FP OFFICE 海援隊|1970年以降生まれの「ライフ&マネー塾」

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今の時代、老後の不安はなぜ起こるのか。「時間配分のアンバランス化」

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 ファイナンシャル・プランナー(FP)事務所へのご相談の多くが「老後の生活」に対する不安です。

 この中身は、おおよそ「お金のこと」に終始します。

 具体的には、①もらえる年金が減ってきている、②貯蓄額が不足しているのではないか、③退職後も働く必要を感じている、の3つをもって、老後の生活資金を準備するためにどのように考えていったらいいかというお悩みです。

 さて、私がFP事務所を開業してからすでに10年が経過しました。

 当時は、ファイナンシャル・プランナー(FP)に相談するという価値観すらほとんどなく、独立することに対してマイナスのイメージを持たれていたような気がします。

 そしてあれから10年が過ぎ、私が活動の場としている千葉県内においても、ファイナンシャル・プランナー(FP)事務所に相談するという価値観が一定のコンセンサスを得るようになったと感じています。

 

 10年も経てば時代は変わります。

 時代が変わるというのは、人々の置かれている状況が変わるということで、つまり、人々が考えていることや価値観のうち、移ろいやすい部分が何らかの要因によって変化するということです。

 老後の生活に対する不安はかつて、単なる年金受給をめぐる不平不満や不信感でした。

 しかし、それは今、より具体的な要因によって社会現象として表面化しています。

 年収や退職金が以前と比べ減っている。

 これは、定年退職の年齢が繰り上げられることで発生しています。

 キーワードは、人件費の増加です。

 この結果、賃金カーブが緩やかになり、世代ごとの平均年収の減少をもたらしています。

 また、これも要因の一つになっているようですが、給与の後払い制度である退職金が確定拠出年金制度と相まって、一時金でもらえる金額が減っている傾向が見て取れます。

 これらは、超高齢化と少子化というふたつの極端な社会現象により起こった人口減少化社会に対する経済上の政策「転換」の結果、現れてきたことです。

 一方、直接的に老後の生活を左右する公的年金制度については、年金の支給額が徐々に減っているという事実は周知のことと思います。

 だから、退職後も健康な人はなるべく働きましょうと謳われるようになり、近年、「健康寿命」なる言葉が目立って耳に入るようになりました。

 

 健康寿命とは、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことです。

 2013年の時点では、男性で、平均寿命が80.21歳であるのに対し、健康寿命は71.19歳となっています。

 女性では、平均寿命が86.61歳、健康寿命は74.21歳です。

 

 さて、ここで問題の本質について考えてみます。

老後の生活について考えることは、

本当の意味で幸せなのか。

 長年、ファイナンシャル・プランナー(FP)として仕事をしている人間としての素朴な疑問です。

 ここで振出しに戻ります。

老後の不安は、なぜ起こるのか。

 FP実務で感じたことを書くならば、「今、幸福度が高い人ほど、老後に不安をあまり感じていない」という共通点を見出しています。

 逆説的にいえば、「今、何らかの問題を抱えている人ほど、老後に不安を感じやすい」ということです。

 FP相談では、対応する分野が「暮らしとお金」のことであるため、直接的には生活面での問題を取り扱うことになります。

 しかし、幸せ、幸福度という、もう少し立体的な視野で人生を見た場合、老後の不安は必ずしも家計に横たわる金銭的な問題であると特定することは難しいでしょう。

 

 これは「豊かさのマトリクス」です。

 人間が感じる幸せとは何かを、人が関わる4つのシーンで分類したものです。

◎豊かさのマトリクス

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 右軸を「私(わたくし)の時間」、左軸を「公(おおやけ)の時間」、上軸を「稼ぐ時間」、下軸を「使う時間」としています。

 このマトリクス上に、「自分」・「家庭」・「会社」・「地域社会(コミュニティー)」という面をプロットし、それぞれについて『時間』を配分した場合、今の自分はどのように時間を使っているかを客観的に見ることを目的にしています。

 会社、つまり、働く時間が多い人は豊かなのか。

 家庭、つまり、家事に時間を多く費やしている人は豊かなのか。

 地域社会(コミュニティー)、つまり、他社と関わる時間が多い人は豊かなのか。

 自分、つまり、自分を磨くことに時間を費やす人が豊かなのか。

 

 豊かさには「物質的」な意味と「観念的」な意味とがあります。

 前者の豊かさでは、経済的な満足度が中心になるでしょう。

 しかし、後者の豊かさでは幸せや幸福度と関連が深く、自分を高めたり、会社という組織での人間関係のあり方や家庭生活における父性・母性の役割、地域社会(コミュニティー)における関係性の構築などによって大きく左右されるものです。

 おそらく、老後を不安に思う根っこの部分には、「物質的な豊かさ」と「観念的な豊かさ」の相対的なアンバランスが存在し、特に、時間軸に照らし合わせた場合、将来というよりもむしろ、今の自分に何らかの偏りが生じていることを原因として発生している問題である可能性を感じています。

 

 ライフプラニングの本質は「想定」にあります。

 この想定は、自分自身の「人間力」を土台に、「知識や情報」とそれらを活用する「思考力や経験」によって成り立ちます。

 老後のライフプランを考える際、「老後の生活について想定する」ことになりますが、これはつまるところ、「今の自分がどのような感性を持ち合わせていて、どれぐらい知識や情報を有していて、それらにもとづき、どのように物事を考え、どのような経験をしているか」ということを客観視することによって、最終的に「想定」できる内容です。

 だから、「未来を想定するには今がある」ということなんですが、老後の生活に対する不安を解消するには、「未来を見据えて、今の自分を少しずつ変えてみる」ことが、方法論としては正しい答えなんじゃないかと考えています。

時間という概念を味方につけ、どのような時間に「投資」していくかの「バランス」を保つ。

 このようなことを前提にしてライフプラニングが存在し、収入を増やすには、支出を減らすには、資産を増やすには、負債を減らすにはといった、具体的な問題解決手法にたどり着いていきます。

 

 今回は、お金の話ではなく、時間という有限価値をどのように使うかという、人生における本質的な課題について言及しました。

 今、国が推し進めている働き方改革も、ワークライフバランス(仕事と家庭の両立)も、住民協働社会への取り組みも、その根底にあるのは「時間」という、とても抽象的な概念をいかに効果的に使うかという点でリンクしています。

 個人的には、もう少し深く考えてみようと思っていますが、ここまで時代が変わったかと思う今日この頃です。

 

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