FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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住宅ローンの完済年齢が上昇していることと資産運用は、実をいうと密接につながっている!

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 最近、資産運用の記事ばかり書いていますが、そういえばということで思い出したネタについて今回は書いていきたいと思います。

 ネタ的には住宅ローンなんですが、実をいうと、裏では資産運用と密接につながっています。

 まずは日経新聞のこの記事から。

www.nikkei.com

 2020年10月5日付の記事ですね。

 もう読んだよという方もいるかもしれませんが、そういう方はおさらいのつもりでざっと目を通していただければ幸いです。

 内容的には「住宅ローンの完済年齢が上がってるよ」という記事です。

 なんでも、2000年度と2020年度を比べると完済の平均年齢が5歳上がり、今は73歳になっているそうです。

 

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 しかも、融資額が20年間で1,900万円から3,100万円と1,200万円も増加しています。

 そして、返済期間も長期化、2020年度は平均で32.7年となっています。

 

 これらは日経新聞住宅金融支援機構のデータから分析した結果だそうですが、実務的にもやはりそうだったかと頷けます。

 うちの事務所にもマイホーム購入前のご相談や、すでにマイホームを購入しているが

、住宅ローンの返済が重いといった相談が舞い込んできます。

 ここ近年の傾向として、実際のご相談から浮かび上がってきていたことはまさにこれで、例えば、

①住宅ローンをフルローンで借りている

②結婚年齢、出産年齢、住宅ローンの借入れ時年齢が高い

③完済年齢が75歳前後の人が目立つようになってきた

などの点から、実をいうと、無理して借りている人が一定数いるんじゃないかと考えています。

 20代・30代の方の場合、通常のマイホーム購入に向けてのご相談であるため、住宅ローンについては時代の先を見越したアドバイスが可能なんですが、すでに借り入れをしていて、例えば、40代とか、50代で家計状況が変化し、住宅ローンの返済に苦慮しているといったご家庭の場合、家計の症状がそれなりに悪化していて、大きめの手術を施さなければならないケースもあります。

 今現在、コロナもあり、後者の案件に取り組んでいる最中ですが、今後も増加していくだろうと予測しています。

 

 さて、なぜ、日経新聞の記事のような状況になっているかというと、

①大規模金融緩和により、銀行の経営状況が悪化しているため

②大規模金融緩和により、ほぼ0金利の状況が続いているため

の2つが主な要因と考えられますが、最近のご相談事例で気が付いたのは、

③退職前後でマイホームを建て替える時に住宅ローンを組んでいるため

という要因もあります。

 また、夫婦共働きということで、

④夫婦でペアローンを組んでいるため

というのも散見されるようになっています。

 最も大きな要因は、やはりリーマンショック後の大規模金融緩和政策の継続でしょう。

 そして、2016年から始まったマイナス金利政策により金利がさらに下がり、この動きに拍車をかけています。

 とはいいつつも、この問題は、単に銀行が悪いで済む話ではないんですよね。

 本質的には国の経済政策に起因しているため、これが良い方向に転じない限り、おそらく問題は解決しないだろうと思います。

 前提となる話は、バブル崩壊後の失われた20年間でデフレが深刻化したことです。

 その間、無策とは言いませんが、事実上、日本経済は低成長を謳歌し続けました。

 もちろん悪い意味でですよ。

 その状況を打破しようと、アベノミクスで大規模金融緩和政策が始まったわけです。

 その結果が日経新聞の記事にあるような現象であるため、この状況を改善するには相当の年月が必要であると思います。

 

 平成の最後の10年間で何が起こっていたかというと、今でこそ当たり前に言われるようになっていますが、

働き方や労働環境の変化

です。

 例えば、賃金カーブの低下による収入の減少ですよね。

 これは超高齢化や少子化が原因です。

 要は「人生100年時代」と称して、70歳まで健康に働くのは当たり前という考え方を創り出し、1970年以降生まれの私たちが老後に突入する前に年金の支給開始年齢を70歳に引き上げる算段を国はつけているため、企業もこの動きに倣い、定年を60歳から65歳に引き上げるケースが増え、相対的に社員・従業員の賃金の伸びを緩やかにするように変えてきているからです。

 これ、まだ気づいていない人は、お勤めの会社の就業規則や賃金規定などに目を通してみるといいと思います。

 

 それとか、退職金制度の変更ですよね。

 特に、実際のご相談で目立つのは、企業が従来行っていた退職金制度が確定給付年金制度だけでなく、確定拠出年金制度に改められる動きが広がっている点です。

 これって何を意味しているかというと、まともな退職金制度がなくなり、自助努力も含め、自分の退職金を準備していくように切り替わってきているということです。

 退職金額がかつてに比べ減っているといわれる直接的な要因はこれですね。

 だからといって悪い制度ではないんです。

 退職金を一時金で支給するよりも、年金として分割して受け取れるようにしてあげた方が公的年金制度と併せて考えるといいんじゃない?といった配慮はされています。

 でも~、前まではそうじゃなかったじゃん!という点で、マイホームの購入を検討する場合、人生設計を大きく変える要因にはなっています。

 

 働き方や労働環境の変化についてはまだありますが、いわゆる「働き方改革」ですよね。

 まずは非正規労働者が増えたという点です。

 それと残業規制。

 これらは相対的に所得の減少を招いています。

 もちろん働き方改革には良い点もあるんですが、企業や家庭の実情に沿った形で進められているわけではないため、副作用に悩まされる人たちが増えているということなんでしょう。

 

 あとは、人々を取り巻く環境が変化しているにもかかわらず、時代の変化を先取りせず、かつての常識にとらわれて自分たちの親世代の考え方でマイホームを買うのが当たり前と思ってしまったことも大きな要因ではあると思います。

 これは、あくまでもお金だけで見た場合ですが、マイホームを住宅ローンを組んで購入することは、かつてと比べ物理的に難しくなっているはずなんですけど、前述したようなことをあまり意識せずマイホーム神話に引きずられて購入するわけですから、それこそ、よく考えて検討する必要があります。

 このようなことを考えて、20代・30代の若い世代の方たちがわざわざ相談しに来てくれるわけですが、いわゆる意識の変化なく大きな買い物をしてしまった結果が日経新聞の記事のようになっているということです。

 

 そうはいっても、このレベルにいっちゃうと、もうそれは自己責任の問題じゃないですよね。

 働いている企業のせいにもできず、住宅ローンを貸す銀行のせいにもできず、本質的には国の経済政策の副作用であるため、やはり、ここに一番の問題があると言わざるを得ません。

デフレを放置した結果、そうなった

 まぁ、これですよね。

 

 少し話を変えますが、住宅ローンの借入れ事情が変化しているのは、端的に大規模金融緩和政策が長引いているからですが、同時にこんな問題も指摘され続けてきました。

債権の急激な増加

 住宅ローンは世間一般からすると単なる借入ですよね。

 でも、金融機関からすると、あくまでも金融商品で、債権なんです。

 大規模金融緩和政策により住宅ローンをフルローンで借りる人が増えていたり、融資額がここ20年間で1,200万円も増えていることは、裏を返すと債券が増加しているということで、ここに経済が歪な構造になっている一因が隠されています。

 冒頭で資産運用と密接な関係があるといったのはこの点で、大規模金融緩和政策の下、株式市場や債券市場などの有価証券市場は大幅に上昇し続けました。

 しかも、実体経済とは乖離した状況でですから、バブルといわれても仕方のない状況です。

 この意味するところは、大規模金融緩和政策の結果、

マネーの行先が資産市場と不動産市場に偏っている

ということです。

 でなければ、とっくのとうにデフレから脱却し、実体経済である私たちの暮らしは良くなっているはずです。

 とどのつまり、大規模金融緩和政策によって流されたお金が一部の世界だけに集まってしまって、広く世の中に行き渡っていないのが問題ってことですね。

 人間の体でいうと、頭にばかり栄養が行ってしまって、体全体にまで行き渡らない状況です。

 

 さて、これからの話を考えていきましょう。

 キーワードは「債権バブル」です。

 これは、個人的に考えておく必要があるテーマと捉えていますが、記憶に新しいのがサブプライムローン・ショックです。

 あの時、アメリカではサブプライムローンと呼ばれる、いわゆる質の悪いローンまでもが金融機関で取引されていました。

 たくさんの人がこのローンを借り、もう返せませんとサジを投げたことで金融ショックにつながりましたが、コロナ禍もあり、今後、似たような現象が世界のどこかで起こるかどうかを見ておく必要があります。

 まぁ、日本では可能性は薄いと思いますが、地銀の体力が相当削られていることやコロナ融資における3年間の無利子期間の適用がなくなった後どうなるかには注意しておく必要があるでしょう。

 おそらく、これからも金利が低い状況は続くと考えられますが、この裏では債券価格の高止まりも続きます。

 そして、行き場を失い大量に余ったマネーが株式市場などの資産市場に流れ込んでいくと思いますが、足元では少しずつバブルの兆しが見えてくるかもしれません。

 資産市場と実体経済の極端な乖離です。

 世界のどこかでそれが極まった時、金融ショックが発生し、実体経済にどのような影響を及ぼすのか・・・。

 これについてはまだだいぶ後の話だと思いますが、おそらく、国際協調でこの事態を未然に防ぐ布石が打たれていくと思います。

 ソフトランディングできるか、それともハードランディングとなってしまうかは蓋を開けてみなければわかりませんが、今後10年間で警戒しておく必要のあるポイントはここなんだろうと思っています。

 

 今回は住宅ローンの問題から今後の話までざっと見てきましたが、経済を知ると家計がわかるというのはこういう意味です。

 本当は、マネーリテラシーを磨きましょう程度のキラキラしたレベルの話ではないんです、お金の話は。

 むしろドロドロとしたことに対して真正面から向き合うことの方が大事で、だからこそ、マネーリテラシーを高めることは重要なんです。

 

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