FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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経済活動が自粛されている今だからこそ考える「キャッシュフロー表」の意味とは。

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 新型コロナウィルス感染症拡大にともない緊急事態宣言が出され、間もなく1か月が経とうとしています。

 経済活動が制限され、会社経営にも、家計の運営にも、少なからず影響が出ています。

 「1970年以降生まれのライフ&マネー塾」においても、以前から『キャッシュフロー』について言及してきましたが、日ごろから『お金の流れ』を意識していると、今のような急変に上手く対応できるように思います。

 幣事務所はファイナンシャル・プランナー事務所でありながら、地元の某中小企業の顧問も兼務しています。

 さまざまなマネーについての相談に乗らせていただいておりますが、最近では、緊急経済対策がようやく出てきたことを受け、税理士や社労士、地元商工会と連絡を取り合いながら、会社のキャッシュフロー(お金の流れ)にもとづく緊急経済対策の活用について対応しています。

 

 キャッシュフローとは何か。

 端的にいうと「お金の流れ」です。

 会社については、損益計算書貸借対照表におけるお金の流れの軌跡であり、家計においては、家計簿と資産表において、これまでお金がどのように流れてきたかを把握するために使います。

 キャッシュフローは「キャッシュフロー表」を作成して始めて、その全貌が明らかになります。

 これを使う目的は、過去のお金の流れについての「現状把握」と、将来におけるお金の流れの「予測(シミュレーション)」です。

 状況を把握し、次の対策の根拠になるシミュレーションを行うことがとても重要ですが、特に、今回の新型コロナウィルス感染症の拡大による経済状況の急変では、日ごろからキャッシュフロー表を作成しているかどうかで、対応のスピードが大きく異なってきます。

キャッシュフロー表(事業者の場合)

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 会社などを経営する事業者の場合、キャッシュフロー表はおおよそこのようなイメージになります。

 その中心は損益計算書(P/L)で構成され、同時に貸借対照表(B/S)の大枠がわかる程度で把握しておくと、会社の「経営成績(≒損益計算書)」と「経営体力(≒貸借対照表)」におけるお金の流れが見えやすくなります。

 緊急事態宣言が出され、経済活動が大幅に制限されるようになっている現状では、事業者にとって、会社の継続についてどのように対応すべきか思案のしどころです。

 直近で経営状況がかなり厳しくなっているような会社では、取り急ぎ緊急経済対策を活用する必要がありますが、比較的まだ余裕がある会社においては、現状を把握しながら、どの緊急経済対策を活用するかを思案する時間的な猶予があるかもしれません。

 このような会社の場合、過去から実績として積み上げてきたキャッシュフローが物を言います。

 例えば、緊急経済対策で盛り込まれた日本政策金融公庫からの融資ですが、金利が年率▲0.9%優遇される「特別貸付」や、無利子・無担保で融資を受けられる「特別利子補給制度」というものがあります。

 これらは借入れであるため、将来的には返済負担が生じます。

 キャッシュが今すぐ必要という会社の場合、躊躇なく融資を受ける必要がありますが、そうでない会社の場合、売上や経費の推移予測をある程度見定めながら、どのタイミングで、いくらの融資を実行するかを決めていかねばなりません。

 また、社員・従業員の雇用を守るために「雇用調整助成金」という制度を活用する会社もあるでしょう。

 これについても、融資と同じく、売上や経費の状況予測に応じて申請のタイミングを計っていく必要があります。

 なぜ、このようなタイミングを計る必要があるのかというと、融資においては返済負担が発生し、かつ、融資が実行されるまでに時間がかかるからです。

 また、雇用調整助成金についても、会社に助成金が支給されるまでに相応の時間を要します。

 このとき、重要なのがキャッシュです。

 つまり、手元資金ですが、例えば、現金や預金、売掛金など、すぐに手元に準備できるお金です。

 中小企業、特に、零細や個人事業主といった小規模企業者の場合、手元資金が十分に備わっていない傾向があります。

 このため、キャッシュフロー(お金の流れ)を見る場合、損益計算書における、「売上」、「経費」、「純利益」だけでなく、貸借対照表における、「資産」、「負債」、「純資産」についても、頭の中に入れ、どの緊急経済対策を活用するかを決断していく必要があります。

 少しかみ砕いて言うと、「売上の程度」や「経費の状況」、これらの差額である「純利益の予測」を立て、不足する金額に対して「資産(キャッシュなど)の状況」がどうなっているかを把握しながら、融資や雇用調整助成金などの緊急経済対策について考える必要があるということです。

 キャッシュフロー表は会社経営の羅針盤とも言える存在です。

 お金の流れを把握しイメージできていれば必ずしもなくてはならないものではありませんが、これをしっかりとつけることで、お金がどのように流れ、これからどのように流れるかが見えてきます。

 とにかく、キャッシュフローを頭の中で描くことができなければ、現状の把握すらできず、対策も立てられなくなるため、このような意味でキャッシュフローの把握は必要不可欠なものとして位置づけられています。

 

 キャッシュフロー表は、必ずしも、企業会計だけに必要なツールというわけではありません。

 家計においても同様のことがいえます。

キャッシュフロー表(家庭の場合)

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 家庭におけるキャッシュフロー表は、事業者のものと少し内容が異なります。

 基本になるのは、損益計算書(P/L)にあたる「家計簿」です。

 家計簿は、大分類をすると、例えば、会社員のご家庭の場合、給与や賞与が収入になり、支出として、基本生活費や教育関連費、住宅関連費、自動車関連費、生命保険・損害保険の保険料、介護関連費、一時的支出、税・社会保険料と続きます。

 そして、収入から支出を差し引いた純利益をもって、家計簿における黒字・赤字の判断をしていきます。

 今回のような家計の急変に際しては、場合によっては、収入が減り、その結果、純利益が減少、もしくは、赤字になるケースが発生しています。

 このような家計の状況では、純利益の目減りを抑えるために「収入の補てん」と「支出の見直し」が必要になってきます。

 収入の補てんについては、国の示している緊急経済対策の中では、1人当たり10万円の給付金が支給される「特別定額給付金」や、子育て世帯に対し子ども1人につき1万円が上乗せされる「臨時特別給付金」を活用することになります。

 他にも、お住いの自治体における社会福祉協議会から「小口資金貸付」という制度もありますが、これについては、原則、借入れであるため、緊急を要する場合、申請する必要も出てくるかもしれません。

 一方、支出の見直しについては、食費や水道光熱費などの基本生活費だけでなく、教育関連費においては習い事や塾にかかる費用など、住宅関連費においては住宅ローンの返済猶予など、自動車関連費においては車検の期間延長や自動車税の納税猶予など、生命保険・損害保険の保険料においては、保険料の支払い猶予や保障内容の見直し、先取り貯蓄においては貯蓄方法の変更・見直しなど、緊急経済対策も活用しつつ、支出のやりくり全般について検討することも必要でしょう。

 このように、収入と支出についての工夫を行うことで、ようやく、その差額である純利益の目減りを抑えられる可能性が広がります。

 ただし、今のような経済状況はある程度長引く恐れがあるため、状況によっては、それまで貯めてきた預金や運用してきた有価証券などを手元資金化し、これらを生活費にあてがう必要も出てくるかと思います。

 このため、これらのことを総合的に考えた場合、会社経営と同様、家計においてもキャッシュフロー表を日ごろからつけ、お金の流れを把握するクセをつけていくことが求められます。

 

 実務的には、ご相談に当たって、キャッシュフロー表を作成し、課題や問題を解決するための改善策を盛り込んだ提案書を提示させていただいております。

 専門家にしっかりと相談すれば相応の解決に向かうと思いますが、自分なりにお金の流れを見える化し頭の中でイメージできれば、今後の対策についてどうすればいいかのアイデアが生まれてくるので、自分に合った方法で解決の道を探ってみるのもひとつの方法です。

 

 キャッシュフロー表は、過去から未来に向けて、お金の流れを把握するためのツールです。

 大切なのは、頭の中にイメージすること。

 情報量が多ければ多いほど頭の中がごちゃごちゃしてきますが、これを整理してくれるのもキャッシュフロー表といえます。

 日々の生活においては、さまざまな面で変化を経験していることかと思います。

 時間の使い方も、これまでと比べ随分と変わった側面もあります。

 家計について細かく考えるよりも、今、自分にできることの優先順位を整え、今後に向けて一歩一歩努力していくようにしましょう。

 

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