マイホームが不良債権化している現実。それが売れない空き家という問題。
住宅ローンを組んでマイホームを建てた。
幸せに家族と暮らし、たまに修繕を加えながら、最後まで大切に使った。
私たち夫婦が亡くなった後、そのマイホームには誰も住まなくなった・・・。
遠くで暮らす子どもたちが物件を引き継ぐ。
空き家になった物件が売れない。
だれも借りてもくれない。
築年数が古い物件だから当たり前といえば当たり前だけど、その処分に子どもたちは困っている。
このご相談の一番の問題点は、マイホーム購入に際して「出口戦略」を描いていなかったことです。
要は「空き家にならないようにするための絵図」をしっかりと描いていれば、子どもたちを悩ますようなことは起こりにくかったでしょう。
実際に現場に立ち会い、物件を見たところ、建物の老朽化がかなり進んでいる、敷地面積が一般的な戸建て住宅の約3倍ほどあり、かつ、旗竿地で、前面道路の幅員が4m未満、通路の間口部分が2mを満たしていないという空き家でした。
この物件の困ったところは、接道要件を満たしていないため再建築不可物件になっている点です。
こうなると不動産会社としては取り扱いを敬遠し、また、たとえ買取を申し出てくれたとしても取引の値段をかなり低く見積もられます。
確かに、目指しているのが売却なので、納得がいかないのはわかります。
親が買ったときの物件価格を知ると「えっ?」と思います。
しかし、すでに時代は変わり、そして、これから人口減少社会に突入します。
二束三文の値段ならまだしも、ほとんどの業者が値段がつかないという0円解答を出してくる状況では、この現実を受け入れる必要があるときが遅かれ早かれ訪れることでしょう。
この問題の解決策は以下のとおりです。
①ひたすら売却先を見つける。
これが無理なら、
②隣地交渉も含め、接道要件を満たす努力を行う。
この場合、法律の専門家との連携も必要になってくるため、隣地を買い取る場合も考慮すると多額の費用がかかってきます。
③接道要件が満たされた後に、再度、売却先を見つける。
もうひとつ、空き家問題の困ったところは、子どもたちが解決のための費用を準備しづらいという点です。
上記の例では、接道要件を満たそうにもお金がかかり、また、上物を取り壊すにしても解体費用がかかります。
これらを払いたくないから売ろうとするわけですが、そのままでは誰も、納得のいく値段では買ってくれません。
堂々巡りで時間だけが過ぎ、結局、固定資産税やら、庭木の剪定費用、建物の修繕費などの経済的な負担が定期的に子どもたちにかかってきます。
FP事務所は不動産仲介業者ではないため、不動産の売買の仲介などは行いません。
しかし、空き家になった物件に対しては、不動産業者や他の専門家などと協力し、資金的なやりくりの方法について対応していきます。
このケースでは、物件がずっと売れなかった場合も想定し、お孫さんへの相続が発生したときに備えます。
具体的には、現時点から老後、相続発生に至るまでの資金シミュレーションを行い、そのうえでマネープランを作成します。
ここでのポイントは、空き家の売却までにかかるランニングコストと、売れずにお孫さんに相続する場合の空き家対策資金の準備です。
マイホームの出口戦略には、「不動産に関する知識や情報」と「資金的な準備」が必要になってきます。
前者は「法律」面、後者は「経済」面での事柄です。
一概に自己責任とは言えませんが、マイホームを資産と考えるならば、購入段階でこれらの出口戦略は必要不可欠になってきます。
マイホームの「不良債権化」が空き家だとすれば、そうさせないためにも、しっかりとした出口戦略を今から組み立てるようにしましょう。