FP事務所をしている私が、ご相談者さんの家計管理に使ってほしいと思った家計簿。
うちでは妻が、なんだかいつの間にか家計簿をつけていて、自分としては家のことは指示待ち社員のようになっています。
なんせ稼いだ収入は、毎月、年貢のように召し上げられ、わずかばかりのお小遣いをもらうだけ。
そのとき言われるのが、「今月はお疲れさまでした。ありがとう」。
へそくりとか貯めてんのかな。
そして、毎月の締め日に、来月の貯蓄目標額は〇〇円!と宣言されます。
なんだか頼もしい限りです。
妻は、おそらく頭の中で何かが見えていて、毎月の支出や貯蓄額など、お金の流れがイメージできているようです。
FP業務をやっている身としては、会話などからおおよその察しがつきますが、なんだか家計のことをちゃんとやってくれているようなので、あまり余計なことは言わず、そっとしています。
さて、家計簿。
どんな家計簿を使えばいいですか?という質問を時折受けます。
ん~、正直、毎月のお金の流れが把握できればなんでもいいです。
と言いたいところですが、逆に、FP実務で家計診断をする際に、こんなの使ってもらったら仕事しやすいというのを、今日は紹介します。
これは、あの有名な「オレンジページ」が出している家計簿です。
値段は税込みで391円。
家計ノートという名前になってますね。
家計簿じゃなくて、家計ノート。
ここがミソで、やたらとややこしい帳簿のような感じではないよということを強調したいのかもしれません。
ページを開いてみると、実際にそんな感じになっていて、難しすぎず、簡単すぎず、とてもバランスよく構成されていると思います。
どうして、これを使っておいてもらうと、FP事務所としては助かるのかというと、毎月のお金の流れを把握しやすいんですね。
家計簿を自作したことがある方ならわかるかもしれませんが、家計簿をつける目的は、お金を貯めるためではなく、いかに毎月のお金の流れを見えるように工夫するかがポイントになります。
このようなことから、このイメージが流れとして自然にできている家計簿が本当に優れた家計簿といえます。
中身はというと、まず「収入」を記入する欄が一番上に来ています。
その次に「貯蓄残高」の記入欄があり、そして「支出」と続きます。
この家計簿では、今月あまるお金の計算式を次のようにしています。
収入-(貯蓄+支出)=残金
これが見えれば、結果的に「目標貯蓄額」が設定できるようになります。
特徴的なのは「予算」です。
この家計簿では「目標額」と表現していますが、優れた家計簿には必ず「予算」と「決算」の概念が盛り込まれています。
それをここでは、それぞれ「目標額」と「実績」としています。
このふたつがあると、スタート時で「今月のお金の使い方」をイメージでき、また「実際にどのようにお金を使ったか」を後で確認できるようになります。
企業会計では、これは当たり前に行われることですが、家計の世界にこれをシンプルに落とし込んでいるところが素晴らしい点です。
「支出」に目を移すと、「変動費」・「固定費」の概念がしっかりと盛り込まれ、また「クレジットカードの引き落とし金額」までも、あらかじめ記入できるようになっています。
これもかなり重要で、決まって支出されるお金がわかっていると、今月の費用のイメージがわきやすくなります。
変動費については、その時々で変わってくるため、次のページ以降でより具体的に記入できるようになっています。
ここもよく工夫されていて、いつ、何のためにお金を使ったかを費目ごとに記入できるため、買い物などの支出状況を確認しながらお金の使い方を調整しやすくなっています。
ただ、難点なのは、費目について、自分でジャンル分けする必要があることです。
FP実務では、大ジャンルとして、支出の項目を「基本生活費」、「教育関連費」、「住宅関連費」、「自動車関連費」、「生損保保険料」、「社会保険料」、「税金」と大きく分けていき、その後、中ジャンルの費目として、たとえば、「基本生活費」では「食費」や「通信費」、「被服費」などのように、一階層下の分類をしていきます。
ここら辺をあらかじめプロットし、かつ、「予算」の記入欄もあれば、なお良しといったところでしょうか。
それともうひとつ、次ページの費目ごとの欄ですが、何に使ったという意味で「内容」を書くようになっています。
いちいち、何に使ったかを記入してしまうと、かなりの手間になるため、この部分は「内容」ではなく、「支払先」ということで、どこで使ったか、どこに支払ったかをわかるようにするだけで十分かと思います。
ここら辺については、自分で使いやすいように工夫してみてください。
どの家計簿にも良し悪しはあります。
家計簿をつけるコツは、自分で使いやすいように工夫することです。
だから、ガッツリつける必要はなく、あくまでも、自分でお金の流れが把握できればいいだけなので、書店などで売っている家計簿を使う場合、自分にとって書きやすいようにすることがポイントといえるでしょう。
それでは、最近、よく見かける家計簿アプリはどうでしょうか。
実をいうと、これはこれで優れものです。
これで家計簿をつけておいてもらうと、家計診断をする際にFP事務所としては仕事が楽になります。
家計簿アプリについては、何といってもレシートをカメラで撮るだけで支出が集計できてしまう点です。
他にも、金融機関と紐づけることができるものもあるため、銀行の預金残高を瞬時に家計簿に落とし込むことができます。
ただ、これはスマホを使う大きなデメリットでもあるんですが、画面が小さいため見にくいのが難点です。
簡単・便利はいいんですが、家計簿をつける目的は、繰り返しになりますが、「お金の流れを自分の頭の中でイメージすること」にあるので、これを機械に頼ってしまうと、家計の構造が見えなくなるため、家計について自分で考えるという自走が難しくなります。
人間は所詮、アナログな生き物なので、便利すぎると考えなくなるというトレードオフの関係があります。
この点をうまく改善してくれれば、実務的にもよりありがたい存在になると思います。
何はともあれ、家計簿は、それがノートであろうと、アプリであろうと、必ず長所・短所の両面があります。
自分に合った家計簿を見つけ、自分でお金の流れを頭の中にイメージできるようになれば、家計の中で何か問題が起こった場合、その原因を自力で突き止められるようになります。
さて、いかがでしたでしょうか。
自分に合った家計簿、見つけてくださいね。