「外貨建て個人年金保険」の攻略方法。
老後のお金を貯める方法は、いろいろ。
預貯金や貯蓄性の保険、国債、外貨預金、投資信託、株式、金、不動産投資など、挙げると切りがありません。
最近では、NISA(少額投資非課税制度)や確定拠出年金(日本版401k)の広がりを受け、優遇税制を活用した資産運用も少しずつ定着してきているように思えます。
ただ、問題なのは
金融商品について、内容がよくわからない!
ことです。
こんな方のために、企画モノですが、たま~に金融商品の攻略法をお伝えしていくことにします。
今回は「個人年金保険」です。
中でも、
外貨建て「個人年金保険」
について、あまり内容を理解せず加入されている方が多いので解説してみます。
その前に、通常の個人年金保険の仕組みから見ていきましょう。
個人年金保険は一般的に、毎月一定額の保険料を払い、それをコツコツ貯めていくことで、ある一定の年齢に達したときに、保険料とその利息分を分割して年金のように受け取る金融商品です。
途中解約せず満期まで保険料を納めれば、保険会社が破たんしない限り確実に年金を受け取ることができるので、老後の生活資金を準備する方法としてはオーソドックスな手段と言えます。
また、個人年金保険料控除という所得控除があり、年金の受取期間を10年に設定している場合、払っている保険料は毎年4万円までその年の収入から控除されるので、家計にとっては節税になります。
このような個人年金保険についてはわかりやすいので、みなさん、すんなり理解しています。
問題は、外貨建ての個人年金保険。
個人年金保険が外貨建てってなんのこっちゃって思いますよね。
まずは、この「外貨建て」について説明します。
〔円建て〕
ある商品をを日本円で購入すること。
〔外貨建て〕
ある商品を外貨で購入すること。
話を簡単にするために「外貨預金」で説明します。
私たちは普通、銀行にお金を預けるときは日本円で行います。
これが円建ての預金です。
難点は金利が低いこと。
日本の銀行にお金を預けても金利が低いからイヤっ!という人は、日本円を外貨(米ドルや豪ドルなど)に換金して、その換金先の国の金利で預金します。
これが「外貨預金」です。
つまり、「日本円をいったん外貨に換金する行為」を「外貨で建てる」=「外貨建て」と言います。
まとめると、外貨建ての個人年金保険とは、
・日本円の保険料が
・外貨に換えられて
・運用される
なので、円安のときはより多くの利益が出て、円高のときはより多くの損失が出ます。
〔攻略ポイント①〕
円安 ⇒ 利益が出やすい
円高 ⇒ 損失が出やすい
ここまでは、為替のお話です。
次に、金利のお話をします。
個人年金保険は「貯蓄性の保険」なので、銀行にお金を預けるのと同じく「金利」が付きます。
つまり、保険会社は、加入者から預かった保険料に一定の利息を付けて、あとで年金のように支給します。
〔個人年金保険の受取年金の内訳〕
保険料の総額+利息の総額=年金の総額
個人年金保険のいいところは、預貯金に比べると金利が少し高いので、あとで受け取る金額が多くなることです。
ただし、銀行の定期預金と同じく、途中で解約すると払い込んだ保険料よりも少ない金額になるので注意しましょう。
外貨建ての個人年金保険も基本的な仕組みは同じです。
ただ、優れているところが、金利が高いことです。
〔攻略ポイント②〕
この理由を理解するために、もう少し個人年金保険について掘り下げていきます。
個人年金保険は一般的に、加入者から預かった保険料を国債で運用します。
国債にも利息が付くので、その利息をもとに、個人年金保険の利息が算出されます。
通常、日本の個人年金保険は、その運用先が日本国債になります。
このご時世、日本国債は金利が世界で一番低いので、得られる利息も少なくなりますが、よその国の場合、日本よりも金利が高くなっています。
これは、日本よりも安全な国がないことの裏返しですが、逆に危険な国ほど金利が高いと覚えておいても差し支えありません。
このようなことから、外貨建ての個人年金保険は、たとえば、米ドルの場合はアメリカの国債、豪ドルの場合はオーストラリアの国債が運用対象になりやすいので、いずれにせよ、日本国債より金利が高く、結果、利息も多くなります。
ここまでの攻略のポイントは、よろしいでしょうか。
①為替変動の影響を受ける
円安の場合は+、円高の場合は-。
それでは、実際の外貨建て個人年金保険を見てみましょう。
マニュライフ生命の「こだわり個人年金保険 外貨建」という保険商品を参考にします。
一応、念のためにお断りしておきますが、パンフレットについては商品案内が目的ではなく、外貨建ての個人年金保険についての一般的な解説が目的ですので、あしからず。
少しイメージをしてみましょう。
〔ポイント〕
①保険料を毎月、積立感覚で納めていく。
②積み立てる保険料は外貨(米ドル or 豪ドル)で運用。
③積立の金利は、外貨預金のように高く設定される。
④満期後は、円に換金され、年金として受け取っていく。
注意点も見ておきましょう。
〔注意点〕
①積み立てている保険料に適用される金利は変動する。
※最低保証基準金利は年1.5%なので、利息面では損失がない。
②積み立てている保険料も、受け取る年金も、解約返戻金も為替変動の影響を受ける。
※円安のときは+になるが、円高になると-になる。
外貨建ての個人年金保険の攻略ポイントと重ね合わせてみると、次のようになります。
〔攻略ポイント①〕
円安のときは+、円高になると-。
〔攻略ポイント②〕
さて、このように見ていくと、金利が高いのはいいですが、為替の変動を受けてしまうことについては、老後の生活資金を準備するに当たって不安が残るかと思います。
〔攻略ポイント③〕
外貨建ての個人年金保険は「余裕資金」で行う。
老後の生活資金は、「最低限の生活を送るため」と「余裕のある生活を送るため」のふたつに分けて考える必要があります。
外貨建ての個人年金保険はリスクのある(=不確実な)金融商品なので、資金の使い道を「余裕のある生活を送るため」にし、「余裕資金」で運用するようにしましょう。
fp-office-kaientai.hatenablog.com
「いっそのこと捨ててもいいお金と割り切る」とよく言われますが、余裕資金とはそういうことですよね。
ここまで踏まえて最後に最も重要なのが「為替の動向」です。
つまり、“長期的”に「円安」になるのか、「円高」になるのかです。
〔円/ドル〕
〔円/豪ドル〕
どうですかね。
個人的には、米ドルも、豪ドルも、テクニカル面では短期的に円安、中・長期的には円高になっていく可能性を予測しています。
〔攻略ポイント④〕
円安・円高のトレンドを見極める。
ここが最も難しいポイントですが、外貨建ての個人年金保険は、案内されるときに「保険商品」として勧められてしまうので、つい普通の保険と思ってしまいます。
でも本当は、外貨建ての個人年金保険は「リスク(=不確実性)のある金融商品」なので、株式や投資信託などと同じく「資産運用」商品と位置づけられています。
このようなことから、相場の変動を予測したうえで加入するかどうかの判断をする必要があります。
それにしても、このマニュライフ生命の「こだわり個人年金保険 外貨建」。
パンフレットに書いてある内容だと、基準金利がだいたい3.0%ぐらいで推移していて、なおかつ、途中解約せず、長期の運用を心掛けると、金利が複利計算であるため、仮に満期時までで多少の円高になっても、最終的には大きな利益が得られるというシミュレーションになっています。
このシミュレーションのもとで仮に25年間運用したとして、1年当たりの利回りを計算すると年率約4.57%。
1990年に始めて2015年で満期を迎えたというシミュレーションですが、円高の影響を相殺してもこの年利になっています。
基準金利3.0%での複利計算の効果がいかに大きいかがわかります。
資産運用の世界とは元来こういうことで、別の言い方をすれば、老後の生活資金を余裕資金で増やしていくとはこのようなことを言います。
日本人の金銭感覚の弱点は、資金に余裕があるにもかかわらず、よくわからないということで投資の機会を逃してしまうこと。
つまり、リスクを取りたがらないことが最大の弱点と言えますが、リスクとは単に「不確実」なこと。
不確実であるならば、その部分を見ようとすれば、おのずと自分なりの確実性が生まれてくるものです。
話は変わりますが、高齢化社会ってどんな社会でしょうか。
生産年齢人口(15歳~64歳までの人口)が減少する社会です。
生産年齢人口が減少していく社会では、必然的に税金や社会保険料の負担が増え、家計のコストが上がっていきます。
消費税が上がったり、厚生年金の保険料が上がったりで、みなさん、なんとなく実感してますよね。
結果、国民が消費する力は弱まり、企業収益や家計収入の伸びが鈍化していくので、貯蓄しにくい家計が当たり前になっていきます。
すでにそういう状況になっていますが・・・。
これを緩和するために、国は今、景気を良くするための政策を推し進めています。
その中で掲げられているのが「貯蓄から投資へ」。
世の中に眠っているお金を外に出し、みんなでお金を回していこうというのがこのスローガンの狙いです。
外貨建ての個人年金保険の場合、お金は国の外に出て行ってしまいますが、他にも資産運用の方法はたくさんあります。
国が繁栄する投資とは何か。
こんなことを考えながら資産運用をしてみるのも面白いかもしれません。