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今どきの大学の進学率は52.0%。なのに大学の2018年問題ってなに?

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 2018年問題ってなに?

 18歳人口がこの年から減少に転じ、私立大学だけでなく、地方の国公立大学でも潰れるところが出てくるという問題です。


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ざっくりいうと、

①18歳人口の将来予測に言及している。

②18歳人口が減ってるのに進学率は上がっている。

③定員割れを起こしている大学は増えていく。

④大学の学費は増え続けている。

⑤大学の2018年問題ってホントに問題なの?

 

18歳人口の推移を見る

 2018年問題は、はたして問題なのか。

 文科省の「高等教育の将来構想に関する基礎データ」を紐解きながら、ちょっと詳しい内容を見ていきます。

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 2016年の18歳人口はおおよそ120万人程度で、これが2030年にもなると約100万人にまで減っていきます。

 そして2040年には、18歳人口が100万人を切り約80万人になるというのが国の推計のようです。

 毎度のように人口何百万人と言われてもあまりピンとこないんですが、このグラフの中では、18歳人口がピーク時の1992年で約205万人になっていて、これを基準に見ると若年層の人口がいかに減っているかがわかります。

 これが少子化の正体なんですね。

 1992年に18歳だった人は現在44歳で、団塊ジュニア世代に該当します。

 そこから18歳を差し引くと、今18歳の子どもたちは、現在44歳の人たちが26歳で出産したご家庭の子どもたちということになります。

 団塊の世代の次に人口が多い団塊ジュニア世代以降の子どもたちがかなり少ないというのが少子化の正体です。

 就職氷河期と重なってるんですね。

 実際、少子化はもっと前から始まっていますが、こうやってみると結構シビアなのかもしれません。

 

大学などへの進学率の推移は?

 次のグラフは、18歳人口の推計に大学などへの進学率を重ね合わせたものです。

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 推計では、18歳人口は平成21年~平成32年(2009年~2020年)頃まではほぼ横ばいで推移するが、平成33年(2021年)頃から再び減少すると予測しています。

 東京オリンピックパラリンピック以降は、今まで以上に18歳人口が減っていくだろうということですが、このグラフで重要なのは大学などへの進学率が上がっている点です。

〇大学・短大・高等専門学校・専門学校への進学率

 80.1%

〇大学・短大への進学率

 56.9%

〇大学への進学率

 52.0%

 18歳人口が減っているにもかかわらず、大学などへの進学率は上がってるんですね。

 子どもの数が減っている分、教育に力を入れやすくなったということでしょうか。

 

私立大学では定員割れが増えている

 この裏側で大学の採算が悪化しています。

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 このデータは定員割れしている私大の割合を表しています。

 直近の平成28年度では44.5%の私立大学で定員割れが発生しています。

 18歳人口が減り、定員を満たさない大学が増えていくのは理解しやすいかと思います。

 それでも、大学への進学率が50.0%を超えているのは、やはり、子どもの数が減っている分、教育に力を入れやすくなったということなのかもしれません。

 

大学の学費は増え続けている

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 子育て世帯の方々が気になるところは学費かと思います。

 上の円グラフは日本の大学の財政状況を表したものですが、国立・公立・私立ごとにその内訳が示されています。

 私たちが見るところは「学生納付金」です。

 国立大学・公立大学ともに学生納付金の占める割合は少ないですね。

 歳入のほとんどが国や自治体の交付金、病院収入、研究費などで賄われています。

 一方、私立大学では、学生納付金が大学の収入の77.0%を占め、いかに学費の割合が高いかがわかります。

〇国立大学と私立大学の授業料の推移

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 これは、文科省が公表している国立大学と私立大学の授業料の推移をグラフ化したものです。

 昭和50年の時点では、国立大学の1年間の学費は36,000円、私立大学は182,677円でした。

 今と比べ貨幣価値が低い時代だったのでこのような金額ですが、平成16年時点では国立:520,800円、私立:817,952円となっています。

 これは平成16年時点でのデータなので、今はもう少し高くなっています。

 

大学の2018年問題は「問題」なのか?

 バブル崩壊後、デフレ経済が長引く中でも授業料は上がってきたんですが、この原因は貨幣価値の上昇というよりも、国の交付金補助金が削られ続けていることが背景にあると指摘されています。

 だから思うんですよね。

 大学の2018年問題は本当に問題なのかって。

①18歳人口が減っていく。

②定員割れ、採算割れの大学が増えていく。

③にもかかららず、大学への進学率は50.0%を超え、学費は増え続けている。

 

 むしろ、日本の高等教育における政策に問題があるんじゃないかと思います。

 まず、何のための大学かですよね。

 少子化の結果、子どもたちは高等教育を受けやすくなり、有名大学や特色のある大学を中心に進学するようになった。

 少子化が起こるとわかりながら大学の設置を認め続けてきただけの話で、だから交付金補助金を減らさざるを得ず、返って学費の上昇を招いてしまった。

 で、今、話し合われていることが、大学を無償化しようってことですよね。

 教育の経済的格差を前面に押し出して。

 国の教育施策の基準がどこにあるかよくわかりませんが、質の引き上げを図らなければ、少子化のもとでの高等教育は成就しないような気がします。

 単純に大学の数を減らし、その代わり、質の高い教育が受けられるよう環境を整える。

 ただでさえ少子化なわけですから少数精鋭は必然的なことで、だからこそ教育の質が問われてくるんだと思います。

 教育は国の礎ですから。

 

 このように考えていくと、親御さんとしては、質の高い大学とは何かをお子さんと一緒に考える必要があるのかもしれません。

 何のために大学に行くのかです。

 世の中の空気が単なる有名大学への進学になっている傾向が強いため、結局のところ、子どもに質の高い教育を受けさせるという意味で本質的な問題解決にはなっていかないような気がします。

 

 今回は、大学の2018年問題について言及してみました。

 1970年以降生まれの私たちにとって、人口の変化がもたらす問題はこれからもたくさん出てくると思います。

 時代の変化の中で何を考えるか。

 これによっていろんなことが変わるような気がするんだけどなぁということで、話を終わりにします。

 

 

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