FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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酒々井で暮らす。FPが考える空き家にさせない対策とマイホームの活用事例。

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 活力あふれる持続可能なコンパクトシティー、酒々井。

 酒々井町は今、都市計画マスタープランにもとづき、未来に向けた町づくりを積極的に実現していこうと様々な施策に取り組んでいます。

 平成27、28年度と、2年間に渡り、酒々井町商工会青年部の部長を務めさせていただき、また、酒々井町商工会を代表し、酒々井町の景観条例策定委員会の委員としても、行政経験は素人ながら、一事業者として、一住民として町づくりに参画できたことは、私にとって非常に貴重な体験となりました。

 

 文章、かたっ。

 たかだか40歳そこそこの、単にファイナンシャル・プランナー(FP)事務所を営んでいるだけの人間に、いきなり町づくりって言われても・・・って思ってましたが、性格なのか、とりあえずやってみたら面白い、そんな気持ちでワクワクしながら参加してました。

 年度が変わって平成29年度。

 今度は、その縁で「酒々井町立地適正化計画策定にかかる懇談会」のメンバーになってくれませんかとのお誘いを受け、すでに酒々井町商工会青年部の部長任期が終わったにもかかわらずお声掛けをいただいたことに感謝しています。

 

 立地適正化計画は、まさに酒々井町が目指す「コンパクトシティー」を後押しするものです。

 根拠法は「都市再生特別措置法の一部改正」となっています。

 立地適正化計画の目的は、従来の土地利用方針に加え、居住機能や都市機能の誘導を図り、高機能なコンパクトシティーの形成を促進することだそうですが、町並みをどのように位置づけ、住民にとって持続的に住みやすい環境をいかに整えるかに力点が置かれていくように思います。

 前回の景観条例策定員会は、「町」全体の“見せ方”をどのようにするのかという、いわばブランディングのようなもの。

 今回の立地適正化計画策定にかかる懇談会は、「街」の“機能”をどのように有機的に結び付けていくのかの話し合いの場です。

 コンパクトシティーに向けて酒々井町は動き始めていますが、ファイナンシャル・プランナー(FP)事務所としては、やはり「空き家」についての問題を住民の方々と一緒に解決していきたいと考えています。

 

 空き家対策特別措置法が施行され、①倒壊などの危険性がある、②ごみや悪臭など衛生上の問題がある、③景観を損なっている、などの状態にある空き家(特定空家)に対し、自治体が撤去命令や行政代執行による強制撤去(撤去費用は事後請求)を行うことが可能になりました。

 これに加え、行政から勧告を受けた空き家は「固定資産税の住宅用地の特例」の対象から外され、従来、住宅用地で適用されていた「最大1/6の軽減」が受けられなくなり、納付すべき固定資産税の金額が6倍になるケースが出てきます。

 

 このように、空き家を巡る問題は、災害や犯罪、衛星、景観面だけでなく、金銭面でも家計の負担となってくることから、特に、空き家になる前にマイホームをどのように処分、もしくは、活用していけばいいのか対策を練っておく必要があります。

fp-office-kaientai.hatenablog.com

 2017年7月3日にアップした記事ですが、その中で、空き家になる前に打つべき対策として、おおまかに4つの方法を取り上げています。

①取り壊す

②売却する

③誰かに貸す

④活用する

 たとえば、このような世帯を想定してみましょう。

〔57歳男性、会社員|共働き夫婦〕

大学を卒業し、大企業に就職。

学生の頃から親元を離れ一人暮らし。

就職後は会社の寮に住み、バブルの絶頂期である1990年に結婚。

結婚の翌年、第一子が生またのを機に社員寮を抜け出し、マイホームの夢を実現。

マイホームは、通勤のしやすさを重視し、実家のような郊外型の住宅ではなく、都内の土地付一戸建住宅を購入。

バブル崩壊後、土地の資産価格が大幅に目減りし、また会社の業績も低下していく中で収入が減り、2000年に金利の低い住宅ローンに借換え。

今の時代を基準に考えれば高額と思えるほどの住宅ローンの残債はまだ払い終えておらず、退職を機に退職金で完済する予定。

老後の生活をどうするか現在考えている最中だが、年金の支給額が減っていると聞き、今まで貯めているお金を含めても、退職後はしばらく働かないといけないのか思案しているところ。

父親はすでに他界し、認知症の可能性や体の不自由が目立ち始めている母親が心配。

実家に一人で暮らす母親を自宅に招いて一緒に暮らすか、それとも介護施設に入所してもらうか、家族と相談しながら決めていきたい・・・。

 このようなご家庭の場合、問題点は4つです。

①借り入れていた住宅ローンの額が多すぎるため、老後の貯蓄が上手くできていない可能性がある。

②母親の介護をどのようにすべきか考える必要がある。

③仮に母親を自宅に迎えた、もしくは介護施設に入所してもらった場合、家計の支出が増えてしまう。

④③の場合だけでなく、母親に万一のことがあった場合も含め、将来、実家が空き家になるのは確実である。

 それぞれの自治体で空き家問題を解決するのが難しい理由に「所有者側の問題」が挙げられます。

 国土交通省の「平成 26年空家実態調査」によると、所有者が「空き家にしておく理由」として、「解体費用をかけたくないから」(39.9%)という理由が 2 番目に高くなっています(1 位は「物置として必要だから」44.9%)。

 空き家の解体費用は、一般的に100万円~200万円程度かかり、また解体した場合、土地が更地になるため「固定資産税の住宅用地の特例」が解除され、納税額が増えることになります。

 このようなことから、前述した57歳男性のようなご家庭では、いずれ来る空き家問題への対策を考えておく必要がありますが、①老後の生活資金、②親の介護、③老後の家計支出の増加、の3つの大きな金銭的な問題が同時に発生するため、どうしても空き家対策が後手に回ってしまいます。

 

 このような空き家予備軍といわれるご家庭の問題をどのように解決するのかが、私たちファイナンシャル・プランナー(FP)事務所の務めですが、まず重要なのが「老後の資金シミュレーション」です。

 前述のご家庭の場合、ライフステージは「退職準備世帯」に当たりますが、これは一般的に、お子さんが独立し、夫婦ふたりで暮らしているような世帯です。

 ライフプランにおける資金シミュレーションでは、キャッシュフロー表と呼ばれる「収入・支出・資産・負債」の4つのお金の流れが今後どのようになるのか見える化していきます。

 このご家庭の場合、キャッシュフロー表の中に「親の介護」と「空き家への対策費用」をプラスし、シミュレーションを施していきますが、あくまでも予測に過ぎないため、シミュレーションの精度を高めることを目的に、物価の状況を加味した3つのモデル予測(ポジティブ・ノーマル・ネガティブの3段階の予測)を行います。

 これらの予測の中で問題点が浮かび上がってきますが、この問題点についてどのように改善すべきかの策を施したものが「マネープラン(提案書)」と呼ばれるものです。

 空き家への対策も、もちろんマネープランの中に盛り込まれていきますが、この段階で、前述した①「取り壊す」、②「売却する」、③「誰かに貸す」、④「活用する」、の4つの手段のうち、どれを採用するか決めていきます。

 

 さて、ここからが今回の本題ですが、酒々井町の場合、「活力あふれる・持続可能な・町づくり」をスローガンに掲げており、空き家対策にも自治体として積極的に取り組んでいく方向で動いています。

 このことを踏まえると、空き家対策の4つの解決策のうち、③「誰かに貸す」、④「空き家を活用する」という選択肢も十分考えられますが、どうすればいいの?と思ってしまうかもしれません。

 マネープランでは、これらの方法も盛り込んでいきますが、小さい自治体にもかかわらず、消滅危惧都市ではないという酒々井町の特徴を活かす場合、「住空間の演出」がキーワードになってきます。

 簡単に言うと「住みやすさ」です。

 住みやすさは「暮らしやすさ」と言いかえることができます。

 酒々井町の場合、面積が狭いにもかかわらず、JR酒々井・JR南酒々井・京成酒々井・京成宗吾参道と4つの駅が存在し、成田空港経済圏の中で県庁所在地である千葉市にもアクセスしやすく、また東京まで1時間少々で足を運ぶことができるという立地にあります。

 さらに、暮らしやすさを言えば、県下随一の上下水道が整備され、保育園・幼稚園・小学校・中学校・高校と教育環境も整い、近々徳州会系の大型病院もできることから、医療面での充実が進んでいきます。

 加えて、酒々井プレミアム・アウトレットといった大型のショッピングモールや酒々井インターチェンジも開業し、身近に自然を有しながら、都市機能がコンパクトに集中していることも特徴のひとつと言えるでしょう。

 

 何よりも、ファイナンシャル・プラニングの観点から言えば、土地の価格が隣の成田市佐倉市と比べお手頃となっており、10年前と比べ現役世代の年収が減っている所得環境の中で、生涯支出に占める不動産関連支出を少なく抑えられることから、特に子育て世帯や若年世帯にとっては、「子育てしながら老後のお金を貯められる」というメリットがあります。

www.o-uccino.jp

 このような点に着目し、空き家問題についての解決策を考えた場合、

酒々井町の推計によると、高齢化により人口は多少減るが、大幅に減らない。

コンパクトシティーとしての町づくりが進み、酒々井町の魅力が少しずつ高まる。

の2つの理由から、空き家を眠らせたままにするのではなく、「貸す」、もしくは、「活用する」という答えが導き出せます。

 

 戦後、日本人には、高度経済成長期における国の施策で「マイホーム信仰」が定着しました。

 この理由は、経済が成長していく過程でマイホームの資産価値も上がっていったからです。

 マイホームを買うと得だ、お金持ちになれる。

 バブルが崩壊し、デフレ経済真っ只中の今から考えると、単なる幻想に過ぎませんが、マイホーム信仰があるため、家を「資産」と考えたがる傾向が未だ根強く残っています。

 家の考え方は、このように分けると整理しやすくなります。

①家は「消費」するもの⇒家は「生活コスト」

②家は「投資」するもの⇒家は「資産」

 ①の価値観の人は「賃貸で住む」、②の価値観の人は「持ち家を買う」といった傾向があります。

 賃貸で住む場合、大家さんに家賃を払います。

 つまり、家賃は生活をするうえでの単なる支出に過ぎないため、価値観としては「家は使うもの」であるという発想です。

 これに対し、持ち家を買う場合、マンションや戸建てにかかわらず、家は資産になります。

 つまり、自分の所有財産になるため、価値観としては「家は保有するもの」という発想になります。

 マイホーム信仰はどちらかというと②に当たりますが、この考え方が根強いため、空き家問題が解決しづらいという指摘があります。

 家は確かに資産です。

 これはマンションでも戸建てでも同じですが、マンションの場合、建設コストの中にディベロッパーの土地調達価額が含まれ、また戸建ての場合も、土地とあわせて購入するのが一般的です。

 しかし、建物の価値は年々目減りしていきます。

 一戸建てよりもマンションの方が目減りの程度は少ない(住居がコンクリート造りであることや、そもそもマンションの購入代金に土地代も少しだけ含まれているため)ですが、本来、建物は人間が造ったものである以上、土地のように固有の価値がないため、帳簿上は減価償却されていきます。

 

 このように持ち家の場合、マイホームは減価していくため、特にバブルの絶頂期に買ったご家庭では、バブル期と比べると、今の地価水準では極端に安い値段でしか売れなくなっています。

 でも、売り手としてはなるべく高く買ってもらいたい。

 空き家の売却が難しくなっている理由はここにあります。

 マイホーム信仰で家を「資産」として買い、住み続けることで家がいつの間にか「生活コスト」となり、処分する段階で家をまた「資産」として考える。

 このように、マイホームを「資産」と「生活コスト」の間で揺れながら捉えてしまうので、マイホームの出口戦略が描きにくくなってしまいます。

 「資産」なら「資産」と決め、買うときは価値を認め、住んでいるときも価値を意識し大切に使い、処分するときは資産価値が保たれているとするのが最善の方法と言えます。

 

 先ほどの退職準備世帯のような場合、空き家になるかもしれない実家をどのように扱えばいいのかがリタイアメント・プラニング(退職後の生活設計)の課題のひとつになります。

 誰も住まなくなる家は、この人にとっては固定資産税や管理・維持費などのランニングコストがかかる、単なる「生活コスト」になっています。

 にもかかわらず、売れたら少しは家計の足しになるということで「資産」としての考え方も持っています。

 解決策として、③「誰かに貸す」、④「活用する」を選ぶ場合、空き家は資産であると考えるべきです。

 資産価値を高め、そのうえで生活コストの軽減を図っていく。

 このための方策が、

リフォームやリノベーション

です。

 リフォームやリノベーションをした後に誰かに貸しても、有効活用してもいいと思います。

 逆に、借り手や有効活用したいという方のニーズに合わせて、リフォームやリノベーションを施すのもありだと思います。

 要は資産価値を高めたうえで、プチ不動産経営をするということです。

 生活コストの軽減を図っていくことが目的なので、借り手や有効活用をする人が、どのようなコンセプトで資産価値を高めてくれるのか、それが最も重要になります。

 酒々井町の場合、「活力あふれる持続可能なコンパクトシティー」をスローガンに掲げているため、前述した町の特徴も含め、空き家になんらかのコンセプトが付加された場合、不動産に生き生きとした輝きが生まれ、町の未来に貢献できる拠点のひとつになる可能性があります。

 実際、東酒々井の住宅街の中に、女性を限定にしたシェアハウスも誕生し、また、酒々井町商工会青年部の仲間である一級建築士が国際交流シェアハウスの事業を手掛けようとしています。

 酒々井町の自然や歴史、観光拠点を活用し、空き家を旅行者に使ってもらう民泊事業の可能性も秘め、酒々井町の域外からの人口流入経済振興が実現しやすくなる土壌がこの町に整いつつあります。

 

 ここで少し、町内のシェアハウス事例を見ていくことにしましょう。

酒々井町にあるシェアハウス事例①〕

www.hituji.jp

酒々井町にあるシェアハウス事例②〕

www.hituji.jp

 ポイントは、「コンセプト」です。

 空き家をどのような目的で、どのような価値観の人たちに提供していきたいのか。

 先ほどのシェアハウスの例の場合、四季折々の木々を楽しみながら、気軽に安心して女性に住んでもらいたい、外観はレトロな雰囲気を維持し、内装を落ち着いた仕上がりのリノベーションで覆い、そこに住む人たちの住まいへの感性を、ここに住むことでより引き出してあげたいといったメッセージ性を感じます。

 従来型の賃貸物件の場合、同じような部屋、同じような間取り、そして貸し手目線の賃料と、必ずしも借り手のニーズを満たしているとは言えない契約内容でした。

 大家さんにとって物件は、家賃以上の価値はなく、貸し家・貸し部屋という単なる箱ものに過ぎませんでした。

 それが今や、コンセプトという新たな価値を付け加えることで、大家さんにとって資産形成の有意義な手段になりえています。

 

 自治体が設けている住宅関連の補助金制度も、これを後押ししていると言えるでしょう。

 酒々井町住宅リフォーム補助金制度 | 酒々井町ホームページ

 酒々井町では、住宅をリフォームした場合、住宅改修関連費用のうち、最大で10万円の補助が受けられるようになっています。

 ただし、これについては①酒々井町に居住し、住民基本台帳に登録されている、②町税などの滞納がない、といった要件があるため、前述した退職準備世帯のようなケースでは申請できませんが、借り手のメドをつけ、その後でリノベーションをし、他所に引っ越すという方法を取れば、補助金の申請を受け付けてもらえる可能性があるため、空き家対策を施す際は、事前に確認するようにしましょう。

 

 このように、③「誰かに貸す」、④「活用する」を空き家にならないようにするための対策として選択した場合、酒々井町では、私たち住民も、これから始まるコンパクトな町づくり戦略の一翼を担うことができるようになります。

 酒々井町商工会青年部の一員として、また酒々井町でファイナンシャル・プランナー(FP)事務所を営む者として、この町が未来に向かって持続的に発展していくための努力をしていく必要があると感じています。

 行政・事業所・住民の3者が協力して空き家問題を解決していくことが最も重要なのかもしれません。

 酒々井町の未来に向けて、みなさんと一緒に空き家問題について考えていければと思います。

 

 老後の生活やマイホームについてのご相談は

FP OFFICE 海援隊 Webサイト

fpofficekaientai.wixsite.com