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2025年度税制改正大綱。所得税制の見直しが家計に与える影響と全体像の理解について。

先週、2025年度税制改正大綱の内容が示された。

自民党のホームページにその原文が掲載されているが、1次情報を確認したい場合、直接そこから入手することをお勧めする。

年収要件が103万円から123万円に

さて、今回の税制改正の目玉は、国民民主党が提案していた「年収103万円の壁を178万円に引き上げる」という話がとん挫し、123万円になったことだろう。

図では①と①’が該当するが、基礎控除を48万円⇒58万円に引き上げ、同時に給与所得控除を55万円⇒65万円に増額することで、合計20万円が年収から控除されることになる。

少しばかりの減税ではあるが、給与所得者の家計にとっては足しにはなるだろう。

与党としては178万円を目指して協議を行うとしているが、今後の見通しは不透明なままだ。

大学生などの子のいる家庭はさらに減税

もうひとつ家計にとって重要なのが「特定扶養控除に係る年収要件の見直し」(図中②、②’)だ。

特定扶養控除」は、大学生などのお子さんがいる場合、年収から63万円を差し引くという所得控除だ。

これについて、大学生などのお子さんが働いた場合の年収要件が103万円から150万円までに引き上げられる。つまり、子どもとしては年間150万円までの収入なら、親の所得税に影響を及ぼさないことになる。

また、新たに「特定親族特別控除」という所得控除が創設され、子どもの年収が150万円を超える場合、親に適用される特定扶養控除を完全になくすのではなく、段階的に引下げるようにする。

大学生などのお子さんを持つ世帯にとっては、学費などの負担が増えていることから教育資金を以前よりも多く準備する必要がある。このような世帯を所得税制において支援するというのは一定の意味を持つだろう。

だが、個人的に思うのは、大学生などが年間150万円まで働く状態が良いものなのかという点だ。特定扶養控除をいじるよりも、給付型奨学金(還さなくてもいい奨学金)の増額を図る方が、学生にとっても親にとってもより助かると考えられる。

確定拠出年金の拠出限度額の引上げ

今年の1月から新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まった。NISAはあくまでも証券税制で、何も老後の資金を増やすことだけを目的にしているわけではない。

一方、確定拠出年金制度は年金税制の一種で、広い意味では退職金税制との相関性が高い。

このようなことから、老後の資金を準備することを目的にするなら、まず確定拠出年金制度を活用することが優先される。

確定拠出年金制度は年金財政と深く関わっており、公的年金にかかる所得代替率の低下に自助努力で対応するための制度といえるが、今回の税制改正では、掛金の拠出限度額が7,000円引き上げられる(図中③)。

確定拠出年金制度では、拠出した掛金は「小規模企業等掛金控除」という所得控除を通じ、収入から差し引くことができる。

このため、今回の拠出限度額の引上げは、減税と同時に老後の資金を増やすための支援であるといえる。

生命保険料控除の拡充

今回の改正では、新たに「生命保険料控除の拡充」(図中④)が示された。

具体的な内容は、子育て世帯(23歳未満の子を持つ世帯)に限り、現行の生命保険料控除4万円に加え、2万円が増額されるというものだ。

これは、ひとり親世帯の遺族保障への配慮が社会的背景としてあるが、子育て世帯全般を対象としているため子育て支援策の一環ということができる。

ただ、注意点として、保険会社やその代理店などから「生命保険料控除が年間6万円に拡充されたので、死亡保険に入りませんか」などといった勧誘が増える可能性が高い。特に一時払の生命保険(死亡保険)も対象となるため、「老後の資産形成を目的に死亡保険に入りませんか」という営業には注意する必要がある。

物価が上昇するステージでは貯蓄性のある死亡保険は資産形成のツールとしてはあり得る。しかし、あくまでも保険であるため、投資と比べるとより多くの管理・運用コストがかかるため、費用対効果としては劣ってしまう。

このようなことから、保険に加入する際は保有資産と照らし合わせ検討することが求められる。

住宅ローン控除の拡充、リフォーム税制の拡充

図の⑤「住宅ローン控除の拡充、リフォーム税制の拡充」については、以前より、子育て支援策という位置づけで拡充されてきた。これらについてさらに拡充するものであるため、ここでは割愛する。

在職老齢年金に係る所得税制の見直し

在職老齢年金を巡っては、一定の給与を得ている場合、厚生年金の一部を減額、または停止するということが高齢者の就労意欲を削ぐと問題視されていた。

これを緩和するため、将来的な在職老齢年金の状況を視野に入れながら、給与所得控除と公的年金等控除の合計額を280万円までとするという方向で調整が入る(図中⑥)。

在職老齢年金制度は将来的に廃止される可能性が高いといえるが、今回の改正はおそらく廃止までのつなぎと考えられる。定年後も働くというライフスタイルが国民の間で今以上に広く受け入れられることが必要なのだろう。

まとめ

来年度の税制改正は、所得税制においては概ね減税ということができる。

全体像を見ていくと、「物価対策」や「就労促進」、「老後の資産形成支援」、「子育て支援」の4つを目的としていることがわかる。

人によっては、個々のライフステージに当てはめて考えると不公平さを感じるかもしれない。

しかし、重要なのは全体像の理解である。

全体像を見ることで、この国が将来どこに向かおうとしているかを事前に推察し、人生設計に落とし込むことがより重要といえる。