そもそも消費税って、ホントに上がるの? 増税後の住宅ローン控除とマイホーム購入の考え方
本当に消費税が8%から10%に引き上げられるのか・・・。
法律的には、消費税率の引き上げはすでに決まっていますが、経済情勢や政治日程などを含めて考えると、実際、本当に上がるの?という疑問が、個人的には払拭できていません。
この前、ある人とこんな話になりました。
「社内のシステムが消費税の引き上げにあわせて改編されてきているから、消費税は上がる!」ということだったんですが、ん~、それって、たとえば、お店のレジでも8%と10%の複数税率の計算ができるようにしたら助成金を給付します!っていうのがあるけど、それだけ見ても、2、3年ぐらい前からシステムの改編は行われてるし、過去2回、増税を延期した経緯を考えると、社内のシステムを変えている最中って言われても、あんまり根拠はないんだよなぁと思いつつ、話を聞いていました。
世界情勢の変化が世界経済に変調をきたし、また、最近の厚労省の統計問題により実質賃金の低下が判明したために、アベノミクスにおける賃金上昇を前提にしたデフレ脱却が根底から崩れ、政治日程で考えると、通常国会の終了(3月)⇒統一地方選挙(4月)⇒参院選挙(7月)にいたるどこかの時点で、消費税を引き上げるかどうかの最終決断を安倍首相がする可能性があると思っているんですが、どうなんでしょうね。
こんな話を時折挟みながら、最近は、マイホーム購入前のご相談に対応しています。
なぜ、消費税が引き上げられるかどうかを追っているのかというと、仮に、本当に消費税率が10%になる場合、マイホーム購入にかかる様々な制度が変更されるからです。
新聞やニュースなどで耳にしている方も多いかもしれませんが、一番目立っているのは「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」の3年延長ですよね。
それと「すまい給付金」の拡充。
さらに、「住宅取得資金の贈与税の非課税限度額」の拡充。
今回は、住宅ローン控除の適用期間3年延長のお話をします。
そもそも住宅ローン控除ってなに?
住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」といいます。
特別控除と書いてありますが、この意味は、算出された1年間の所得税から一定の額が差し引かれるという意味です。
ちょっと簡単にですが、所得税の計算式について触れると、一般的な会社員の場合、
1年間の給与・賞与-給与所得控除=給与所得
給与所得-所得控除=課税所得金額
となります。
現行の住宅ローン税制では、2014年1月1日~2021年12月31日までの場合、一定の条件を満たせば、住宅ローン控除額は、
年末の住宅ローン残高×1%(限度額40万円/年)
と計算されます。
これは一般住宅の場合です。
ちなみに、認定住宅の場合は、限度額が50万円/年となっています。
認定住宅は長期優良住宅や認定低炭素住宅と呼ばれる住宅です。
そして、この金額が10年間にわたり所得税から特別に控除(特別控除)されます。
家計的には、結構、大きな金額ですよね。
一般的なご家庭のケースでは、この期間中は、所得税が還付される方が多いと思います。
さらに、所得税<住宅ローン控除額の場合、所得税から差し引くことができなかった分の金額は住民税から控除されます。
ってなわけで、家計にとっては大助かりの税制なんです。
以上のことから、現行の住宅ローン控除で覚えておきたいポイントは、
①住宅ローン控除額=年末の住宅ローン残高×1%(限度額40万円/年)
②控除期間=10年
です。
それでは、消費税率が10%になったら、どんなふうにこれが変わるのでしょうか。
①控除期間が10年から13年と、3年間延長される。
②延長された3年間の住宅ローン控除額は、
A.年末の住宅ローン残高×1%
B.建物購入価格の2/3%
のいずれか少ない方が適用される。
おおまかなイメージは以下の通りです。
これは、財務省が今年の2月に発表した「平成31年度税制改正(案)のポイント」からの抜粋ですが、11年目・12年目・13年目の3年間だけ、住宅ローン控除の計算が従来と異なっています。
これは、消費税率が2%引き上げられることに対応した措置ですが、この3年間で増税分の金額を和らげるという意味ですよね。
ちなみに、消費税は、モノやサービスの対価に対して課せられることから、土地の購入代金には消費税は課されません。
このようなことから、この改正案では、住宅ローン控除のうち、建物購入価格に対する金額が減税の対象になっていることには十分注意しておきましょう。
ここまで理解したうえで、マイホームを買うのは、消費税の増税「前」か「後」か、どっちがいいんでしょうね。
住宅ローン控除だけで見た場合、こんなふうに考えてみてください。
10年間は現行通り同じ。
残りの3年間の控除額をどのように考えるか。
意味合いとしては、家計にとっては「減税効果の先延ばし」ですよね。
10年間は従来通りであるため、延長される3年間の金額を家計内でどのような位置づけと考えるかがポイントになりそうです。
住宅ローン控除の金額だけで考えると、もちろん、増税「前」と「後」では、「後」の方がよさそうに見えます。
もちろん、単純に住宅ローン控除が3年間延長されるわけですから、住宅ローン控除の総額は多くなりますよね。
でも、3年間延長される住宅ローン控除の金額は、
「建物購入費用にかかる消費税2%分」と「年末の住宅ローン残高×1%」のいずれか少ない方
です。
と考えると、事前に計算する必要がありますが、この分については、消費税率が8%のときにマイホームを購入したとしても、あまり変わらないはずです。
なんせ、今回の改正は増税の悪影響を相殺するための制度ですから。
別の視点で考えると、増税後の住宅需要を冷え込ませないための限定措置なので、住宅ローン控除だけで見た場合、結論としては、こんなふうになるんじゃないかと思います。
①増税後にマイホームを買いたい人は、11年目~13年目に家計の効果が出ることを期待して、2019年10月以降に買う(10年間は減税効果がない)。
②家計の効果を今欲しいという人は、増税前に買う。
ただし、注文住宅の場合、請負契約が2019年の3月31日までに完了していないと10%の税率が適用されます。
一方、新築・中古に関わらず分譲住宅やマンションを購入する場合は、引き渡し基準になるので、2019年10月1日以降で引き渡しが行われると消費税10%が適用されます。
このようなことから、当然のことですが、マイホームの購入は家族のライフステージにあわせ、家計面を考慮しながら考えるのが重要ってことですよね。
FP事務所としては、計算をしたうえで結論を出しますが、たぶんですけど、購入後の引っ越し費用や家具・家電などの購入資金、増税後の家計支出の増加など諸々を含めると、消費税率8%のときに購入を終える方が、家計全体としては分があるような気がします。
ただ、「すまい給付金」の拡充を考慮した場合、所得によっては、消費税率が10%になった後に購入する方が家計全体で見ると割安になる可能性があるため、ここが最重要ポイントになりそうです。
といっても、2020年以降、土地や住宅価格などの資産価値の目減りも考慮すると、そもそも論でいうと、今年の不動産価格はすでに割高になっているため、将来を見通せば、結果的に高い買い物をしたということにはなるでしょう。
考えれば考えるほど、話はややこしくなっていきます。
つまり、マイホームの購入は、確かに金銭面は大事なんですが、損得勘定で考えるよりも、何を目的にするかという軸をまず始めに決め、それを前提に、どのように購入すべきかを計算によって導くというのがベストです。
そしたら、きっと、住宅ローン控除が重要ではなく、すまい給付金の給付額が分かれ目になるということに気が付きます。
これがターニングポイントなんですね。
果たして、消費税は上がるのか。
もう少し見守っていきたいと思います。