老後の生活。1970年以降生まれの私たちは、敷かれたレールに乗るか、乗らないかをステレオタイプに考えない方がいい。
1970年以降生まれの私たちの老後。
ぶっちゃけ、どんなふうに考えていけばいいんでしょうね。
すでに政治的な方向性によって「老後までのレール」と「老後のレール」が敷かれてはいるんですが、そうはいっても、それはそれ、結局、個々人がどのような人生を歩んでいきたいかを軸に生活設計を組み立てていく必要があります。
一番やっちゃいけないことは、ステレオタイプなものの考え方ですよね。
だいたいみんなそうだから、自分もそうなるだろう・・・。
必ずしも100%間違いというわけではありませんが、ちょっと冷静に考えてみると、スタートが違えば、経路も違い、そしてゴールも違うため、ステレオタイプに考えてしまうと、結果、赤信号をみんなで渡るようなことになり、おそらく、それが最も危険な進路選択だったということになりかねないでしょう。
特にこれからは。
たとえば、学校を卒業して、企業に就職、転職はせず、結婚し、子どもが生まれ、土地付き一戸建てのマイホームを購入し、今、子どもは高校生と中学生といったご家庭は「一定の比率」いると思います。
でも、もう少し詳しく見ていくと、卒業した学校、就職した企業、結婚後の夫婦の就労状況、住宅ローンの金額、子どもの人数や進学過程など、多くの点で各ご家庭、ライフスタイルや家計状況が異なっています。
だから、一律に人生を考えることってそもそも無理な話で、なんとなくの傾向というか、国の制度設計や時代の流れをある程度想定し、我が家の場合、老後がどうなるかを考えていった方が有意義といえます。
1970年以降生まれの私たちに敷かれているレールは、おおよそ、こんな感じですかね。
〇40代・50代の賃金上昇率は、以前と比べ低くなるだろう。
〇おおよそ50歳になると、役職定年により給与が下がるだろう。
〇退職金は、以前と比べ下がるだろう。
〇60歳定年制から65歳定年制を採用する企業が増えるだろう。
〇定年後は70歳まで再就職などで働く人が増えるだろう。
〇公的年金の支給開始年齢がいずれ70歳に引き上げられるだろう。
〇年金受給後、働いた場合の在職老齢年金は廃止されるだろう。
〇少子化により、年金制度の支え手が減ることから、年金支給額は減額されるだろう。
〇結果、70歳以降も働く人が増えるだろう。
気分的に萎える。
こういった敷かれているレールに乗っかるのが自分としてどうなのかをまず考える必要がありますが、これらがいずれ高い可能性で現実化するというか、もうそうなっている部分もあるので、このような傾向は認識しておいた方がいいかもしれません。
ここからが思案のしどころですが、ここで重要なのが「我が家の場合はどうなのか」です。
敷かれているレールというのは、国や企業の制度設計にはこのような傾向があるという意味に過ぎません。
重要なのは、このレールに乗っからざるを得ない部分と、乗っからなくてもいい部分とがあるという視点で人生を眺めてみることです。
たとえば、収入。
賃金カーブが変更されているため、今は、どちらかというと、新卒の初任給を上げて、30代が終わるぐらいまでは賃金の伸びを維持しながら、40代・50代になると抑制するという仕組みを取り入れている企業が増えています。
企業における従業員の構成比率が変わっているのが原因ですよね。
30代という賃金上昇のトンネルを抜けると、そこには給与の伸びが低くなるという景色が広がっているわけですが、まず、このレールに乗っかるか、乗っからないか、または両方の選択です。
実際のご相談で副業をしているという方がいました。
メルカリで毎月10万円ぐらい副収入を得ているという方でした。
これもひとつの方法です。
敷かれたレールに乗りつつ、他のレールを自ら作り出すという作戦ですね。
一般的には共働きのご家庭が多い印象を受けますが、そのご家庭では、お子さんが小さいため奥さまはあえて働かず、ご主人のお給料だけが世帯収入になっており、このため、ご主人がもう少し収入を増やしておきたいということで始めたメルカリでした。
マイホームは二世帯住宅、もちろん住宅ローンの支払いもあるわけですが、世帯年収は、副収入を入れると約600万円というご家庭です。
二世帯住宅ということで、ご主人のお父さんとお母さんもひとつ屋根の下で一緒に住んでいるわけですが、実をいうと、ここも重要なポイントといえます。
なぜならば、生計が別と言っても、親と同居しているため、何かと助け合いながら生活を営んでいけます。
ここ近年、近居・同居住み替え支援事業を採用している自治体が増えています。
これは、親の近くに住む、親と同居する、そのためのマイホームの取得にかかる費用を少し補助しますという制度です。
少子化や介護の問題が緩和され、また、子育て世帯の家計支援にもつながるため、超高齢化・少子化社会のライフスタイルとして重要視されるようになりました。
これも、敷かれたレールに乗りつつ、他のレールを自ら敷いている好事例といえるでしょう。
他にも、各ご家庭で様々な工夫がありますが、次のケースは敷かれたレールに乗っかるという例です。
お勤めの会社で確定拠出年金(企業型)制度が始まりました。
老後のことを考えると必要だと思いますが、どのようにすればいいかわからないため相談したいですという、よくある内容です。
確定拠出年金制度の話に触れる際、必ずするのが日本の年金制度についての説明です。
会社員・公務員の場合、1階部分に国民年金、2階部分に厚生年金、そして3階部分に上乗せ保障という意味で、会社で独自に採用している確定給付年金や確定拠出年金などがあります。
老後の収入について考える場合、この仕組みを知らないと、そもそも収入がいくらぐらいになるかを推計できません。
このようなことから、公的年金+他の年金の地固めを行います。
下の図は、企業型の確定拠出年金と個人型の確定拠出年金の掛金限度額を一目でわかるようにしたものですが、企業型の確定拠出年金では、限度額が、確定給付型年金のある企業では月2.75万円、ない企業では月5.5万円となっています。
確定拠出年金は、掛金が全額所得控除されるため、節税という意味で家計支出を抑えながら老後の年金を加算できる制度といえます。
もちろん、確定拠出年金制度という敷かれたレールに乗っからない選択もできます。
確定給付年金を採用している企業では、無理して企業型の確定拠出年金を活用しなくてもいいと思います。
ただ、より老後の生活資金を準備しておきたいという場合に確定拠出年金制度を活用すればいいだけのことです。
敷かれたレールに乗るか、乗らないかは、結局、我が家の生活設計をどのように工夫すればいいかに尽きます。
国は軌道修正をしてしまいました。
企業も、これから軌道修正をかけてきます。
これらについて、すでに諸々の問題が発生していますが、1970年以降生まれの私たちは、老後のことを視野に入れながら、今できることを着実に実践していくことに価値を見出しているような気がします。
老後のことは、今の家計状況を見渡すことから始まるのかもしれませんね。