FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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債務整理をする前に。家計について、どうすべきかを知っておこう!

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 FP事務所には、いろいろなご相談が舞い込んできます。

 いずれも共通することは、ご相談の内容が、家計簿と資産表の中で、どの項目について関係しているかを把握することです。

 つい先日、債務整理についてのお問い合わせがありました。

 よくよくお話を伺っていると、

 お子さんが生まれて世帯収入が減り、育児の時間も必要なため、ライフスタイルが変わったことにより、大きく支出が膨らみ、いつの間にかクレジットカードでの買い物が増え、負債額が数百万円に及んでいる。

という内容でした。

 だから、債務を整理したいという発想が頭に浮かんだんだと思います。

 でも、その段階はホントはもう少し後のお話で、その前に基本に立ち返って、家計内で、どこに、どのような問題が発生しているかを細かく把握することが必要です。

 これを飛ばしていきなり債務整理にいった場合、「任意整理」・「個人再生」・「自己破産」とよりハードな法的手続きを行うことになり、余計に費用がかかったり、その後の生活がさらに大きく変わってしまう可能性が出てきます。

 

 そうしないために、今、できることは何か。

 これが家計内でどこに問題があるかを把握するという意味です。

 

 日常生活を行っていると、普通、そこまでの状況になることはありません。

 でも、ライフステージの変化で、急に収支が悪化する局面に出会ったら・・・。

 今回は、そんなことを想像しながら読んでいただければと思います。

 もちろん、これからお伝えすることは、日々の家計にも役に立つことですので、普段の生活に当てはめながら、少しイメージしてみたくださいね。

 

 家計の状況を把握するときは、「収入」・「支出」・「資産」・「負債」の4つの項目について見ていきます。

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 これは、以前、このブログでも紹介させていただいた「家計簿」と「資産表」の基本的な仕組みを表したものですが、左が「家計簿」、右が「資産表」となっています。

 家計簿は、会社などの帳簿では「損益計算書(P/L)」、資産表は「貸借対照表(B/S)」に当たります。

 普通、何気なしに家計簿といっているのは、左側の損益計算書に当たる部分ですが、これを見る目的は、収入-支出=「純利益」、つまり、毎月、毎年、「お金がどれぐらい黒字になっているか、赤字になっているか」を確認するためです。

 さきほどのご家庭の例では、この部分が大幅に赤字になっていたため、大変だ、どうしようということでした。

 でも、右側の資産表、つまり、会社などでいうところの貸借対照表では、実をいうと、資産-負債=「純資産」が黒字になっていました。

 これってどういうこと?

 債務整理をするまでもなく、単純に、この黒字になっている純資産を使って、純利益の赤字を解消すればいいということになります。

 実際は、必ずしも、これだけで済む話ではありませんが、家計簿と資産表の仕組みから考えると、基本路線はそのようになります。

 ここでお伝えしたいことは、次の点です。

家計は、家計簿だけで考えてはいけない。

 私たちの頭の中は、家計について考えるとき、左側の家計簿が通常モードになっています。

 つまり、毎月の収入がいくらあって、支出がこれぐらいだから、その差額である純利益(余るお金)はこれくらい、だから、今月は黒字・赤字だという見え方です。

 でも、この左側の部分だけで家計を考えてしまうと、将来に向けてお金をどうやって貯めればいいか、借りているお金を、どのタイミングで、どのように返せばいいか、実際の家計の体力である純資産がどれぐらいなのかがまるっきりわからなくなります。

 なので、右側の資産表(損益計算書)も活用しながら、先ほどの例でいうと、無用な心配をしないためにも、冷静に判断する必要があります。

家計は、家計簿と資産表のふたつで判断する。

 

 ここまで理解したうえで、家計について、どの部分に問題があるかを把握していきます。

 ポイントは、「収入」・「支出」・「資産」・「負債」の4つです。

〇世帯収入が少なくなっているのはなぜか

⇒増やすにはどうしたらいいか。

〇支出が増えてしまっている原因は何か。

⇒減らすにはどうすればいいか。

〇資産がなかなか増えない理由な何か。

⇒増やすためにどのように工夫すればいいか。

〇負債があるのはどうしてか。

⇒減らすためにはどうしたらいいか。

 単純に、原因と結果を探る作業をしていきます。

 

 先の例では、収入については、「奥さんが育休中のため、収入が減った」、「ご主人の収入がそれほど多くない」の2つが原因でした。

 支出面では、本質的には、「時間が足りない」という子育て世帯共通の問題があります。

 時間が足りないから、「買い物に行くのが難しい」、だから「買い物のコストが上がってしまった」ということで、支出に占める「基本生活費」の割合が極端に高くなっていました。

 基本生活費の中では、特に食費や日用雑貨費が目立って多かったですが、他にも、通信費、これは多くのご家庭で共通することでもありますが、携帯料金などの見直しをしておかないと、知らないうちに支出を圧迫する要因にもなります。

 また、レジャー・娯楽費やお小遣いなどにも課題はありましたが、ここら辺は、それまでの夫婦ふたりの生活から子どもができた後の生活に、家計的にまだ慣れていないというのが原因といえます。

 支出のうち、他の項目では、「教育関連費」のうち「学校外教育費」、つまり、塾や習い事などの費用ですが、これについても、少なからず多くのご家庭で支出に占める負担割合が高いという印象を持ちます。

 ご家庭によって、子育てや教育についての考え方・価値観があるため何とも言えないですが、仮に家計が苦しい状況にある場合は、特に夫婦でしっかりと話し合いを持つ必要があるでしょう。

 そして、「住宅関連費」、「自動車関連費」、「生損保の保険料」などが続きますが、支出面ではこの3項目にも工夫の余地があります。

 住宅関連費では住宅ローンの見直しがオーソドックスな方法です。

 自動車関連費では、先の例では自動車ローンの返済額が多めだったり、メンテナンス費用もその金額に含まれているため、この点が家計の重しになっている原因でした。

 生損保の保険料ですが、これもよくある話ですが、単純に子育て世帯に適した保障設計になっていないため、月々の保険料がかなり多めになっていました。

 そして、資産に目を転じると、目的に合わせた貯蓄方法を選択できていないという点が挙げられます。

 先ほどのケースでは、お子さんの教育資金を準備するために、個人年金保険と外貨建ての終身保険を15年後に解約し、その返戻金を充てるという方法を採っていました。

 ここ近年、よく見かけるケースですが、この最大のデメリットは、圧倒的に資金効率(貯蓄効率)が悪くなることです。

 つまり、どういうことかというと、想定している教育資金を準備するために、月々の保険料が他の方法に比べ多くなってしまい、しかも、これが長期的な固定費になることから、長い目で見て家計が苦しくなりやすくなるという点です。

 しかも、外貨建ての終身保険の場合、利率は比較的高いですが、円高になると給付金が減ってしまうため、資産運用の経験などが乏しいご家庭では本質的にその仕組みがわかりにくいと思います。

 というか、そもそも論でいうと、個人年金保険は老後の生活資金を貯めるためのもの、外貨建終身保険はリスクを取って老後の生活資金を増やすために運用するものなので、教育資金を貯めるために商品設計されているわけではありません。

 また、確定拠出年金ですが、企業型・個人型とありますが、個人型の場合、利用する金融機関や掛け金の額によっては、投資信託で運用しない限り、手数料で資産が目減りする損益ラインがあります。

 これにすっぽりはまっていたため、案の定、運用報告書を見ると評価額が減る事態に直面していました。

 何のために確定拠出年金で貯めているかということをしっかり認識する必要があります。

 最後に負債ですが、これについては、残高のチェックと返済のタイミングを資金シミュレーションにもとづいて導き出す作業が必要になってきます。

 

 こんなことをわ~~~っと考えていくことで、家計はおのずと改善されていきます。

 それでも間に合わない場合に初めて債務整理というお話になります。

 おさらいをすると、家計を見るときは「収入」・「支出」・「資産」・「負債」の4項目についてチェックすること。

 そして、課題が見つかったら、それをどのように解決するかということです。

 そのために、普段から家計簿をつけておくことが大切なんですが、続けるのは面倒です。

 半年ほどつけてみると、我が家のお金の流れをイメージできるようになりますが、家計ノートでもいいですし、アプリでもいいと思います。

 何かあったら、そのとき考えるというのではなく、何かあっても、すでに考えられる状況が整っているというのが家計簿をつける目的でもあります。

 今年は消費税率が10%に引き上げられることが予定されています。

 お子さんのためのお金を準備しておきたい、老後の生活を安心なものにしたい。

 私たち1970年以降生まれの子育て世帯にとって、このふたつは共通の想いかもしれません。

 今、何をすべきか、そして、将来どうするのか。

 元号が平成から令和に変わりました。

 そんなことを感じながら、今後も、家計についてのお悩みに正面から向き合っていこうと思います。

 

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