反応が変わってくると見ています。

 その間、為替はドル・円でいうと、どちらかと言えば「円安・ドル高」方向で動き、ドルが買われやすくなるでしょう。

 

〔ドル・円レート〕*2017年7月13日時点

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 上値のメドはまだ計算していないので何とも言えませんが、パッと見、1ドル=125円を超えてくると考えています。

 1ドル=125円を目指す過程で、NYダウ日経平均株価指数ももう少し上昇していくかと思いますが、過熱感がもっと目立ち始めると、マーケットは乱高下を繰り返すようになるでしょう。

 その後は、トレンド転換が起こるのではないでしょうか。

 タイミングは、今年の秋以降から来年の前半にかけて。

 直近の変動要因は、

FRBの利上げがどうなるのか

ロシアゲート問題

アメリカの財政状況

北朝鮮の動き

⑤EUの一部の国の財政規律

などが挙げられます。

 安倍政権の行方ももちろんありますが、アメリカの金融政策が当面の注目事項なので、アベノミクスさえしっかりと前に進むならそれほど問題はないでしょう。

 ただ、来年12月の衆院選までの間で内閣支持率がさらに下がっていくと、少し円高圧力が高まる可能性はあるでしょう。

 ちなみにこれはポジション・トークではないですよ?

 ヘッジファンドではないので。

 あくまでもFP事務所としての見立てです。

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