つみたてNISAの話はこのブログでは封印します。超大規模金融緩和の出口戦略が語られるようになるまでは。
なんかだか2020年、変な年というか、人間心理がふわっとしているようで、よくわからないことが多いように感じます。
コロナだからなのかなぁとか、この前話題になった老後2,000万円不足する問題があったからなのかなぁとか、なんでだろうといろいろ考えていますが、異様な感じがします。
これは相談業務から感じていることなんですが、昨年と今年を比べると、今年の方が「そこ、あんまり考えるポイントじゃないよなぁ」って普通思うことを、なんだか躍起になって考えているというか、ものすごく心配しているというか、そこで導き出されぶつけられる答えが明後日の方を向いているというか、頭の中がごちゃごちゃになっているような相談内容が少し目立つように感じています。
この深層心理がどこにあるかは個々の胸の内にあるため、自分としては手の届かないところにありますが、まだまだ人間として未熟な点が多いということで致し方ないと納得するようにしています。
わからんもんはわからんですしね。
早くこの冷静さを欠いたふわっとした感じが元に戻って欲しいと思っています。
さて、これにも関係しているんですが、つみたてNISA、どうもよくわからない。
個人的にはつみたてNISAやらない派なんですが、わかってくれる人はわかってくれるんですけど、世間で言われていることが片手落ちだということを説明するのに、もう疲れました。
なぜ、つみたてNISAが片手落ちの説明であるということを理解してもらえないのかについていろいろと考えているんですが、今のところ導き出している自分なりの結論は、
資産運用の初心者や不慣れな人向けに発信されているから
が一番大きいように思います。
資産運用をよく知らなくて、世間で言われていることを信じてやまない人に実際はどうこうといっても響かないのは当たり前です。
で、四苦八苦しているわけですが、つみたてNISAについてデメリットをどう説明するかについて考えています。
つみたてNISAは、長期にわたって積み立てながら投資するために国が用意している非課税制度です。
まずこれですよね。
NISAは「少額投資非課税制度」であるため、これを積立投資にも適用しているのがつみたてNISAです。
そこで言葉の理解なんですが、少額投資非課税制度を分解すると、「少額投資」と「非課税制度」の2つに分けられます。
実際の相談の場で感じるのは、たぶんですけど、つみたてNISA=資産運用、例えば、つみたてNISAは資産運用で、「投資信託を積み立てていくこと」のように受け止めている人が多いような気がするんですけど、もしそうであるならば、これは間違いで、つみたてNISAはあくまでも、「少額投資」を対象とした「非課税制度」に過ぎない点はしっかり押さえておく必要があります。
なんか、いろんな人と話をしていると、つみたてNISAについて「投資」と「税制」をごっちゃにしている人が多い気がするんですけど、おそらく、この制度の最大の問題点はここにあるんじゃないかと考えています。
原則、つみたてNISAは、
少額投資を行った結果、一定の投資額にかかる売却益や分配金に対する税金を0円にする
という「所得税制」であるため、理解の順序としては「少額投資」⇒「税制」で持っていかないと話がごっちゃになります。
このため、「資産運用としての少額投資とはなんぞや」と「どのような非課税制度なのか」の両面を理解した上で実践していくことになります。
これがわかってもらえないんですよね。
国や金融機関、雑誌やネットなどの記事は、大概、非課税制度の説明が頭にきます。
例えば、つみたてNISAなら、非課税投資額が年間40万円ですよ、最長で20年間投資できますよ、最大で800万円分の投資にかかる売却益や分配金に対して非課税の恩恵がありますよといった内容です。
これらはポイントを押さえればおおよそ理解できると思いますが、その次に、一定の認められた投資信託で運用する必要がありますとか、「長期」・「積立」・「分散」投資でやりましょうといった話に移り、ここら辺の話が資産運用の方法論として語られます。
ということは、やっぱりそうですね。
非課税制度についてはある程度わかるが、資産運用となると???で急に理解が不十分になってくる。
難しい話だから簡単な内容に持っていく必要があって、わかりにくいところには深く言及されないため、理解が片手落ちになるってことなんでしょう。
ここでもやっぱり出てきましたね。
難しいことを簡単に理解したいという悪習が。
わかりやすく神話ですね。
この風潮に傾いている限り、おそらく物事への深い理解は妨げられ、リテラシー(読み書き能力)は表面的な部分でしか育たなくなるでしょう。
これが底流にあってのつみたてNISAであるとしたら、ふわっとした将来への不安心理で、よくわからないけどやるという構図が成立するのは理解できます。
普通、昔から投資については、「よくわからないからやらない」という人が多かったですが、今は、「よくわからなくてもやる」わけですからすごい時代です。
なんか、今回は自分の頭の中を整理するために書いている感じです。
なるほど、つみたてNISAは投資初心者を前提にしているため、そういうアプローチがされているということでした。
そうなると、力を尽くしてもなかなか理解してもらえないのには合点がいきます。
これからは、そっとしておきます。
とはいいつつも、つみたてNISAは積み立てながら行う「投資」です。
このため、投資の本質を知っておく必要があるんですが、
損することがある
という認識があまりにもなさすぎるように思います。
つみたてNISAでよく語られることは、積立投資なので損失が出ても途中でやめてはいけないという内容です。
いわゆる損切りしちゃだめってことなんですが、個人的には、つみたてNISAができて、FP事務所として制度内容などを読み込みながら運用しづらいからなしだなって思ってました。
今でもその結論は変わりませんが、必ずしも初心者向けにはそうではないわけですから、1万歩譲って自分自身を納得させています。
20年経過後の損失については、よく「損益通算できない」ことがデメリットとしてクローズアップされていますが、これって所得税制の話で、損益計算の仕組みを知っていればそりゃそうでしょとなりますが、殊更、損失についての注意喚起が損益通算できませんってなっているので、アプローチが違うんだよなぁと思っています。
正直、気になるところはここなんですよね。
よく投資信託を選ぶとき、アメリカのS&Pという株価指数に連動するインデックスファンドがいいですなんて言われているので、S&Pのチャートで見ていきたいんですが、20年後、2020年から20年後の2040年、積立投資を続けていて「果たして右肩上がりになっているのだろうか」という問いです。
○S&P
このチャートは1950年から今現在のものですが、リーマンショック後、右肩上がりになっていることがわかります。
んじゃ、今からどうなるの?
素直にこれについて考えてほしいんですけど、そんなのわかるわけないですよね。
上がるかもしれないし、下がるかもしれませんが、長い目で見れば、相場は「安定的」に推移するし、また「ドルコスト平均法」で積み立てていけば買付金額が均されていくので途中で売っちゃだめですよって言われています。
この意味がまったくわからないんですが、普通に資産運用をやっている限り、
相場は安定しない
ことは当たり前なんですが、それが、やれ投資信託は分散投資が図られているので値動きが少ないだとか、インデックスファンドはベンチマークに連動するため安定的に推移するとか、注目すべき指標はシャープレシオだとか、確かに間違いではないんですけど、この話は全部、きっと初心者にとっては、「投資信託での運用は比較的安全」と受け止められていて、おそらく業界の人たちの言わんとすることは伝わっていないはずです。
ごちゃごちゃと難しいことを言われて、結局、投資信託は比較的安全で終わってしまい、それならわかると合点がいってしまうので、「相場は安定しない」という目の前で起こっていることを素直に受け入れることができないのかもしれません。
というか、安定してれば誰でもやるじゃん?って問いを自分で持てない思考回路にさせられてしまうのが問題なのかもしれません。
ドルコスト平均法でいえば、これは積立投資における単なる買付方法なんですが、要は定期的に一定の金額で投資信託を買い付けることができるため、買付コストが安くなる分、運用効率が高まる可能性があるのは正しいといえます。
でも、相場が右肩下がりだと終わっちゃうんですよね、この買い方。
この点がちゃんと話されていないですよね。
むしろ、相場は「長期的に見れば、たとえ下がったとしても上がるため、仮に下がっても売っちゃダメ」って言われています。
普通に考えればホントに?って思っちゃうんですけど、そこは初心者の人たちはねじ伏せられてる感があります。
そんなわけないじゃんって思うのがまともな人の思考回路だと思うんですが、まぁ、みんながそう言っているからそれが正しいんです!
信じてやまないようにしましょう。
先ほどのS&Pが、リーマンショック後、なぜ右肩上がりになっているか、そんな話をします。
○S&P
答えは1つ、「大規模金融緩和」です。
要は中央銀行が市中にお金をいっぱい供給し、余りまくったので、その一部が株式市場に流れ込んだということです。
これは「金融緩和政策」っていうんですけど、お金を市中にたくさん流し込むことで経済を回復させようとしました。
たぶんね、相場が安定的に推移するとか、結局、株式市場って右肩上がりなんでしょとか思っちゃってる人は多いかもしれませんが、「金融緩和の出口戦略」っていうのを忘れちゃいけません。
リーマンショックの後、大規模金融緩和が始まったわけですが、その後、2017年当たりですかね、「金融緩和、そろそろやめて、金融引締しよっか」って議論がされるようになりました。
金融の引き締めというのは金融緩和の逆で、景気がある程度回復してきたら金利を徐々に引き上げたり、国債の買取をやめて市中からお金を引き上げていくことで景気を安定化させるための方法です。
金融緩和が続いてきた中で、マーケットは、いつ金融引締に転じるかを固唾をのんで見守っていましたが、例えば、アメリカの中央銀行であるFRBが「金利上げまっせ~、国債を買い取る量減らしまっせ~」ってなると株価は下がっちゃうわけです。
企業や家計のコストが増えちゃうんでね。
で、実際、下がったんですけど、2018年の初めに米中貿易摩擦がクローズアップされ、景気は減速し、金融緩和の出口戦略についてはいったん保留され、金融緩和を維持するようになっという背景があります。
で、そんなこんなで来た新型コロナウィルス感染症に伴う景気の減速により、さらなる金融緩和が必要になり「超」がつく大規模金融緩和時代に突入しています。
その裏でマーケットはこんなことを考えているんですね。
超大規模金融緩和の出口戦略はもう無理っしょ。
金融政策は物価の安定を目的に実施されます。
金融緩和政策は、景気を改善するために物価を正常化させることが目的です。
そしてその結果、景気が回復すると物価が上がっていくため、これを正常化させるために金融引締政策を用いることで景気の過熱を未然に防ぐ効果を期待します。
金融政策では、「ソフトランディング」と呼ばれる、景気に対しできるだけ衝撃が少なくなるよう配慮することが良しとされますが、超大規模金融緩和政策の出口戦略を描くとなると、「ソフトランディングにはならないよね、ハードランディングの方が可能性高いよね」ってことで、マーケットに衝撃が入りやすいだろうと予測されています。
そうなる前に金融のルールを変えていくと思いますが、長期にわたって相場は安定するとか、右肩上がりになるなんて根拠はそもそも存在しないわけです。
そういうことは初心者の人にはわからないですよね。
でも、つみたてNISAは推奨され、いろいろな人によって独り歩きさせられています。
それとか、つみたてNISAでよくある話として過去のデータをもとに「株価はずっと上げて来たよね」といったアプローチもされています。
例えば、過去10年間の利回りを見せられて、初心者の人は「そうなんだ」って思ってしまいます。
そりゃそうですよね、チャートを見れば右肩上がりなんですもん。
わざわざ利回りで説明する必要はなく、チャートを見れば一発でわかります。
でもさ、資産運用で過去見てどうすんの?
未来が、将来がどうなるかが気になるからアナリストがいるわけで、研究されているわけでしょ?
過去から傾向を探るアプローチは自分もするので間違いではありませんが、正確には「過去はあくまでも過去で、未来がどうなるかは必ずしもそこから導き出されるものではない」ため、過去のデータを見て「上がる!」って思うことには無理があるって。
こういうのは実践を積み重ねないとわからないので、初心者の人たちにとってはマーケットは不利な土俵での戦いのように思います。
マーケットは戦う場であり、土俵です。
その上ではいろいろなタイプの力士がいて、マーケット風にいえば、中央銀行しかり、ヘッジファンドしかり、銀行や証券会社などの金融機関しかり、世界最大の投資期間といわれている日本の年金運用機関であるGPIFもそこにはいて、他にも商社や一般企業、デイトレーダーといった玄人の個人投資家もいて、そんな人たちと区別なく同じ土俵で戦うわけです。
そういう人たちは投資信託が世間一般でいわれているような安定的な金融商品だなんて思ってやしません。
そんな人たちと戦っていくのが、「非課税制度」といえども、資産運用である「少額投資」、つみたてNISAの利用です。
つみたてNISAは投資の入り口としてはいいと思います。
そして、初心者の人は、資産運用について実践しながら自分なりに勉強していくなら理解も深まるため良い体験になるでしょう。
でもね、こういうことをわかってやらないと、20年後に損した場合、どう思うか、そういったことを想像して、しっかり理解してもらえるならば問題はないと思います。
最後に、つみたてNISAはいい制度だと思います。
初心者にとっての切っ掛け作りとしては。
それだけ日本は投資後進国だって話で、10年後、20年後、今からつみたてNISAを始めた人たちと経済談義ができる世の中になっていることを期待します。
そして、このブログではつみたてNISAの話は封印します。
超大規模金融緩和の出口戦略が語られるようになるまでは。