どうせ消費税が10%になるんなら、物価の歴史をわかったうえで納得したい。増税後の家計、どう考えればいいの?
日経新聞でこんな記事を見かけました。
結局、予定通り消費税率を10%に引き上げるだろうという内容です。
個人的には、消費税率を引き上げてしまうと相当マズイと予測しているため、FP事務所として、今後、家計や暮らし向きに関するご相談にどのように対応すべきかを思案しているところです。
長年、経済に接している身としては、政治家の皆さんは、経済の潮流のつかみ方があまり上手じゃないなぁという印象を持っています。
経済を見る際は、「歴史」、とりわけ世界史や日本史といったある程度おおまかな歴史的な流れを身に着けたうえで、世界情勢がどのように進んでいるか、その影響が日本にどのように影響を与えているか、そして、それらが国民生活にどのように表れてくるかを想定しながら、この国の未来を見据え、今、どうすべきかを考えていく必要があります。
だからこそ、このタイミングでしっかりとした検証をした方がいいんですが、もう、消費税率を引き上げる可能性がかなり高まってしまいました。
そうなると、今更、「消費税上げるの良くないよね」と言ったところで、なんとも仕様がありません。
ということで、今回は、FP事務所として、消費税が上がった後の経済情勢について少し触れながら、その後、家計をどのように考えていく必要があるかを考えていきたいと思います。
冒頭にあげたチャートは、総務省が発表している「消費者物価指数(食料及びエネルギーを除く総合)」の時系列チャートです。
だいぶ歴史は長いんですが、1970年代初頭、オイルショックのころは、本当に狂乱物価だったんですね。
消費者物価指数(CPI)が対前年同月比で20%も上がっていたわけですから驚きです。
この背景は、いわゆるイスラエルをめぐる紛争により、原油価格が高騰し、石油関連製品などが高くなったことですよね。
この国のバブルが崩壊したのは1989年。
平成が始まった年です。
この辺でベルリンの壁が取り壊され、ソ連が崩壊、米ソの冷戦が終わりを迎えたと言われています。
この時点では、1970年以降生まれのわたしたちは、まだ高校生以下ですよね。
だから、社会のことをあまりよく知らなかった時期ですが、この年に、消費税が初めて導入されました。
消費税率3%。
世の中の雰囲気は、それでもバブル経済の絶頂期なので、イケイケどんどんだったわけで、3%の消費税なんて微々たるものだったのかもしれません。
しかし、1997年、山一證券が破綻し、ここからいよいよ本格的に暮らしに直結してくるような大きな経済的ダメージが表れるようになりました。
その前に不動産のバブル崩壊も進んでいたので、その影響も山一証券を苦しめたんでしょうね。
この年、もうひとつ大きな社会的な出来事があったんですが、それが消費税率の5%引き上げです。
これ、結構重要なんですが、この前後で世界はというと、タイを発信源とするアジア通貨危機が起こっていて、さらにその後ITバブルが崩壊した時期と重なります。
ここら辺から資本主義の行き過ぎとIT革命による産業構造の変化の影響が世界経済に顕著に広がってきたんですが、国内的には経済の構造問題がより濃く指摘されるようになりました。
そして、その後、世界経済は再び回復し、マネー経済を中心とした新たな潮流が確立され、サブプライムローン問題やリーマンショックを生み出しました。
この過程で経済構造が、良く言えば自由化、悪く言えば空洞化ということになると思いますが、これがこの国の経済の二極化として捉えられるようになりました。
次に来たのが東日本大震災です。
復興がスローガンに掲げられ、その後、経済を本格的に立て直す必要があるということでアベノミクスが始まりました。
アベノミクスは、第一次と第二次に分けられますが、第一アベノミクスは2013年から、第二次アベノミクスは2015年からです。
このふたつの違いは、以前のブログでも書きましたが、第一次アベノミクスでは「金融政策(金融緩和)、「財政政策(財政出動)」、「成長戦略」であったのに対し、第二次アベノミクスでは「強い経済」、「少子化対策」、「安心の社会保障」に主な政策課題が変更されました。
この過程で2014年、消費税率が5%から8%に引き上げられました。
こんな流れが、ざっとですがあるんですね。
今度は消費者物価指数と消費税の関係性を追っていきます。
増税と物価の関係ですね。
チャートで確認すると、消費税が始まったときは、消費税率3%引き上げの影響はあまりなかったといえます。
このころはまだバブっていたので、人々はお金を使っていたんでしょうね。
実体経済ではお金は回っていたけど、資産市場では株式市場の暴落が進んでいた時期です。
時代が進み、1997年、消費税率が5%に引き上げられた後は、世界情勢も相まって消費者物価指数の落ち込みは激しかったといえます。
ちなみに、消費者物価指数が増税後一瞬上がっているのは、増税した分の影響が消費者物価指数に表れているからなんですが、通常、年貢が重くなると経済は悪くなるというのは、どの時代の歴史でも同じです。
そして、2014年4月、消費税率が5%から8%に引き上げられました。
このときの消費者物価指数への影響はやはり大きかったんですね。
その落ち込み幅は、実をいうと、リーマンショックの後の落ち込みよりも深くなっています。
そして、第二次アベノミクスに切り替わり、2019年10月、予定通り消費税率を8%から10%に引き上げようとしています。
となると、消費者物価指数はどんな動きになるんでしょうね。
普通に考えて、年貢が重くなるので、企業にとっても、家計にとっても、お金の流れは鈍くなります。
つまり、消費が回りにくくなるので、消費者物価指数は下がるということですよね。
もちろん、増税後は一瞬、増税分、消費者物価指数は上がりますが、一時的なものです。
その後は下落するため、その下落率を抑制するために、景気刺激策を実行していこうと考えているわけです。
ここまではなんとなくイメージできますよね。
景気刺激策を見ると、「保育園や幼稚園の無償化」、「キャッシュレス決済によるポイント還元」などがよく報道されていますが、他にも、住宅購入者向けには「住宅ローン(住宅借入金等特別控除)の3年延長」やら、「すまい給付金の拡充」やら、「自動車税の減税」やら、細かく見ていくと、結構、いろいろ打ち出されています。
何よりも「軽減税率」が一番有名ですかね。
「じゃあ、消費税上がっても別に大丈夫じゃん」って思いますが、消費者物価指数の話をしているので、今までの傾向を見てみると、おそらく、目先は上がり、その後、一定の水準まで下がり、元の水準に戻るのに3年ぐらいはかかると見て取れます。
ましてや、今後、世界経済が悪化していくという懸念があるため、この点は盛り込んで考えておく必要があるでしょう。
ということは、回復までにより時間がかかる可能性があるということです。
これが、「増税後、デフレ経済がさらに長期化する」と言われる所以なんですが、ここまで見越して家計について考えておく必要があります。
家計について考える際は、今後、ここが最重要ポイントになります。
賃金の上昇率が消費税の上昇率を上回るか
すごく当たり前のことなんですが、お給料の伸び<消費税率の伸びの場合、必然的に家計の中で余るお金は減ってしまいます。
つまり、
給料の伸び >消費税率の伸び ⇒ 問題なし
給料の伸び< 消費税率の伸び ⇒ 問題あり
を頭の中にイメージしておくことがとても大切なんです。
生産年齢人口(15歳~64歳までの人口)が減少していくだろうと言われている人口減少社会であるなら、なおさら、将来的に「問題あり」のご家庭が増える可能性が高いんですが、これを念頭に置きながら家計運営を図っていく必要があります。
みんながみんなそうってわけじゃないんですけどね。
家計について考えるときは、「収入」・「支出」・「資産」・「負債」の4つの視点を持つ必要があります。
ポイントは、収入から支出を差し引いた「純利益」と、資産から負債を差し引いた「純資産」がどうなるかです。
お給料の伸びが消費税率の伸びを上回るご家庭の場合、純利益が増える、つまり、お金が余りやすくなるため、短期的にはそれほど問題はないでしょう。
また、余ったお金を資産に回しやすくなるため、資産から負債を差し引いた純資産も増加傾向に持って行けます。
なので、この面でも、短期的にはそれほど問題はないと判断できます。
しかし、お給料の伸びが消費税率の伸びを下回ってしまうご家庭では、その逆です。
支出が増えるので、収入から支出を差し引いた純利益は減り、その結果、資産に回せるお金も減り、純資産はマイナス傾向になる可能性が高まるでしょう。
なら、どうするか。
ここを考えるのが「家計のやりくり」ですが、これについても、「収入」・「支出」・「資産」・「負債」の4つの視点で具体的に考える必要があります。
〇収入を増やすにはどうするか
〇支出を減らすにはどうするか
〇資産を増やすにはどうするか
〇負債を減らすにはどうするか
あまり難しく考える必要はないとは思いますが、我が家として具体的にどうすべきかを「我が家に合った方法」で考えていくことが、今後、より重要になってくるでしょう。
遠い先の話は正直、よくわからないですよね。
でも、少なくともはっきりしていることは、国の描く方向性にもとづいて、良くも悪しくも家計が左右されているという現実です。
ならば、先を読み、先回りをして対策を打つ。
増税後は、今までよりもこの視点を持つことが大事ってことですね。