注目の日銀金融政策決定会合。金利の低迷と低成長経済を容認した背景とは。
7月30日・31日と開催されていた日銀の金融政策決定会合。
一応の結論は出たようです。
ここ最近、マーケットでは「金融緩和の出口戦略が打ち出されるんじゃないか」ということで、長期金利が上昇し、株価が下落する動きが目立っていました。
でも、日銀総裁の黒田さんは「金融緩和をまだまだ継続します!」と宣言し、長期金利の上昇と株価の下落が少し修正されています。
今回の金融政策決定会合に関する記事です。
関心のある方はご参考までに。
前もって将来における金融政策の方針を中央銀行が表明すること。
今回の金融政策決定会合では、金融緩和を将来も継続すると事前に表明しました。
なぜ、金融緩和をまだ続けるかというと、物価が目標である年率2.0%に届いていないからです。
アベノミクスが始まって以来、物価の誘導目標を年2.0%と掲げているのは周知のとおりですが、この値までには程遠く、それが実現できていない状況が続いています。
下のグラフは、日銀が発表している消費者物価指数の動きですが、現状では1.0%を下回る水準です。
人手不足で供給が需要に追い付かない、賃金が少しずつ上がっている、失業率が低水準で推移し、有効求人倍率も1.0%を超えているといった、通常、景気のいいときに出てくる現象があるにもかかわらず、物価の伸びが極めて弱い現状を憂慮し、日銀は金融緩和政策の継続を再び決定しました。
もう少し見てみると、同じく日銀が発表している消費活動指数というデータも参考になるかもしれません。
2014年に消費税を8.0%に引き上げてから、消費活動は急激に下振れしました。
このグラフを見ると、この後遺症から抜け出るのに時間がかかっていることがわかります。
これに加え、2019年10月に消費税の10.0%引き上げが予定されていることから、消費の冷え込みを予測し、前もって長期金利の上昇を抑えようというのが、今回のフォワードガイダンスのもうひとつの目的のようです。
でも、同じく日銀が発表している需給ギャップと潜在成長率のグラフでは、国内景気は悪くないということが見て取れます。
需給ギャップはリーマンショックのころと比べると大幅に改善されていますが、そろそろ頭打ちの水準に近づいており、また潜在成長率においては、2014年以降、横ばいが続いています。
これを見ていると、日本経済の伸びしろが低くなっているのは、人とお金が生み出す生産量に限りが出てきていて、さらにTFP(Total Factor Productivity:全要素生産性)と呼ばれる技術革新や労働生産性の向上も鈍いというのが原因だとわかります。
つまり、非効率な人・モノ・金の使い方になっている可能性が高いということです。
日銀の役割は「物価と金利の安定」です。
だから、金融政策として金融緩和策を実行し続けているわけですが、ここにすでに限界が出ていることをこれらのグラフは証明していて、やはり、国家予算における財政出動と社会保障制度の再整備、実需の掘り起こしの3つは、国の政策としてさらに重点的に行う必要があるのかもしれません。
国内経済の成長に限界が出ているのは、根本的に世界経済の平準化がより進んできているからともいえます。
後進国や新興国の経済発展が先進国に近づいていくにつれ、必然的にそのギャップは埋まっていきます。
この流れの中に国内経済があり、特に資本の移動が急速に世界中で行われている結果、国内への投資機会が昔よりも縮小していると考えられます。
そして、金融政策面で他の先進国地域と比べ出遅れている日本。
アメリカやヨーロッパでは、金融緩和から金融引締めの動きになりつつあり、日本は、今回の金融政策決定会合で金融緩和の長期継続を決めました。
これは、国内への海外からの資金流入を妨げることになりますが、裏を返すと、世界的な金利上昇圧力による経済危機には耐えやすくなるということではあります。
国内の実情を考慮したうえでの世界情勢の変化に対する防衛的手段。
これが、今回の日銀の決断であるとするなら、まだ長く、金利は低い水準で推移するでしょう。
しかし、マイナス金利政策による副作用がこれで改善されるとは思えず、金融機関としては、まだ忍耐の時期が続くかもしれません。
結局、結論をいうと、日本国内の政治スケジュールに合わせた事前アナウンスのような気がします。
今年9月の自民党総裁選、10月に決断する消費税増税、来年4月の統一地方選挙、そして7月の参院選。
アベノミクスの貫徹は必要ですが、消費税の増税がやはりネックとなり、その衝撃を金融面で吸収するための措置なんだろうなと思っています。
今後も、マーケットでは金利が注目されてきますが、同時にアメリカ大統領の中間選挙がクローズアップされてくるでしょう。
ここもリスク要因になってきますが、次期大統領を占ううえで重要なイベントです。
おそらく、2年後、世界はリベラルに向かっていくでしょう。
ロシアを中心に、アメリカも、ヨーロッパも、中国も、そして日本も、世界情勢の渦に巻き込まれながら不透明な展開になりそうです。
このとき、マーケットはどうなるのか。
資本主義のカタチがここで大きく修正されるかもしれません。
ITを活用した資本主義経済が人々の権利に活用されていく社会。
ますます国内経済は産業の空洞化が起こる可能性が高まりますが、ここに政策の重点を置かなければ、この国は、単なる人手不足がエンジンなだけの限定的な経済成長構造になりかねません。
旧産業から新産業への移動。
やっぱり、今は時代の過渡期なんですね。