消費税が10%に!? 家計の中の「お金の流れ」はどう変わる?
10/15、安倍首相が消費税率を予定通り10%に引き上げると表明しました。
時期は、2019年10/1からです。
消費税をめぐる話は以前よりややこしさが指摘されていますが、もし、本当に消費税が増税されるとするならば、家計を管理する身としては、どんなふうに考えていけばいいのでしょうか。
今回は、そんなお話をします。
実務上、家計について診るときは、必ず「家計簿」と「資産表」に分けて帳簿を整理していきます。
家計簿には「収入」と「支出」、資産表には「資産」と「負債」があり、それぞれにお金を振り分けていきます。
暮らしとお金についての情報が出てきたときは、「今、どの項目について話をしてるのか」をイメージしながら聞くとポイントを見つけすくなります。
さて、最近、しきりに話題になっている消費税ですが、これに関連する項目は「支出」ですよね。
ここで注意しておきたいのは、消費税が上がる⇒支出が増えるとすぐに結び付けないことです。
なぜならば、すべての支出項目について、消費税率が8%から10%に上がるわけではなく、また、消費の冷え込みを抑えるための消費刺激策が講じられる可能性があるからです。
支出について診るときは、まず大まかに6つのカテゴリーに分けていきます。
①基本生活費
②教育関連費
③住宅関連費
④自動車関連費
⑤生損保保険料
⑥税・社会保険料
そして次に、それぞれのカテゴリーを細分化します。
たとえば、①基本生活費なら、
◦食費
◦牛乳・ヤクルト・ミネラルウォーターなど
◦外食費
◦携帯電話・固定電話・インターネット・テレビなど
◦日用雑貨費
◦医療費・薬代など
◦美容院代・化粧品代など
◦新聞・雑誌・書籍代など
◦趣味娯楽費・嗜好品代など
◦交際費・飲み会・お茶代など
◦レジャー・旅行代など
◦ペット代
◦カード会費・クラブ会費など
◦互助会費・組合費など
◦誕生日などのプレゼント代など
◦お小遣い
◦冠婚葬祭費
◦通勤費
◦その他雑費・一時的な支出
といった具合です。
この中で、消費税が8%に据え置かれる部分と10%に引き上げられる部分はどこかでしょうか。
つまり、軽減税率(8%)が適用される部分と標準税率(10%)が適用される部分です。
ざっくりいうと、消費税の軽減税率って、こういうことですよね。
下の図は、国税庁が発行している「消費税軽減税率の手引き(平成30年8月版)」からの抜粋です。
ポイントは、「飲食料品」と「新聞」だけが軽減税率の対象で、それ以外は標準税率が適用される点です。
よくテレビなどで報道されていますが、飲食料品と新聞のうち、例外としてお酒は軽減税率は適用されず、外食やケータリングもダメ、医薬品・医薬部外品もダメ、オマケなんかと一緒に販売されている飲み物・食べ物(=一体資産)は条件次第でダメ、などのルールがあります。
ここまで確認したうえで、今度は、支出のうち、どの項目に増税の影響があるかを考えていきます。
簡単にいうと、
飲食料品と新聞以外は、消費税率が10%に引き上げられる
ってことです。
一部例外はありますが、基本生活費のほとんどが消費税率引き上げの影響を受けます。
先ほどの基本生活費の中身を見ながら、どの項目が軽減税率(8%)の対象か、標準税率(10%)の対象かを確認してみましょう。
◦食費
◦牛乳・ヤクルト・ミネラルウォーターなど
◦外食費
◦携帯電話・固定電話・インターネット・テレビなど
◦日用雑貨費
◦医療費・薬代など
◦美容院代・化粧品代など
◦新聞・雑誌・書籍代など
◦趣味娯楽費・嗜好品代など
◦交際費・飲み会・お茶代など
◦レジャー・旅行代など
◦ペット代
◦カード会費・クラブ会費など
◦互助会費・組合費など
◦誕生日などのプレゼント代など
◦お小遣い
◦冠婚葬祭費
◦通勤費
◦その他雑費・一時的な支出
このように見ていくと、支出のうち、ほとんどに増税の影響が出てきます。
となると、基本生活費の中で、どの部分をやりくりしていけばいいかがおのずと見えてきますよね。
おそらく、外食は抑えられるでしょうし、携帯電話やインターネットなどの通信費も圧縮対象になりやすいでしょう。
交際費・飲み会代、レジャー・旅行代なんかにも影響が出てきそうです。
それと、家電製品などを買った場合の一時的な支出も抑えられやすくなるかもしれません。
単純に基本生活費の伸び率が2%(10%−8%)というわけではありませんが、2%に近い水準で基本生活費が増えてしまうと考えておいた方が良さそうです。
それでは、他の支出項目に移ります。
基本生活費以外では、教育関連費、住宅関連費、自動車関連費、生損保保険料、税・社会保険料があります。
生損保保険料と税(所得税と住民税)・社会保険料は消費税とは関係ありませんが、教育関連費や住宅関連費、自動車関連費は増税の影響をもろに受けます。
教育関連費では、塾代や習いごと費用の比率が高まるでしょう。
住宅関連費では、新築・中古にかかわらずマイホームを購入する際は消費税が発生しますよね。
リフォームやリノベーションを行う際も同じです。
自動車関連費では、車の買換えに消費税もついてきますし、メンテナンスやガソリン代などにも消費税はかかってきます。
こう見ると、これらについては軽減税率(8%)がそもそも適用されないため、総じて増税分が家計の支出を押し上げてしまいます。
こんなふうになると、消費は冷え込みやすくなりますよね。
これは、総務省が発表している「消費支出」のグラフです。
2014年に消費税率が5%から8%に引き上げられたとき、消費支出は急激に落ち込みました。
そこから徐々に回復して、2018年8月時点の消費支出は前年比2.8%増にまで戻っています。
報道によると、消費税率を8%に引き上げたときよりも消費は落ち込まないといった見方があるようですが、とはいいつつも、消費は冷え込むため、この程度を抑える作戦が、今、練られているようです。
買い物するときに、クレジットカードなどのキャッシュレス決済をしたらポイントが還元されるんだとか。
前にもやっていたプレミアム商品券が復活する・・・。
消費税率引き上げに合わせて保育の無償化が始まる!
消費税率引き上げ時に自動車取得税は廃止、毎年かかる自動車税は、排気量が少ない車について、車を買った初年度だけ免除、燃料課税については増税後1年半遅らせるといった内容が検討されているようです。
他にも、マイホーム関連については、住宅ローン控除の適用期間を延長することが話し合われています。
今後も、消費刺激策についての情報は出てくると思いますが、実際に決定されるまではなんとも言えません。
ただ、これらは増税時の政策であるため、その後の家計をトータルで考えた場合、結果として家計支出は増えるでしょうね。
ここで、冒頭の家計簿・資産表に戻ります。
家計の中での「お金の流れ方」を確認しておきましょう。
左側の「家計簿」には、「収入」・「支出」・「あまったお金(純利益=収入-支出)」がありますが、まず、このうち、支出が増えていきます。
さぁ、家計簿内でお金を余らせたいならどうしますか?
方法論としては、
①収入を増やす
②支出を減らす
の2択です。
できるなら、両方していきたいところですが、まずは支出を減らす工夫をしていくようになると思います。
そして、国は、最低賃金を毎年上げているため、おのずと収入は若干増えていきますが、他にも収入を増やす手立てを考えてみるのもいいかもしれません。
会社員の方の場合は、副業などを行う人は少し増えるような気がします。
何も工夫しなければ、「収入-支出=純利益=あまったお金」は、必然的に減っていきます。
逆に、工夫して、あまったお金が増えたよというご家庭は、こんなことを考えてみてください。
右側の「資産表」です。
資産表には、「資産」・「負債」・「純資産(資産-負債)」の3つがあります。
家計簿で「あまったお金=純利益」は、まず資産に移っていきます。
たとえば、現金や預貯金としてお金が移動するイメージです。
お金をどこかの金融機関に預ける場合は、なるべく金利の高い銀行を選んでください。
それと、資産形成などをするという手もあります。
最近の株価を見ていると、かなり高値水準にあるため動きが荒くなっていますが、それでも何らかの資産形成をしておきたいという方は、よく調べ、情報や知識を学びながらお金を増やす努力をしてみてください。
今どき、フィンテックなどで簡単に株式投資などができるようになっていますが、資産形成は、あくまでも自己責任であるため、間違っても無知識・無情報で、AIに頼るというのはやめましょう。
これに加え、住宅ローンを抱えているご家庭の場合、極力、繰上げ返済を行い、老後に向けて、なるべく残債をなくす努力をしていきましょう。
増税の流れは今後も続くことが予測されるため、どうしてもお金が貯まりにくい家計状況になってきます。
これに備えるという意味です。
ただ、厳密にいうと、デフレ下では借りたお金はすぐに返さないのが鉄則なので、デフレ脱却を確認してからでもいいかもしれません。
そんなことをしながら、本当の財産である「純資産=資産-負債」が増えていくよう、家計の体力を強めていくようにしましょう。
消費税の増税は、毎度のように、経済成長を遂げてから行うべきという意見と財政再建が急務だという意見との間で議論されます。
個人的には、経済成長を遂げ、デフレから脱却し、家計収入(賃金上昇)が増えてからがいいと思いますが、財政健全化に引っ張られ、財政出動の規模があまり大きくない今のような状況では、結局、消費増税がデフレからの脱却を遅らせて終わるような気がします。
IT革命後、技術革新によって資産市場と実体経済の乖離がかなり目立ってきています。
これに加え、増税や社会保険料の増加、老後不安なども相まって、特に、子育て世帯の貯蓄性向は高まる一方です。
生産性革命や働き方改革が実体経済に良い形で現れない限り、家計の懐は満たされないわけですが、傍らから見ていると、技術革新の波に家計が上手くマッチできていません。
これからなのかもしれませんが、産業の転換やヒト・モノの移動が図られる中で、人手不足がどのように解決されるかが問われているような気もします。
それにしても、タイミングは悪いかもしれませんね、増税の。
世界情勢が変化し、世界経済も節目を迎えてきているので。