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年金がもらえなくなる? 誤解の原因は「特別支給の老齢厚生年金」

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 老後の生活について、ほぼ必ず話題になるのが年金制度。

 正直、説明するのが大変です。

 税金と並び、国民が知っていて当たり前の制度であるはずなのに、あまり周知されていないのか、複雑すぎて理解されていないのか、とにかく知らない人が多いという印象です。

 先日、年金制度について少し詳し目にご説明してきました。

 今回は、そのときにした「年金ってもらえなくなるんでしょ?」という誤解の原因についてお話します。

 公的年金は、現行では国民年金「厚生年金」の2種類があります。

 公務員が加入していた共済年金があったころは3種類でしたが、これが一元化され、現行では2種類にまとまっています。

 国民年金は原則、20歳から加入することになっていますが、厚生年金は一定の条件のもとで働くようになったら加入する必要があります。

 なので、たとえば、20歳で就職した場合、国民年金に加え、厚生年金にも加入することになります。

 つまり、会社員や公務員、パート・アルバイトで一定の条件のもと働いている人は

2階部分:厚生年金

1階部分:国民年金

という2階建ての年金制度に加入していることになります。

 もう少し詳しく言うと3階部分もあるんですが、今回は省きます。

 ここまではある程度理解されているようです。

 

 でも、これ以降が誤解のもとになっている気がします。

 会社員を例にとります。

 就職すると、お給料からこれらの年金の保険料が一緒に天引きされます。

 ここなんですよね。

 会社員の方の場合、「自分が入っている年金は厚生年金だ」という認識があるで、支払っている保険料は厚生年金の保険料だと思っているケースがどうも多いようです。

 

 そうして、ず~っと、年金についてよく知らされないまま、年金が支給される前ぐらいになってこんな言葉に遭遇します。

老齢厚生年金

老齢基礎年金

 老齢とは、老後、一定の年齢に達したらという意味です。

 老齢になってもらえる厚生年金「老齢厚生年金」です。

 それじゃ、老齢基礎年金ってなに?

 老齢になってもらえる国民年金のことを「老齢基礎年金」と言います。

 国民年金は、日本の年金制度の基礎部分に当たるので、このような表現をしているのでしょう。

 あぁ、わかりづらい・・・。

 

 会社員の方は、働くようになってから自分が入っている年金は、ず~っと、厚生年金だと思っています。

 でも、実際は、国民年金を土台にして厚生年金にも入っているため、厚生年金(老齢厚生年金)だけでなく国民年金(老齢基礎年金)ももらえることになります。

2階部分:厚生年金⇒もらえる年金「老齢厚生年金」

1階部分:国民年金⇒もらえる年金「老齢基礎年金」

 このふたつは、原則、65歳から支給されます。

 

 でも、以前は両方とも60歳から支給されていました。

 60歳から支給されていた老齢厚生年金を「特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)」、老齢基礎年金を「特別支給の老齢厚生年金(定額部分)」と呼びます。

 

〇厚生年金支給開始年齢早見表

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 年金がもらえなくなる!と思われるようになったのは、年金制度の大改正が行われるようになってからだと思いますが、60歳からもらえていたこれらの年金が、65歳に向け後ずれするようになっています

 男性では昭和16年4月1日生まれ以前の方、女性では昭和21年4月1日以前生まれの方までが60歳から公的年金国民年金:定額部分+厚生年金:報酬比例部分)を満額もらえています。

 2017年時点での年齢でいうと、男性77歳以上、女性72歳以上の方々です。

 この方たち以降は、まず定額部分(国民年金)の支給開始年齢が徐々に押し上げられ、男性で昭和24年4月2日~昭和28年4月1日生まれ以降の方、女性で昭和29年4月2日~昭和33年4月1日生まれ以降の方から定額部分が消え、国民年金部分は65歳から支給される老齢基礎年金のみとなっています。

 2017年時点の年齢でいうと、男性:65歳~68歳、女性:60歳~63歳です。

 そして、この世代を過ぎると、残されていた報酬比例部分の支給開始年齢も65歳に向けずれ込んでいきます。

 男性では昭和36年4月2日以降生まれの方、女性では昭和41年以降生まれの方からは、とうとう報酬比例部分もなくなり、公的年金(老齢基礎年金+老齢厚生年金)は完全に65歳から支給されるようになっています。

 2017年時点の年齢でいうと、男性56歳以下女性51歳以下です。

 1970年以降生まれの私たちはもちろん、現行の制度では65歳からの支給です。

 なので、現行制度では、年金のもらえる年齢が60歳から65歳に徐々に引き上げられているため、これにともない年金の支給額が減っているというのが正解で、年金がもらえなくなる!というのは誤りです。

 

 ついでですが、人口の絶対数が多い団塊ジュニア世代が定年を迎える前に、おそらく、もう一度年金制度の大改正が行われると考えています。

 その前にもっと早く年金制度を含めた社会保険制度の抜本的な見直しを行う必要があると思いますが、今、議論されているように、私たちが年金をもらえる年齢はきっと70歳からになるんだろうなぁなんて思っています。

 先日、このお話をさせていただき、ご相談者様に「知らないでこのまま過ごしていたら大変なことになっていた」と言われました。

 大変なことになるかどうかは別として、やっぱり税金とか、年金とか、国民が知っておくべき制度はもっと周知させる必要があると思うんですが、どうなんでしょ。

 情報は自ら取りに行けってことなのかっ。

 

 

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