確定拠出年金。DC世界経済インデックスファンドの運用報告書は、これだけ読めば理解できる!
お勤めの会社で採用されている確定拠出年金制度。
アベノミクスで株価が上昇してきた中、投資信託で運用している方も多いかもしれません。
今回は、2月の株価急落前に「DC世界経済インデックスファンド」に切り替えたというご相談について言及していきたいと思います。
〇今回の記事の目的
投資信託の運用報告書で見るべきポイントを理解する。
〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル
〔老後の貯蓄・資産運用〕
◦投資信託
〇記事の概要
Ⅰ.景気と投資信託の関係
Ⅱ.セオリーが正しいとは限らない
Ⅲ.運用報告書のチェックポイント
Ⅳ.最後に
Ⅰ.景気と投資信託の関係
投資信託には、大きく分けると「株式型」と「債券型」の2種類があります。
株式型と債券型、どちらにするかは、このように考えます。
〇これから景気は良くなるだろう⇒株式型
〇これから景気は悪くなるだろう⇒債券型
株式型は「攻め」、債券型は「守り」というイメージです。
もう少し、法則を掘り下げていきます。
〇景気が良くなる⇒株価が上昇する⇒国債が売られる
〇景気が悪くなる⇒株価が下落する⇒国債が買われる
投資家は、景気の状況に合わせて、どの投資対象に資金を投じるべきかを常に判断しています。
株式の方が国債よりも儲かりそうだと投資家が判断した場合(株式>国債)、株式が買われ(=国債が売られる)、逆に株式よりも国債の方が儲かりそうだと判断した場合(株式<国債)、国債が買われる(株式が売られる)ようになります。
株式と国債にはこのような関係があり、その判断基準になっているのが「将来の景気動向」です。
Ⅱ.セオリーが正しいとは限らない
ここまではなんとなくイメージできますよね。
でも、実際は、投資信託を選ぶ場合、セオリー通りにはいきません。
むしろ、次のような法則が成り立っています。
〇景気が良くなる
⇒株式も、国債も買われる。
〇景気が悪くなる
⇒株式も、国債も売られる。
これは、先進国を始めとする各国の経済政策が「金融政策」を軸に行われるようになっているからです。
特に「金融緩和政策」のもと、市中にお金がじゃぶじゃぶ溢れている状況ではこの傾向が顕著になっています。
お金が余り過ぎてマネーの行き場がなくなっているため、株式も、債券も同時に買われ(売られ)やすくなっているという意味です。
投資をする際は、リスクヘッジといって、万一、相場が逆に動いても大丈夫なように、値動きが正反対の投資先に念のために投資することがあります。
たとえば、1種類の株式しか買っていない場合、株価が上がるなら問題ありませんが、下がってしまうともろに損失を被ってしまいます。
これを避けるために、株式を買ったら、同時に国債も買うことで、どちらに転んでも大丈夫なように「リスク」をコントロールしていきます。
複数の投資対象で運用する場合は、このようにリスクヘッジをするのが常ですが、投資信託のような多種多様な金融商品が開発され、かつ、お金が余りに余っている状況で、その規模は極端に大きくなりました。
この結果、景気が良くなるときも、悪くなるときも、株式と国債は同じ動きをする傾向が強まっています。
むしろ、次のような傾向があることを覚えておいてください。
〇平時では、株式も、国債も同じように買われる(売られる)傾向がある。
〇しかし、相場が大転換するときは、原理原則が発動されやすい。
通常の相場環境ではリスクヘッジが効きやすく、株式も、国債も、同じような扱いを受ける傾向があります。
でも、相場が大きく急変するときは、リスクヘッジがそのスピードに追いつけなくなり、逆に原理原則にもとづいた取引が行われやすくなります。
このようなことから、「平時」と「緊急時(相場の大転換時)」とで分け、運用を行っていく必要があります。
Ⅲ.運用報告書のチェックポイント
それでは、ここまで理解したうえで、今回の題材である「DC世界経済インデックスファンド」の運用報告書を読み解いていきましょう。
運用報告書は、投資信託がどのような方法で運用されているか、その内容を示した取扱説明書のようなものです。
まずここを見ます。
ご挨拶ですね。
ここでのポイントは、
②株式と債券の比率が原則50%ずつになっている
点です。
これを読むだけで、こんな印象を持ちます。
積極的だな
先ほどの法則を思い出してください。
「投資信託ではリスクヘッジされやすいので、株式も、国債も、同じように買われ(売られ)やすくなっている」
このカラクリが、株式:50%、債券:50%の意味です。
つまり、
平時ではリスクヘッジは機能するが、トレンドが大転換するときはヘッジが効きにくくなるためリスクが高い
と読み替えることができます。
次に、ファンドの中身を見ていきます。
こんなことが書いてあります。
国内外の株式と債券に振り分けられて投資されているのがわかります。
比率はというと、国内株式:5.0%、外国株式:30.0%、新興国株式:15.0%で、株式全体の組み入れ比率がちょうど50.0%になっています。
これと全く同じ比率で、各債券にも振り分けられています。
これらはあくまでも約束ごとです。
実際はどうなのかというと、国内株式:5.4%、外国株式:31.0%、新興国株式:16.7%、株式比率合計:53.1%、国内債券:3.4%、外国債券:28.0%、新興国債券:14.6%、債権比率合計:46.0%となっています。
株式と債券の合計比率が99.1%になっているので、残りは他の何かに投資されているんだろうと推測できます。
ここでのポイントは、
先進国の株式と債券に最も多く資金が振り分けられている
点です。
つまり、株式市場に連動するように設計されている投資信託という意味で、ここまでわかると、運用報告書内でベンチマークを見つけに行きます。
ベンチマークは、投資信託が基準にしている「指標」のことです。
DC世界経済インデックスファンドでは、国内株式インデックス・マザーファンドに記載されている「TOPIX」というベンチマークに着目しました。
TOPIXは、日経平均株価指数と同じく、日本を代表する株価指数です。
このタイミングでTOPIXのチャートを作成していきます。
◎DC世界経済インデックスファンドとTOPIXのチャート
黄色のチャートが「DC世界経済インデックスファンド」、白のチャートが「TOPIX」です。
案の定、連動性が高いようです。
これで、DC世界経済インデックスファンドとTOPIXは似たような動きをすることが確認できました。
これが意味するのは、
運用期間中はTOPIXの値動きを気にするだけでいい
ということです。
正直、投資信託の値段(基準価額)なんて、毎日、気にするわけにはいきませんよね。
ただでさえ、仕事や家庭のことで忙しいのに、そんな細かいことまで神経を使う余裕はありません。
だから、テレビのニュースなどでTOPIXの動きだけ1日1回確認すればいいように持っていきます。
これがベンチマークの使い方です。
DC世界経済インデックスファンドについては、ここまで確認できたらおしまいです。
これからどうなるかについては、参考程度にこちらをどうぞ。
fp-office-kaientai.hatenablog.com
fp-office-kaientai.hatenablog.com
4.最後に
一般的には、資産運用にかかりきりになるような時間的余裕はないと思います。
なので、自分なりにどのように情報を入手するか工夫していく必要があります。
王道は、やはり「日本経済新聞」を読むことです。
紙面でも、ネットからでも、どちらでも構いませんが、経済の記事に触れていくと、おのずと経済用語やその意味がわかるようになります。
こうすることで資産運用の判断能力も養われていきます。
「時は金なり」と言いますが、忙しい方にとっては、情報を身につける術がより高い価値を生むのかもしれませんね。