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金融庁の報告書問題。老後の暮らしはアクティブシニア期と終活期とに分けて考えると組み立てやすくなる!

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 老後の生活は2,000万円不足するという金融庁の報告書の件。

 「老後のお金が足りない」やら、「年金制度が破綻している」やら、いろいろと物議を醸していますが、FPとして、この報告書を読んでみると、結局、こんなことでした。

 参考)高齢社会における資産形成・管理(金融審議会)

75歳以降の人生設計(ライフプラン)を真剣に検討しましょう。

 どういうこと?

 この報告書の最大のポイントは、健康寿命後、平均寿命までの生存期間をどう過ごすか」という点です。

 金融庁の報告書によると、2016年の健康寿命は、男性で平均72.14歳女性で74.79歳となっています。

 一方、2016年の平均寿命は、男性80.98歳、女性87.14歳で、それぞれ平均余命が男性8.84年、女性12.35年となっていることがわかります。

 この平均余命期間は、健康寿命を過ぎた期間、つまり、健康に過ごすのが難しい可能性のある期間という意味で、基本的には働かず、年金収入などで生活をしていく期間といえます。

 

 2016年の健康寿命は、男性で平均72.14歳、女性で74.79歳でした。

 これらが仮に、将来、5歳延びた場合、健康寿命は、男性77.14歳、79.79歳になります。

 この健康寿命に先程の平均余命期間を加えると、平均寿命は、男性で85.98歳、女性で92.14歳と考えることができます。

 つまり、今後、おおよそ、75歳以降のいわゆる「後期高齢期」を生きる人が増える可能性があるため、平均寿命までの間のライフプランをしっかりと想定して人生設計を描くようにしましょうというのが、金融庁の報告書における問題提起です。

 そのための方法のひとつが資産運用と言っています。

 

 実務的には、このライフステージを「終活期」と呼んでいますが、この期間は、収入の基盤が年金になるため、それ以外の方法で生活資金を準備する必要があるといった助言をさせていただいています。

 当たり前の話なんですが、国が公式に発表すると、問題が続出するんですね。

 だったら、ちゃんと年金制度について再構築するか、新しい社会保障制度を創ればいいのにと思いますが・・・。

 

 今回、この報告書に目を通して思ったことは、やはり時代が変わっているということです。

 これは、実際のご相談の際によくお伝えすることですが、子どもの教育資金についてです。

 一般的には、子どもの教育資金はというと、保育園・幼稚園から小・中・高・大までと一括りに考えています。

 しかし、本当は教育資金と進学資金とで分けて準備した方が良くて、その違いは、短期的なお金と中・長期的なお金にあります。

 おおよそ中学校までは、どちらかというと、教育資金はランニングコストになります。

 つまり、毎月、支出されるお金と捉える必要があり、この点で短期的な資金と位置づけられます。

 一方、進学資金は高校や大学に向けての文字通り進学費用を指します。

 この意味で、中・長期的に準備していくお金と言えるでしょう。

 

 このように、どの時期を想定して、どのようにお金を用立てるかの見極めが必要ですが、老後についても、実を言うと同じことが言えます。

 老後には、ライフステージの区分けとしてふたつあります。

 ひとつが「アクティブシニア期」、もうひとつが「終活期」です。

 アクティブシニア期は65歳~74歳まで、終活期が75歳以降という区切りですが、前者は健康に過ごせる間、後者は健康に過ごすのが難しくなる時期という意味があります。

 この大きな違いは収入ですが、アクティブシニア期では働くことができるため、年金以外の収入を生み出すことができますが、終活期は、働くことが難しくなるため、年金のみの生活になりやすいというのが特徴です。

 

 ここなんですね、ポイントは。

 ライフステージの捉え方が長寿化によって変化しているということですが、先程の教育資金と進学資金の違いと似たように考えると、75歳を軸に、それ以前のお金とそれ以降のお金の意味合いが違っていることがわかります。

 たとえば、今、30歳の人にとっては、75歳前も、75歳以降も、期間的には同じ長期に思えます。

 しかし、重要なのは、75歳前と75歳以降で残しておいた方がいい金額が異なるため、必然的に準備方法も異なってくる点です。

 もし、確定拠出年金制度を活用し、老後の生活資金を準備しているという場合、この制度では、原則、60歳から年金が支給されますが、併せて受給期間の設定をすることができます(終身受取の場合を除く)。

 仮に、60歳から75歳まで15年間、年金を受け取るとしましょう。

 この期間は、まだ働ける期間です。

 働く場合、お給料も毎月入ってくるため、比較的生活に余裕が出るかもしれません。

 しかし、75歳以降は確定拠出年金からの支給が途絶えます。

 さらに同時に働けなくなると、家計収入は一気に減少します。

 

 この穴埋めを事前にどのように考えるかというのが金融庁の提言なんですね。

 報告書によると、NISA(小額投資非課税制度)や確定拠出年金(企業型・個人型)などを活用しましょうとしていますが、本当は、75歳以降を想定すると、両方ともふさわしくないかもしれません。

 確定拠出年金は前述のとおり、一般的に受給期間を設定するため、期限付きの受け取りです。

 また、NISAは、非課税期間が5年で、終了後ロールオーバーすることができるため有効と言えますが、何年先までこの制度が継続するかという問題もあります。

 このようなことから、節税効果を得ながらNISAや確定拠出年金を活用し、それぞれの非課税限度額や拠出限度額を超える分については、別に他の方法で貯蓄・運用するというのが理想的です。

 まとめると、75歳までの生活についてはNISAや確定拠出年金をフル活用、なお余るお金については75歳以降の生活に向けて他の方法で準備していくといったところでしょうか。

 

 1970年以降生まれの私たちは、おそらく75歳までは、一般的に、①お給料など、②公的年金、③企業年金、④NISA・確定拠出年金などの取り崩しを主な家計収入と見立てておくことになると思います。

 そして、75歳以降は、①公的年金、②退職金を含めた貯蓄の取り崩し、③その他貯蓄・資産運用の取り崩しまでできると安心度がより高まると言えます。

 

 あくまでもお金の話なので、実を言うと、ある程度把握すれば、一般的にはですが、家計面での解決の糸口は見つかると思います。

 ただ、金融庁の報告書の趣旨は「75歳以降のライフプラン(生活設計)を描きましょう」ということなので、生活資金の準備以外の人生設計における課題にも目を向ける必要性があると指摘しています。

 家族とのかかわりは?、地域でどのように過ごすか、介護は?、認知症は?、住まいは?、などなど、総合的に人生設計を描く大切さを浮き彫りにさせてくれています。

 最終的には「幸福度」ってことなんでしょう。

 個人的にはコミュニティーがかなり重要な要素になると思いますが、ここを中心に考えると、国が、将来、どのようなことを想定しているかが見えやすくなり、ここに老後の意味が隠されているような気がします。

 

 今回の「金融庁の報告書」に関する問題。

 あまり短絡的に捉えてしまうと、本当に大切なことが見えなくなるのではないでしょうか。

 

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