結婚してる人、会社員、個人事業主。1970年以降生まれのための所得税改正のポイント。
2018年は「所得税」が話題を呼ぶ年になります。
ポイントは、①「配偶者控除」、②「基礎控除」、③「給与所得控除」の3つです。
ざっくりいうと、
①所得税制が変わっている背景ってなに?
②税制改正はいつからなの?
③税制改正の本質ってなに?
④どんなことが見直されるの?
|所得控除の見直しにおける社会的な背景
現在、この国では、傾向として、2020年を軸に様々な制度改正が行われています。
所得税制についても同じような傾向が見られますが、その背景になっているのが「超高齢化」と「少子化」です。
ご老人が増えて社会保障費が増えていく。
若者の数が減少し、社会の維持に必要な財源が減っていく。
いわゆる「人口減少化社会」にどう向き合うかが所得税制でもテーマになっています。
その中で大きくクローズアップされているのが「働き方改革」です。
既存の働き方を見直す動きが目立つようになっていますが、ここに焦点を当てた税制改正が、冒頭に述べた「配偶者控除」と「基礎控除」、「給与所得控除」という3つの『所得控除』の見直しです。
|所得税制の改正スケジュール
2017年度の税制改正では「配偶者控除の見直し」が決定しました。
そして、昨年12月に閣議決定された「基礎控除」と「給与所得控除」の見直しは2018年度の税制改正大綱に盛り込まれています。
これは今月から始まる通常国会を経て正式に決定され、今年の4月から施行される予定です。
ちょっとややこしいですが、「施行」と「適用」は必ずしも同じ時期に行われるものではありません。
配偶者控除の見直しは2017年度の税制改正により施行されましたが、実際に制度が適用されるのは今年の1月分の所得からです。
また、基礎控除と給与所得控除についても、通常国会で正式に決定されれば2018年4月から施行されますが、適用は2020年分の所得からとなっています。
|税制改正の本質は国家戦略にある
こんなふうに見ていくと、2020年って、やっぱり時代の分岐点になってるんだなぁということがわかります。
配偶者控除の見直しは、女性が働ける環境を整えよう!
基礎控除と給与所得控除の見直しは、会社員などのようにお給料をもらうような働き方以外の働き方も認めていこう!
いろいろな働き方を総動員して、人口減少化社会にしっかりと向き合っていこうという考えが所得税制にも表れています。
根本的には、増税とか、減税とか、そういうことよりも、日本の国家戦略が変わってきていて、それにもとづき様々な制度の立て直しが図られていることの方が大事なのかもしれません。
|見直しのポイントとパターンの理解
さて、傾向を確認したところで、今度は「配偶者控除」と「基礎控除」、「給与所得控除」の見直しについて見ていきましょう。
ざっくりと結論をいうと、
パターンⅠ)
①結婚している
②高所得者ではない
③会社員などの給与所得者は
「減税」
です。
もうひとつ、
パターンⅡ)
「減税」
です。
FP実務としてはこんなふうに考えるんですね。
でも、先ほども述べましたが、増税とか、減税とかよりも、ライフスタイルや働き方の変化に合わせた所得税の改正というところに重きを置いてください。
それでは、それぞれの所得控除について改正点を超簡単に説明します。
配偶者の年収要件が103万円から150万円に引き上げられた。
つまり、配偶者控除(38万円)の適用が受けられる世帯が増える。
⇒減税
〇基礎控除
年38万円から年48万円に引き上げられる。
⇒減税
〇給与所得控除
現行の所得控除から10万円減額される。
⇒増税
この3つのポイントだけ覚えておいてくださいね。
ちょっと所得税の計算の概略を説明します。
①年間の所得を計算する
年収−所得控除=年間の所得
②所得税を計算する
「所得控除」の中に「配偶者控除」や「基礎控除」、「給与所得控除」が含まれます。
計算式に当てはめて考えると、所得控除の金額が増えると、年間の所得が減るため、所得税は減ります。
逆に、所得控除の金額が減ると、年間の所得が増えるため、所得税は増税です。
所得控除が増えると所得税は減る。
所得控除が減ると所得税は増える。
こう考えると、配偶者控除の見直しは、それまで配偶者控除が適用されなかった世帯(配偶者の年収が103万円超150万円の世帯)で減税されることになります。
また、基礎控除の見直しでは、年間38万円から48万円と10万円控除額が増えているので、全世帯において減税ということになります。
でも、残念なのが、給与所得控除です。
お給料をもらっている会社員などの人たちは、一律10万円控除額が減額されるため、こちらは増税です。
ただ、基礎控除が10万円アップしているため、この点において給与所得控除の10万円減額と相殺され、プラス・マイナス・ゼロになります。
ということは、つまり、配偶者控除の適用が新たに受けられる世帯が減税ということになります。
実をいうと、配偶者の年収が103万円を超えている世帯では、これまで配偶者特別控除という所得控除が適用されていました。
これは配偶者の年収に応じて控除額が減額されていく仕組みですが、103万円という年収要件が女性の働き方を妨げているということで、これを150万円まで引き上げるとしたのが配偶者控除の見直しです。
なので、今まで配偶者控除の適用を受けていた世帯では、今回の見直しは関係ないんですね。
このため、厳密にいうと、パターンⅠでは、年間103万円までのお給料しかもらっていなかった配偶者が年間150万円まで働くようになった世帯、もしくは、すでに年間103万円を超えて150万円までお給料をもらって働いている配偶者がいる世帯が減税ということになります。
それではパターンⅡの人はどうでしょうか。
適用を受けられる所得控除は「配偶者控除」と「基礎控除」です。
パターンⅡの人たちは個人事業主やフリーランスなどの人たちなのでお給料が発生しないため給与所得控除はそもそもないんですね。
その代わり、確定申告をする際に「青色申告特別控除(65万円)」があり、これをもって給与所得控除(最低65万円)と同じに見立てています。
ただ、注意しておきたいのは、2018年度税制改正大綱では「青色申告特別控除」の見直しも盛り込まれていて、現行の65万円を55万円に引き下げるとされています(※電子申告により確定申告をする場合は65万円)。
パターンⅡの人の場合、考え方はパターンⅠの人と同じです。
配偶者控除の見直しは、配偶者の年収要件が150万円に引き上げられたので、年間103万円から150万円まで働いている配偶者のいるご家庭で減税ということになります。
基礎控除の増額と青色申告特別控除の減額が相殺されるため、この部分についてはプラス・マイナス・ゼロです。
ただし、確定申告で電子申告をする場合、青色申告特別控除が65万円のままになるので、e-Tax利用者などは減税ですね。
ということは、パターンⅡの人は、青色申告特別控除の適用を受けるために電子申告をすることが減税のポイントになります。
|まとめ
ここまでいかがでしたでしょうか。
2020年に向けて、そして2020年以降も、この国では、国民のライフスタイルや働き方の変化にともない税制が変わっていくことになります。
この背景は、超高齢化と少子化による「人口減少社会」です。
今は2018年。
所得税制では配偶者控除の見直しがスタートし、そして今年は、2019年10月に予定されている消費税率の引き上げを実施するかどうかが判断されます。
2019年は、消費税率が8.0%から10.0%に引き上げられる予定となっている年。
2020年は、基礎控除と給与所得控除の見直しが始まる年です。
他にもいろいろと税制改正は行われているんですが、「所得の再分配」をテーマに税そのものの構造変化がこれからも話し合われることになると思います。
10年前と比べ、5年前と比べ、私たちの生活環境は変わりました。
2020年までのこれからと、2020年以降のこれから。
そして、私たちの暮らしと政治。
人口減少化社会ということで無用に悲観的になる必要はないと思いますが、客観的な事実をもとにどのように暮らしていくかを今年も考えていこうと思います。