テレワーク・デイ? 職場意識改善助成金(テレワークコース)とは。
最近のカタカナ語。
なんかすっと頭に入ってこないんですよね。
「ダイバーシティー」とか、「テレワーク」とか。
ダイバーシティーは多様性という意味ですが、いつも頭の中を“お台場シティー”が駆け巡る。
むしろ“diversity”って英語で表記された方がすっと頭に入ってくる。
この現象はなんなんでしょうね。
テレワークなんて、電話の仕事?って毎回思っちゃいますが、英語表記は“telework”なので、「あぁ、離れたところで仕事することね」って、こっちの方が頭にすっと入ってくる。
カタカナ語を多用しすぎるとむしろ理解の妨げになりやすいと思いますが、日本人って好きですよね、カタカナ語。
さて、今回は「テレワーク(telework)」のお話です。
今年はもう過ぎちゃいましたが、7月24日は「テレワーク・デイ」です!って、またプレミアム・フライデーが始まったときみたいに、よくわからない日ができたなと思いました。
今、国は、職場を離れて自宅やその他の場所で仕事をしようという政策を打ち出しています。
これは働き方改革のひとつの取り組みですが、テレワーク・デイの位置づけは、2020年の東京オリンピック・パラリンピックのときに交通機関や道路などの混雑が予想されるため、仕事の開始時間を遅らせる必要があり、始業から10時半までの間、企業には一斉にテレワークをしてもらいたいという、一種の大規模実験となっています。
そんなわけで、この実験的な取り組みは、2020年の7月24日(東京オリンピックの開会式の日)まで、毎年、この月のこの日に実施されます。
なるほど、こんなふうに説明されると意味はわかります。
それじゃ、どんなことがテレワークに該当するの?っていうと、
①在宅勤務
②モバイルワーク
③サテライトオフィス勤務
となっています。
①は「家で仕事をする」、②は「PCなどの端末を活用し、社外で仕事をする」、③は「会社ではない別の場所にオフィスを設置し、そこで仕事をする」、こんな違いがあります。
いずれも共通するのはICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の活用です。
必ずしも働いている人みんなにテレワークをしろと言ってるわけではないんです。
テレワークの形態で仕事をしても業務に支障がない会社は、なるべくしてくれたら嬉しいなぐらいの意味です。
テレワークをするようになると長時間労働を強いられるといった懸念もあるようですが、それはまた別の話で、できるところは実施して?ってことなので、日本人の働き方を考えるひとつのきっかけとしてはありなんじゃないかと思います。
自宅で勤務できると家族の顔が見られるし(自分だったら、仕事柄、たぶん集中力は落ちます)、どこかのカフェなんかでPCを使いながら仕事をする(静かな環境ならこれが一番いいかなぁ)、それと自然のある長閑な職場環境で働く(気分転換が図れていいかもしれません)、こんなイメージができますが、働き方改革でのテレワークの位置づけは「生産性の向上」も含まれているので、職種や仕事の内容次第でテレワークの方が生産性が上がりやすい人もいると思います。
ちなみにテレワークの効果を、国はこのように紹介しています。
企業側、従業員側と、いくつかメリットが挙げられていますが、個人的に注目したいのは次の点です。
「企業側のメリット」
非常時の事業継続性(BCP)の確保
「従業員側のメリット」
ワーク・ライフ・バランスの向上
企業側のメリットとしては、「非常時の事業継続性(BCP)の確保」が一番目を引きました。
東日本大震災以来、企業の間で、万一のことが起こった場合の対策を練っておこうという動きが広がっています。
たとえば、地震が起こった場合の避難訓練や帰宅困難な場合に備えて水・食料を確保しておくなどの対策です。
テレワークを実施しているからと言って完全にBCP(非常時の事業継続性)を確保できるのかというと必ずしもそうでもありませんが、ひとつのリスクマネジメントの方法としては有効に働くでしょう。
従業員のメリットとしては、やはり「ワーク・ライフ・バランスの向上」は注目したい事柄です。
特に、自宅で働くことができるメリットは、家族との時間が確保しやすいという点でしょう。
仕事の内容や時間の使い方によっては、逆に効率が悪くなる可能性もありますが、生活の充足感を高めるという点ではメリットと言えるかもしれません。
テレワークを実施するかどうかは、会社の事業性や職務内容、時間の使い方、従業員の特性など、さまざまな点から考えていく必要がありますが、もし事業主の方がうちもテレワークを実施したいという場合、国はこんな助成金制度を用意しています
「職場意識改善助成金(テレワークコース)」というものですが、簡単に内容を見ていきましょう。
1)対象事業主
テレワークを新規で導入、または継続して活用する中小企業事業主
2)助成内容
①テレワーク用通信機器の導入・運用
②保守サポートの導入
③クラウドサービスの導入
④就業規則や労使協定の作成・変更
⑤労務管理対象者や労働者に対する研修、周知・啓発
⑥外部専門家によるコンサルティング
3)成果目標
①評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる。
②評価期間において、対象労働者が在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した日数の週間平均を、1日以上とする。
③年次有給休暇の取得促進について、労働者の年次有給休暇の年間平均取得日数を前年と比較して4日以上増加 させる又は所定外労働の削減について、労働者の月間平均所定外労働時間数を前年と比較して5時間以上削減させる。
4)支給額
①成果目標を達成した場合(補助率:3/4)
1従業員当たりの上限:15万円
1企業当たりの上限:150万円
②成果目標が未達成の場合(補助率1/2)
1従業員当たりの上限:10万円
1企業当たりの上限:100万円
成果目標を見る限り、週1日以上テレワークを実施し、同時に従業員の有給休暇を増やすか、労働時間を減らすとなっているので、従業員にとってはワーク・ライフ・バランスのための制度と言えます。
ただ、事業主にとっては、テレワークを実施することで本当に労働生産性が上がるのかどうかは考えどころだと思います。
労働生産性は「労働者1人が生み出す付加価値の金額」なので、次のような式で表せます。
労働生産性(千円/人)=付加価値/社員の平均人数
社員・従業員を減らさずに労働生産性を上げるには付加価値を上げる必要がありますが、付加価値を向上させる基本は「社員・従業員の能力向上(教育)」です。
テレワークの場合、気分転換や集中力の上昇、時間の有効活用など一定の効果は見込めるかもしれませんが、必ずしも労働生産性を高める抜本的な方法だとは言えません。
このようなことから、テレワークを実施する場合、従業員にとってより働きやすい職場環境を整えることを目的に、他の方法も組み合わせて労働生産性の向上に努めていく方が良いかもしれません。
IT革命以降、生産性の向上が叫ばれています。
ITなどの活用により労働生産性が上がった会社もあると思います。
しかし、その一方で、労働生産性の向上が賃金を抑制しているという問題も指摘され、ITなどが労働生産性を上げる万能薬なのかというとそうでもありません。
労働生産性を高める基本はあくまでも教育にあります。
従業員の能力を開発し、仕事に対する生産性(付加価値)を上げるために、企業は今、何をすべきか。
働き方改革は、そもそもこの枠組みの中で考えられているため、「人への投資」に軸足が置かれています。
テレワーク・デイは、企業が「人材の活かし方」をどう考えるのかに対する大規模な思考実験とも言えます。
果たしてどんな答えが出てくるのか。
2020年までもう少し待つことにしましょう。