確定拠出年金を始めると、住宅ローン控除がなくなるって、ホント? 答え)ウソです
節税の意味。
税金を節約するのがいわゆる「節税」ですが、税制の仕組みを活用して税金の支払いを減らすことが目的になっているのはどうなんだろうなぁと思う今日この頃です。
税金をめぐる政策には必ず目的があります。
マイホームを購入した後に適用される「住宅ローン控除」。
これは、住宅政策の一環として、国民に広く住宅投資を行ってもらうための税の優遇措置です。
また、ここ近年、加入者数が増え続けている確定拠出年金制度ですが、その掛金は「小規模企業者等掛金控除」として、その年の収入から差し引かれます。
これには、高齢化社会における公的年金制度だけで老後の年金を確保するのが難しいため、自助努力で年金資産を準備してもらうという目的があります。
制度を活用した結果、税が優遇される。
これが節税の本来の意味ですが、どうも節税ありきの社会的風潮となっていることに疑問を感じます。
なぜ、このような現象が起こるかというと、ひとつは制度の目的が浸透していないから、もうひとつは納税意識が低くなっているからということなんでしょうか。
または、やはり生活不安があるからなのかもしれません。
いずれにせよ、制度の趣旨・目的を理解したうえで、結果として節税の恩恵を受けられるという因果関係をしっかりと認識し税金について考えていかないと、本質的には消費税の増税論議ひとつとっても、成り立たないような気がします。
先日、このようなご相談をいただきました。
夫が確定拠出年金を始めると、住宅ローン控除がなくなるんですか?
誰かからそのような“噂”を聞いたとのことでしたが、この手の噂話は根拠があるようでなく、独り歩きしやすいネタのひとつです。
よくよくお話をうかがっていると、確定拠出年金を始めるに際し、所得税・住民税と住宅ローン控除の関係をあらかじめ理解したうえで検討したいというご相談意図なんだろうと推察することができました。
このご相談内容には、実をいうと、異なる制度が複雑に絡み合っています。
ひとつは「所得税が計算されるまでの過程」、もうひとつは「住宅ローン税制の仕組み」、そして最後に「住宅ローンにかかる住民税の特例」です。
確定拠出年金制度に加入する際、掛け金を納める必要があります。
納めた掛金は、生活する上でのコストになるため、小規模企業共済等掛金控除という所得控除の適用を受けることになります。
これにより納めるべき所得税が、結果として減ることになりますが、さらに住宅ローン控除があると、こちらは算出された所得税に対する税額控除となるため、ダブルで節税の恩恵を受けることができます。
これに加え、所得税から控除しきれなかった住宅ローン控除分が翌年の住民税から差し引かれるようになったため、トータルの納税額は少なくなります。
税金がオマケされるから得!
これが業者のアプローチであり、消費者心理でもあります。
でも、節税が前に来て、制度の趣旨や目的が後回しにされると、本来の目的、先ほどの例でいうと、確定拠出年金による「老後の年金準備」が薄いものになりやすくなります。
確定拠出年金制度を利用する場合、原則的には、節税を先に考えるのではなく、このように捉えていくと良いでしょう。
①老後、どのように暮らしていきたいか。
②老後に必要な生活支出はいくらか。
③老後の収入経路はどのようになるか。
④足りない部分がいくらになるか。
⑤足りない部分を補うためにどのような方法があるか。
⑥確定拠出年金制度を利用する場合、毎年いくらの年金を確保するか。
⑦そのために掛け金をいくらで設定するか。
そして、その結果、毎年の所得税が軽減されるという運びです。
節税をめぐる話は枚挙に暇がありませんが、税制の趣旨・目的を軸に考え、結果として、税の優遇が受けられるという原理原則があります。
順序をたがえると変な風になってしまうので、どうしようと思ったら、これを思い出してくださいね。