万一の時の財産管理。「資産表」には「財産目録」の意味がある!
FP事務所では、必ず、ご相談時に「家計簿」と「資産表」を作成します。
家計簿を作る目的は、①「お金の流れを見ること」と、②「お金がいくら余るかを見ること」です。
企業会計でいうと「損益計算書:P / L」がこれに当たります。
一方、資産表(企業会計では貸借対照表:B / S)を作るのは、①「資産と負債のバランス状況を確認すること」が目的ですが、実をいうと、もう一つ目的があって、今回はそのお話をします。
〇今回の記事の目的
財産目録を作成し、万一に備える必要性を理解する。
〇関連するファイナンシャル・プラニングのジャンル
〔家計簿・資産表の作成〕
◦財産の管理
◦財産目録の作成
〇記事の概要
Ⅰ.家計簿と資産表
Ⅱ.資産表ってなに?
Ⅲ.資産表のもうひとつの目的
Ⅰ.家計簿と資産表
まず家計簿と資産表について説明します。
◎家計簿・資産表
左側が「家計簿」、右側が「資産表」です。
企業会計では、前者を「損益計算書:P / L」、後者を「貸借対照表:B / S」と呼びます。
家計簿と資産表はこのように使います。
家計簿)
収入-支出=純利益を増やす。
資産表)
資産-負債=純資産を増やす。
つまり、「収入を増やす」、「支出を減らす」、「資産を増やす」、「負債を減らす」の4つの方法を用い、最終的に「純資産が増える仕組みを整える」ことが、家計簿と資産表を作る目的です。
Ⅱ.資産表ってなに?
今回は資産表のお話です。
資産表は、「資産」と「負債」のバランス状況を確認するためのものです。
資産には「安全資産」や「リスク資産」、「不動産」などがありますが、場合によっては「動産」も計上していきます。
それぞれ例を挙げると、安全資産:預貯金、リスク資産:株式・投資信託、不動産:土地・建物、動産:自動車・骨董品といった感じです。
一方、負債は、住宅ローンやマイカーローンなどの「残債」です。
資産から負債を差し引いたものが「純資産」ですが、これがいわゆる「本当の財産」になります。
資産表は、資産と負債のバランス状況を確認するためのものですが、もう少し深堀すると、純資産=「本当の財産」がどうなっているかを見るために存在します。
この点が滅法大事で、この確認ができると「家計の真の体力を知る」ことができます。
うちの場合、純資産はいくらなのか。
=うちの家計の「本当の体力」はどうなっているのか。
これを見るために資産表は存在します。
◎家計簿・資産表
左側の「家計簿」は馴染みがあるかと思いますが、右側の「資産表」は普段あまり意識しないかもしれません。
でも、家計の本当の体力=「家計の財務力」を知る上では、どちらかというと家計簿よりも資産表の方が大事なんですね。
Ⅲ.資産表のもうひとつの目的
資産表を作成するのには、実をいうと、もうひとつ、目的があります。
万一のための財産管理
今回は、この点を一番伝えたいんですが、これを見れば一目瞭然かもしれません。
「財産目録」です。
相続に絡む話なので、1970年以降生まれの私たちにとっては、まだ遠い先のお話です。
でも、FP相談では、通常、ライフプランに従って「キャッシュフロー表」を作成するため、その過程で先ほどの「資産表」が必要になってきます。
まさにこの「資産表」が「財産目録」なんですね。
財産目録には、このようなことを記入していきます。
資産)
◦不動産(土地・建物)
◦現金・預金・債券(国債など)の安全資産
◦株式・投資信託などのリスク資産
◦生命保険など
負債)
◦住宅ローンなどの残債
資産表に載っている内容が、同じく財産目録でも記載されています。
資産表の第一の目的は「家計の本当の体力を知ること」でしたが、二番目の目的は、万一のことが起こった場合に「どのような資産や負債が、いくらあるかを確認できる状況を整えておくこと」にあります。
これには次のような効果があります。
①自分に万一のことがあった場合に備えられる。
②自分の親の相続について考えられるようになる。
最近のご相談事例では、特に②の親御さんの相続について話題が及ぶケースが出ています。
相続は、一般的なイメージとしては「相続税がかからないから、うちの場合は関係ない」と思いがちですが、あくまでも「死亡後の財産の移転」という意味なので、相続税がかかる、かからないにかかわらず、誰しも関係する法律上の手続きです。
このようなことから、事前に財産目録を作成しておくと、親御さんに万一のことがあった場合、スムーズな手続きが行いやすいという利点があります。
Ⅳ.最後に
とはいいつつも、実際、相続について、自分の親と話をするのは心情的に難しいかもしれません。
しかし、高齢化社会が深まっていくこれからの時代、財産目録の重要度はより高まっていくと考えられます。
資産表には「保有財産を管理する」という目的があります。
これが、最終的に、相続時に必要になってくる「財産目録」につながっているんですね。
1970年以降生まれの私たちのこれから。
親御さんの相続をどのように迎えるかを考えることは、自分の相続のときに、子どもたちにどのように財産を引き継いでいくかを考えることに等しい。
資産表には、このような意味が込められています。