FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

これからの時代、変わりゆく常識を少しだけ早くキャッチし、人生に活かしてみる。

次の国政選挙では、与野党問わず政治家の方たちに、「アベノミクスとは、いったい、何だったのか」について、しっかりと評価し、課題を訴えてほしい。それすらせずに、消費税を上げた場合、おそらく、もう10年デフレは続く。

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 最近、なんだか、衆参同日選挙になるかどうかが注目されているようです。

 いつ?みたいな話や憶測が流れていますが、国会の会期末である6/26(水)を過ぎて6/28(金)・6/29(土)のG20が終わってから?っていうのが取りざたされています。

 メディアってこういうの好きですよね。

 そんなことよりも、アベノミクスの評価と課題分析を行い、消費税の引き上げについて、もっと議論を深めてほしいんですけど、もう上げる方向で動いてるから上げるよねみたいな空気になってるようなので、なんだかなぁと思っています。

 

 もともと、安倍政権が行っている「アベノミクス」の目的は「デフレからの脱却」です。

 第1次アベノミクスと第2次アベノミクスっていうのがありましたよね。

 第1次アベノミクスは、第1の矢が「金融政策(金融緩和)」、第2の矢が「財政政策(財政出動)」、そして第3の矢が「成長戦略」でした。

 その後、消費税率を8%に引き上げてしまい、消費が急速に冷え込み、経済成長の戦略が描けていないからダメなんだ!に話がすり替わり、第2次アベノミクスが始まりました。

 第2次アベノミクスでは、第1の矢が「強い経済」、第2の矢が「子育て支援」、第3の矢が「社会保障」ということで現在に至っています。

 第1次アベノミクスの3本の矢が、第2次アベノミクスの第1の矢である「強い経済」にまとめられちゃって、あとは「子育て支援」と医療・介護・年金などの「社会保障」って感じになっているってことですね。

 

 なんで言うほど、景気が良くなっていないのかって思いません?

 

 ひとつ目の問題は、アベノミクスという、そもそもの経済政策が、「経済政策+福祉政策」でワンパッケージにされちゃっていることだと思います。

 経済政策は、企業や家計にとっては売上や収入を増やすための手法、一方、福祉政策は、経費や支出を減らすのが目的ならいいんですが、逆をいっちゃって、経費や支出を増やすための手法になっているため、必然的に企業や家計にとっては、デフレ状況にある中では、目指すべき純利益の改善がどうしても十分でなくなります。

 たとえていうなら、アクセルふかしながらブレーキも踏んでいる状態です。

 だから、想定していたほど消費にお金が回っていなくて、アベノミクスの効果が薄れているということにつながっているんじゃないかって思っています。

 

 ふたつ目の問題は、金融緩和政策のやりすぎです。

 2014年に消費増税を行い、その結果、消費が冷え込み、これを克服しようと2016年からマイナス金利政策を導入して、金融緩和のエンジンをふかしまくっています。

 その結果、銀行は経営体力が削がれ、やれ外債投資だ、やれ外貨建ての保険だ、やれ投資信託だと、お金を貸すのが本業にもかかわらず、金融商品の仲介業にひた走っています。

 ひいては、カボチャの馬車やスルガ銀行などで大きな問題となった不動産投資に邁進していたぐらいですから、何のためにさらなる金融緩和を行っているのか、もうよくわかりません。

 銀行にしてみれば、誰もお金借りてくれないんだもんの一言になりますが、だからこそ、国としては、自らが資金の借り手になり、そのお金で公共投資を行うっていうのが、第1次アベノミクスにおける2本目の矢「財政政策(財政出動)」だったんじゃなかったのかと、ずっと思っています。

 

 そして、3つ目の問題ですが、実務を通して見えていることですが、半ば強制的な「確定拠出年金制度」の導入が、見えないところで所得の増加を妨げているような気がしています。

 確定拠出年金制度って、老後の生活資金を自助努力で準備しましょう、そしたら少し税金オマケしてあげますという制度です。

 仕組みとしては、たとえば、企業型の確定拠出年金の場合、掛金の半分を会社が負担し、もう半分を従業員が持つわけですから、福利厚生制度としては、悪くない方法ですよね。

 でも、本来なら、企業が従業員に支払うお給料を増やし、そのうえで従業員が確定拠出年金を始めるかどうかを決める話です。

 だから、やりたくない人はやらなくてもいいんですが、これが、半ば強制的に行われているため、この部分で、目先の家計所得の増加につながっていなくて、別の視点で見ると、実質的に賃上げ効果が減殺されていることになります。

 確定拠出年金制度は、老後の生活に向けた貯蓄や資産形成のためのものです。

 ということは、その掛金は、今の消費ではなく、将来の消費に回っていきます。

 この家計比率が高まっているため、余計に家計消費が伸び悩むのは当たり前です。

 もちろん、企業にとっては、人件費の増加でもあるので、企業の消費活動の抑制にもつながります。

 つまり、何を言いたいかというと、家計におけるお金の流れが、今ではなく、将来に向かいやすくなる仕組みが一方で確立しちゃっているため、アベノミクスによる消費の活性効果が薄れているのではないかということです。

 福祉って、お金の流れで考えると、結局そういうことです。

 第2次アベノミクスで、2本目・3本目の矢を福祉政策にしている限り、ブレーキを踏み続けながら経済成長を遂げようとしているようなものなので、そりゃ効果は希薄になりますよね。

 福祉政策については、特に年金ですが、いいかげん、しっかりとした政策論議を行い、方向性をちゃんと決めないと、若者や子育て世帯は、お金、使おうとしないと思います。

 

 こういうのがわ~~~ってあるにもかかわらず、最終的にまた増税なの?

 もし、本当に消費税を上げるなら、それこそ、デフレ脱却はありえないんじゃないでしょうか。

 増税による景気の冷え込みを抑えるために新たな政策を打ち出していますが、たとえば、住宅ローン控除です。

 控除期間を3年延長します!って言ってますけど、これって、よくよく見ると、当初の10年間は現行のままで、11年・12年・13年目で2%の増税分を相殺する仕組みになっているため、目先の優遇策じゃないんですよね。

 それとか、保育園・幼稚園の無償化だって、確かに子育て世帯には助かる話でいいんですが、つまるところ、それで浮いたお金は貯蓄に回る可能性が高いため、おそらく消費の活性化にはつながりにくいんじゃないかと思います。

 なんせ、家計支出としては、金額がすごく多いというわけではないので。

 つまり、経済波及効果が高い分野で経済政策を実施しないと必然的にその効果は薄れるというお話です。

 

 消費税が上がった場合、消費の冷え込みは2年~3年続く可能性があります。

 その後は落ち着いていきますが、それでも、デフレのまま。

 そこから跳躍するのが重要なんですが、それに実際何年かかるのかってところでしょう。

 そして、その前に、世界経済の減速やオリンピック後の景気減速なども相まって、デフレ脱却はかなり遅れることになると思います。 

 

 ここ最近、MMT(Modern Monetary theory:現代貨幣理論)について話題になっています。

 これは、貨幣とは何かから始まり、国・政府として、どのように経済政策を行っていくべきかといったひとつの方法論ですが、大まかにいうと、デフレのような借り手不足の経済環境のもとでは、政府が国債を発行し、財政出動を行うことで、景気を刺激した方がいいという理論です。

 こんな理屈だから、日本のような借金大国では、財政出動したら借金返せなくなって、国が破綻する!なんて考えで、そんなことしちゃだめ!って批判があるみたいですけど、MMTでは、破綻するまで借金して財政出動しろとは言っていなくて、ちゃんと物価水準をコントロールしながら、適度に財政出動を行い、景気を刺激していきましょうって言っているだけなので、つまり、第1次アベノミクスの2本目の矢である「財政出動」に立ち返れってことを言っているだけで、だからこそ、冒頭に戻りますが、アベノミクスの評価や課題分析をちゃんとする必要があるよねってことを、自分なりにごちゃごちゃと考えています。

 

 もし、衆参同日選挙になるなら、それでいいんですが、そのとき、しっかりと、アベノミクスとは何だったのかについて、国民に問い、消費税を本当に上げるかどうかの判断をするようにした方がいいと思います。

 たぶん、上げたらかなりまずいと思いますが・・・。

 次の選挙は、ここが論点にならないようなら、ん~って感じですよね。

 

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